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空の瞳   作者: 壱夜柾輝
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序章.すべてのはじまりはじまり

この世はなんて空虚なんだろう。


気を抜けばどこまでも深く沈んでいく気がする。


だから沈まないように足掻いて、血が出て...。


でも分からなくなる。


あれ?どうやって生きてた?どうやって毎日過ごしてた?



いや違う。この世が空虚なんじゃない。


私・が・空虚なんだ。


何も出来ない。何もしない。


周りに溶け込むように、目立たないように生きてきた。


なのになんで…。


出会ってしまった。


あの時のようにあなたはわたしを包んでくれた。


あなたには記憶がないはずなのに、あなたは変わらなかった。


どうしてこんなわたしを求めるのか。


なんて残酷なんだろう。


なんて美しいんだろう。


狂おしいほど惹かれた。


涙が零れた。


溢れて溢れて逃げた。逃げようとした。


わかってた。どんなに逃げようともあの人は前と同じ様に追いかけてくる。


でもだから、今度こそ絶対に間違わない。


あの時のような哀しい結末にはさせないと。


赤い悲劇は二度と繰り返さないと。


絶対にあなたを守りきると。


そう決めた。


だから


そう


だから


わたしはあなたを忘れない。


今の(せい)のあなたも前の(せい)のあなたもわたしは絶対に忘れない。


また生まれ変わったとしてもわたしだけは覚えていると誓おう。


その代わり、あなたのなかの私を消そう。


あなたの魂に眠っている前の(せい)のわたしも今の(せい)のわたしも。未来永劫甦ることのないように。


あなたのために。


せかいのために。


あなたとわたしの証。未来を生きるこの子のために。

 

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