第一話『どちらに行こうか』(4)
サプライズ登場に百点満点の反応をオレ達が見せたからか、背後のザカリアは嬉しそうに笑う。
「ザカリア・・・お前、いつからそこに居た?」
まずい。オレ達は国家機密レベルの話もしていた、場合によっては口封じをしなければ。
「いつからって・・・俺はずっとここにいたぞ。お前達が『運命』とやらについて話していた頃から」
「アーノルド、コイツ殺すか?」
いきなり背後を取られたからか、リンネの機嫌が悪い。
悲鳴をあげておどけるザカリアは、オレを盾に隠れる。
仲良くして欲しいものだ。
「あ〜 どうする、ハミル? 一応とは言え国家機密だ」
「俺の口は硬いから大丈夫さ」
ハミルとオレの間にザカリアは割り込む。
どうやって信じれば良いのだろう。ただでさえ胡散臭い男だと言うのに。
「まあ・・・仕方ない。気付かなかった俺達も悪い。そもそもここはザカリア先生の診療所だからな」
ハミルの寛大な御心にザカリアは頷く。調子に乗って、謎の踊りでリンネを挑発し始めた。
なんと命知らずな事をしているのだろう、と思ったのも束の間、怒りの頂点に達したリンネはハミルの面を剥ぎ取った。
面を取られたザカリアは大袈裟にリアクションを取る。
なんかイラっとくるなぁ・・・お面を剥ぎ取られてダメージを受けるの・・・
ザカリアの黒髪と悪人面が診療所内の灯りの下、顕になる。
前も思ったけど、やっぱりコイツ・・・・
「ザカリア。お前、東洋人か?」
「そうだぞ。出身はこっちだけどな」
やっぱりそうだったか。少し細い目つきと黒髪ですぐにピンときた。
というか、ザカリア自身が『東洋外科医』とか名乗ってたしな・・・
「そんな事よりも俺が一番気になってるのは、あの魔物達だ。どうやってあの魔物達は喋ってたんだ?」
オレの後ろから姿を表し、ザカリアも会話に参加する。
「それは多分スキルだろうな。会話を可能にする。もしくは知能を底上げするみたいな・・・」
「違う。俺が言ってるのは身体の構造上の事だ。魔物、動物の声帯で人の発音は出来ないはずなんだが・・・それこそ手術でもしない限り」
「お前はできるのか、ザカリア?」
「多分? やった事が無いからなんとも言えないが、理論上はおそらく・・・」
「という事は、『合唱軍』の中にもザカリアみたいな奴がいるかもしれないって事か?」
「もしかしたらな」
考えれば考えるほど謎の組織だ。
本当に何が目的なのか。
魔物を従え、厄災と協定を結び、大国の首都を潰す。
あいつらの言う『世界平和』はどんな形をしてるのだろうか?
もしそれが本当に世界を脅かすのなら、もういっそオレが全部・・・・
・・・いや待て!! 何で俺がこんな事を考えないといけないんだ?
俺はただ死ぬために旅をしてるんじゃなかったのか?
あんな気味の悪い奴らはデパトス軍と調停委員会に任せたら良いじゃないか。なあ、そうだろ?俺様よ?
突如としてオレの旅の目的を思い出した。
そうだった。オレはここで足踏みしてる場合じゃないのだった。
ネイの抜糸が終わったらこの村を発とう。
最後にそれぞれの今後について話して、会議はお開きになった。
別れ際ハミルはオレだけを呼び止めて、ある頼み事をしてきた。
「カルドスの事を頼む」
ハミルにとって戦友であり、弟のような存在のカルドスについての話だった。




