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9話 令嬢と毛氈苔2

 ――なんという事でしょう


 1時間程対談してみたが、確かに彼女は、意外といってはなんだが、少なくともアコナイトやピンギキュラよりは、遥かにまともな人格だった。


 歴史と、動植物に関する知識が深く、話を聞いていて全く飽きなかった。


 特に、ドラゴン族の進化過程に関する考察などは、論文一本書けるのではないか、というくらいの知識量だ。まるで、見てきたかの様に語る姿は、妙に引き込まれるものがあった。


「……と、まとめると、この様にドラゴン族は、古代の羽毛恐竜から発展し、鳥類とは似た系図をたどりつつ、巨大化し、体内に魔力を宿しているか否かで、鳥とは明確な違いが見受けられるのです。例えば、この辺りの生態系の頂点に君臨する『巨鳥』デイノアーラは、くちばしを持ち、羽毛も生えていますが、魔力を体内に宿しているので、ドラゴンに分類出来ます。まぁ、厳密に言い出すと鳥もドラゴンも、分類上は恐竜なんですが、この話は長くなるので省略します」


「なるほど、鳥とドラゴンは、親戚同士ではあるものの、違う仲間という訳ですね。面白いです」


 思わず、マリーは拍手をしていた。冒険者など辞めて、学者でも目指したらどうだろうか? と、本気で思える。


「貴女の様な人材が、在野に埋もれている。というのは、とても勿体なく感じます」


「いえいえ、私などまだまだです。今のも、ほとんど既存研究をまとめて、自論を交えただけですし」


「それにしても、流れてきたという割に、とても知的な方で驚きました。第一印象の悪さもチャラになりましたよ」


「それは、恐縮です」


挿絵(By みてみん)


 人懐っこい笑みを浮かべながら、ドロセラは話を続けた。


「個人的にドラゴンは大好きですし、研究者というのも憧れますが、やはり、今は冒険者業で稼ぐ時ですよ。私たち流れ者に就ける職は少ないですし。……控えめに言ってゴミみたいな冒険者ギルドに、ある程度報酬をピンハネされるのはひどいです。我々みたいな流れ者を集めて、足元を見てくるのはいかがなものか……あぁ、消し飛ばしたい」


 光の無い瞳で言うドロセラ。これは嫉妬というより怒り由来だろう。


「それに、いつまでも若くはありません。冒険者の様な不安定な職からは、早めに足を洗って、安定した職も探さないと……。ま、冒険者は、枷が少ないのが何よりのメリットですから、我々の当面の目標には、うってつけではありますが」


「当面の目標? 」


「あ、ちょっとした野暮用です。大した用ではありません」


 そう言ってドロセラは話を打ち切り、振り返っていとおしげに、御者台のアコナイトの方を見る。

 

 ピンギキュラはピンギキュラで、周辺を警戒しながらも、時折、アコナイトを割りと気持ちの悪い視線で眺めていた。


 マリーは、『目標』という言葉が気になったものの、ドロセラがそれ以上話を続ける気が無いのを、雰囲気から悟った。先方が話たがらない以上、問い詰めても無駄だろう。


「貴女達、本当にアコナイトさんが好きなのですね」


 マリーの言葉に、ドロセラは頬をいよいよ真っ赤に染める。


「……はい、大好きです。いっそ、アコ兄様と姉様と私の3人だけの世界に行きたいくらいです」


「……ピンギキュラさんも、大概アコナイトさん信者ですが、喧嘩する事は無いのですか? 」


「姉様とはありませんね。お互いに相手の想いを尊重する、という協定というか、不文律みたいなのがあります」


 即答するドロセラに対し、マリーは少し意外そうな顔をする。


「2人とも、同じ男性の方を愛していて、普通、修羅場になりそうなものですけど」


「我々の背景には、忠実な郎党としてアコ兄様を守らねば。という使命感の様なものがありますから。姉様に不満がまるで無い、と言えば嘘になりますが」


 一呼吸置き、ドロセラは続ける。


「アコ兄様自体、色々と訳ありの人なんですよ。だから、我々が喧嘩している状況ではないのです」


「訳あり? あの方に何があったのです? 流人というのは聞いていますが」


「端的に言いましょう。兄様は言うならば、イレギュラー。ちょっと、他の人間とは違うのです」


「違う? 」

 

「ええ。具体的には、魔力の生成速度が一般的な速度の約100倍。更に、魔力を体内へ無尽蔵に貯められます。これにより、魔力切れを気にせず、強力な魔法が打ち放題、使い放題。ついでに、火・水・風・光・闇、全ての魔法属性の適性が異常なまでに高く、おまけに召喚魔法で、3つ首の犬、ケロベロスを召喚出来ます」


 ドロセラの口から語られた、アコナイトのスペックに、マリーは唖然とした。


 魔力備蓄には制限がある、というのが、この世界の常識だ。


 それに、一般的な魔法使いは、使える魔法属性は1種。召喚魔法も、眷属の制御に相応の魔力と適正が必要な関係上、使えるのは、熟練の魔法使いに限られている。


「そ、それは……なんというか、とんでもない方だったのですわね、アコナイトさん」


「確かに、とんでもない方ですよ、兄様は。それこそ、戦略兵器になりうる程」


「それだけの力があれば、さぞ周囲から、大事に愛されたでしょう」


「愛されたか? と言われると、また疑問が出てくるんですけどね」


 少し複雑な顔をして、ドロセラは静かに答える。


「少し、含みのある言い方ですわね……」


「色々と複雑な事情持ちなのですよ、兄様は」


 御者台に乗っているアコナイトを、少し愛おし気に眺めたドロセラは、再び口を開いた。


「少々、昔の話をしましょう。話の発端はアコ兄様が生まれる2年前に遡ります。その頃、我が家の領地は大変な危機的状況にありました」


「危機的状況……ですか」



ドロセラ「ちなみに、アホの作者が一番好きな恐竜はオヴィラプトルらしいです。なんか、あの顔が愛嬌があって好きみたいですね」

マリー「キャリアドラゴンが、あんな奇怪な姿をしている設定なのはもしや……」

ドロセラ「はい。初期案の時はまんまオヴィラプトルな外見だったらしいですが、オヴィラプトルって馬車引けるんだろうか……とか色々考えた結果、オヴィラプトル要素が残った四足歩行の奇怪なモンスターが誕生しました」

マリー「この世界のドラゴンに羽毛が生えている設定なのも……」

ドロセラ「羽毛恐竜っていいよね……という思いからだそうです」

マリー「アホの作者の妙なこだわりのせいで、もふもふな外見にされたこの世界のドラゴン達に同情した方々は、ブックマーク・評価をしてくださいまし……」


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