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アンの大往生 ー異世界終活記ー  作者: Shutin
アレク王国
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アレク王国第十話『家庭教師(3)』

王族直属家庭教師(グレートティーチャー)アーノルドとアレク王国が王女メイアの初授業は順調な滑り出しだった。


「じゃあ、『魔法』とは何かわかるか?」


「魔法とは『魔素を使用して行われる事象全般』のことだ。魔術や魔具も分類的には魔法の一種だ」


 危なげもなくメイアが答える。


 オレは部屋に置いてあった魔術書をパラパラとめくりながら、続けて問いかける。


「正解。じゃあ、『魔素』とは?」


「確か『全ての物質が保有する ・・・魔力の核のようなものだったか?」


 少し不安げにメイアが答えた。


 今日は天気が良いからか、メイアは時折窓の外を眺めている。空はやたらと青い。


「まあ正解でいいかな。正確には『全ての魔力によって発生する物質、事象に力が働く際に消費される極小の粒」だ」


「・・・と言うと?」


「簡単に言うと魔素の流れを魔力と呼び、魔力の働きで発生するものを魔法と呼ぶんだ」


「なるほど・・・分かりやすいようで、ややこしいな。『魔力の流れ』というのはなんとなく分かるが、『魔素』なんて見たことも感じたこともないぞ?」


 オレの説明に感心しながら、メイアは的確な疑問を投げつけてきた。


 雇われの身としてはしっかりと答えてあげなければ・・・


「確かに魔素ってのは見ることもできないくらい小さい。ぶっちゃけ魔素については解明されてないことの方が多いんだ。例えば魔素がどのような流れで岩などの物質を生成しているとかな。物理的に辻褄が合わないことも多いから、ある学者は魔法のことを『神がこの世に後付けした概念』なんて呼んだらしいぞ」


「『神がこの世に後付けした概念』か・・・・言い得て妙だな」


「そうだな。でも実際に魔術が人々に浸透していったのは、聖典に記されていた『神の誕生』とほぼ同時期だったんだ」


「へー、アンは歴史にも詳しんだな」


 オレの話に感心しつつ、メイアは相槌をうつ。少し話が脱線してしまっていることに気づいた。


・・・いけない。少しがっつき過ぎたな。あんまり小難しい話も退屈だろう。


 メイアの方に視線を送ると、また窓の外をチラチラと見ていた。


 授業がつまらないというわけではなさそうだが、外出したいという欲望が勝っているように見える。この王女様はお淑やかに見えて、かなりアクティブな方だ。


 そういえば、最初にあったのも王国の外れの荒野だったしな・・・


 そんな事を思いつつ、オレは手に持っている魔術書を閉じ椅子から立ち上がった。


「まあ、こんな話はそこらの学者にでも聞けば良いんですよ。メイアは座学は大丈夫そうだし。今度は実際に魔法を練習してみようか」


「よしきた!」


 待ってました。と言わんばかりにメイアは立ち上がり部屋の扉を勢いよく開けた。部屋の方へとクルンと振り向き、太陽のように眩しい笑顔で言い放つ。


「どうせなら広いところでやろう。ちょうど中庭の訓練場が空いている」


 バカデカい王城に囲まれた中庭が廊下の窓から見える。遠目から見ても分かるほど綺麗に手入れされた庭園と、その傍に一箇所だけ芝生でない空間があるのに気づく。おそらくあれが訓練場だろう。


 今日は室内でもできる魔術だけにしようとしていたけど・・・この様子じゃ他のも練習しても良いかもな。天気も良いし・・・


 王女様はスキップ混じりの駆け足で庭へと続く階段を降りて行く。メイアの鼻唄が長い廊下に響き渡る。


 ・・・さすがはサラマンダーの首を両断してしまう王女様、座学より実技の方が何倍も嬉しいみたいだ。

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