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9話 首領現る 

 

 アコナイトが投げつけたのは、盗賊の頭目の部屋に投げ込んだのと同じ、スタングレネードだった。


 それは、2人の少女の前に転がると、閃光と轟音を発する。


「「?!」」


 突然の事に、ティーとクラリッサは、思わず目を閉じ、耳をふさぐ。


「今です!」


 さらに、駄目押しばかりに、アコナイトは『オレアンドリン・ピアーシングショット』を二発放った。


 いつの間にかシールドを張っていたのか、それらは命中するも、彼女達を焼く事は無かった。だが、シールドは削れたのか、目に見えて厚みが減っている。


 アコナイトの得意な毒レーザーで仕留められないとみるや、3人は一斉に逃走を開始する。一歩遅れて、フロッガーもそれに続いた。


「待て」


「逃げるな」


 ティーとクラリッサは、視界が回復すると、アコナイトの背中を追い始める。両グループの距離は100m程。


「アコちゃん、あの二人、追って来る!」


「かかりましたね。『アンチトラップ』!」


 アコナイトは、2人が追いかけてきた事を確認すると、『アンチトラップ』の魔法を作動させた。眼前には、盗賊の仕掛けた地雷原。それを作動させない様に、慎重に、だが、急いで走り抜ける。


 これも、地雷の位置が分かるアコナイトの『アンチトラップ』あっての事である。地雷が作動しないギリギリの範囲を狙って、アコナイトは針の穴を通す様に、地雷原を走り抜ける。


「駄犬! 兄様の後にぴったりついていって!」 


「一歩でも足を踏み外したらドカン! だよ!」


「ひぇ~! こりゃ綱渡りだよ!」


 ピンギキュラとドロセラ。更に、フロッガーはアコナイトを信じて必死で一列でついていく。その甲斐あってか、地雷は一個も作動しない。


「ティー、追い込み、いく」


「クラリッサ、援護を」


 アコナイト達を追跡する2人も、地雷原に足を踏み入れた。だが、彼女達は、『アンチトラップ』の魔法を発動していなかった。


 というよりも、このエリアが地雷原であるという事も、想定してはいなかった。


 しばらく、歩みを進めている内に、2人の少女は地雷を踏んだ。たちまち、対人地雷の強烈な爆風をくらい吹き飛ばされた。


「がっ!」


「ぐはぁ!」


 2人の少女は、地面をゴロゴロと転がる。地雷は薄くなったシールドを割るには、十分な威力があった。


「間抜けめ……!」


 アコナイト達は、爆発音で敵の少女2人が地雷を踏んだ事を察した。


挿絵(By みてみん)

 

地雷原を抜けて、アコナイトは振り返り、2人の様子を観察する。ティーといった青髪の方は、足を吹き飛ばされ。クラリッサといった金髪の方は、生きてはいる様だが血まみれで、長くは持ちそうにない。


「……あのノースズ女も引っかかってたし、ブービートラップは殺意が出ない分、効果的だね」


「効果的に使えば、これ程有用な兵器も無いよね」


 捕食毒華の得意とする、罠を用いた戦術だ。あらかじめブービートラップを仕掛けた位置まで、あえて背を向けて逃げる事で敵を誘導し、本命の罠にかける。幾度となく、この不意打ちでこのパーティーは強敵を屠って来た。今回は応用として、本来、敵が用意した地雷原を用いた。


「さて、止めを刺しましょうか。どちらにせよ、あの傷では助からないでしょう。慈悲の一撃です」


 アコナイトは、『シクトキシン・ショット』を2人に向かって放とうとする。しかし……。


「……やるな。流石は私が見込んだだけはある」


 突如、声が響いた。知らない中年の男のものである。


 即座に警戒態勢に入りつつ、アコナイト達は声の主を探す。


「アコ太郎! 上! 上!」


 フロッガーが見つめる先。1人の男が、空中で静止していた。ただの人間が空中浮遊など出来ない。なんらかの魔法。それも、かなり高レベルの魔法を使っている。


「『ヒーリング――フェニックス』」


 男は、素早く詠唱をすると、倒れている二人の少女に回復魔法を放った。するとどういう事だろう。彼女達の傷はみるみるふさがっていく。ティーに関しては、失った足が再生していく。


「足が生えてる!」


 ドロセラが、驚愕の声を上げる。どうやら失った足を再生するレベルの回復魔法を行使できるようだ。


「があぁぁぁぁぁぁ!」


「ああああああああ!」


 だが、2人の少女は、苦悶の表情を浮かべながら絶叫していた。2人とも、体を痙攣させ、白目をむいている。


「これは……!?」


「ああ、心配いらんよ。失った足を生やしたり、瀕死の重傷から回復させるのだ。精神や身体に与える影響も大きい。」


 中年男は、ローブを羽織っており、顔は見えない。だが、そのローブに隠された顔がニヤリと笑った様な気がした。


「なんで、こんな高度な魔法を使えるか、疑問なようだね。これを見たまえ」


 男は、懐から、一つの石像を取り出した。それは、アコナイト達が見知ったものでもあった。


「じゃ、邪像?! なぜそれを?!」


「ふふ……驚いたかね? あげないぞ」


 男が手にしていたのは、まさに、P.E.A.C.Eに使われていた邪悪なる偶像であり、アコナイト達が探し求めているもの、そのものだった。


 邪像からは、魔力が集まっている時に発生する陽炎が浮かんでる。


 高度な魔法を使うのに使う、膨大な魔力。それを、この邪像の『あらかじめ、膨大な量の魔力を貯めておくことが出来る』特性で補っているのだろう。


「名乗りが遅れた。私は、『ヴェナートル・オクト』の首領にして、英雄。フェリアル・エイトドッグ。君達の事は、前々から気になっていてね。今回、我々を嗅ぎまわっている君達が、どんな奴らか、見に来たって訳さ」


「リーダー自身で偵察とは、殊勝な事で」


「ふ、まさか、ティーとクラリッサを、こうもあっさり仕留めるとは思わなかったよ。彼女達はエンチャンターで、本来戦闘向けのメンバーでは無かったんだがね。まあ、その想定外も、この通り何とかなったがね」


 フェリアルは、余裕の表情でアコナイトに返答する。2人は、まだビクビクと痙攣しつつも、傷はほぼ完治していた。


「どうします? 兄様」


「こんな所で出てくるとは思わなかったよ……」


 ドロセラとピンギキュラが指示を仰ぐ。


 アコナイトは思考を巡らせる。攻撃するか?いや、ここで迂闊な攻撃は危険だ。相手の実力も十分知らないし、逆に相手はこちらの強さを把握しているだろう。そもそも相手は何を狙って、どんな手段で攻撃をしてくるか分からないのだ。迂闊な行動が死につながる恐れもある。


「はは。警戒されているね。安心したまえ。少なくとも、当面の間、私が君達を殺すつもりはない。実際に見てみると、中々魅力的なやつじゃないか」


 フェリアルはそう言うと、また呪文を唱えた。


 すると倒れていた2人が、意識を失ったままの状態で空中浮遊を始める。そのまま、2人はフェリアルの隣に浮かんだ。


「今日は、面白い物を見せてもらった。また会おうじゃないか」


「ま、待て!」


「では、ご機嫌よう。諸君」


 フェリアルはそう言い放つと、2人の少女と共に消えていった。


「勝ったぞ万歳……とは一概に言えないね……」


「うん……改めて何者なんだろう、ヴェナートル・オクトって」


 ピンギキュラとドロセラの腰を抱きながら、アコナイトは今後について思考する。ちなみにかっこよく肩を抱こうとしたアコナイトだが、身長的に届かないので、腰で妥協した。


「私達、目を付けられている様ですし、面倒な事になりそうですね……。ひとまず、邪像の一つは、奴が持っているという事は確定しました。譲ってくれないのなら、いずれ、彼とも敵対する事になる事になりそうですね……」


「ひとまず、街まで戻ろうよ。アタシ、この人を抱えながら動き回るの、疲れたよ」


「そうしましょう。レイフォストの街に戻ります」


 気の抜けたフロッガーの言葉に、アコナイトは頷く。どちらにしろ、テレサ嬢を引き渡さなければならない。


「はぁ~……今回も追加報酬は無しかぁ」


「洞窟、崩落しちゃったからねぇ」


「どうも、最近の我々は運が無い。今日は宿に帰ったらシャワーを浴びて、食事をして、まぐわったら寝ちゃいましょ。今日はもう、三大欲求を満たす日にします」


 ティー達に勝利したが、何とも言えない後味の悪さを感じるアコナイト達である。

アコナイト「ラスボスとの初遭遇です」

ドロセラ「明らかに強キャラな上、チートアイテム持ちとか敵うの……?」

アコナイト「一応こちらにもリミッター解除というチートもありますし……」

ドロセラ「次回からは、何回か弟様達sideの話になるかも」

アコナイト「同時に何個かのグループが動く偶像劇風にしたいらしいです、この章」

ドロセラ「アホ作者の技量で出来るかなぁ……」

アコナイト「コメント、評価、ブックマークもお願いします」

ドロセラ「弟様達の以前の活躍については、拙作、姉が評判最悪な婿から婚約破棄された!なら血の繋がらない弟の僕が貰います!を読んでね」

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