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6話 下準備

 

「では、当初の作戦通り、まずは私とフロッガーで見張りを始末します。」


「……その後、洞窟内部に進入して、換気装置を破壊」


「ガスマスクをして、姉様特製の催眠ガス発生装置で、洞窟内部を制圧する」


「……盗賊の数は頭目を合わせて19人」


「フフ、作戦を完璧に覚えていて何よりです」


 時刻は午前3時。草木も眠る丑三つ時である。新月の後という事もあり、月は欠けていて、周囲は暗い。

 

 レイフォストの外れにある、山中の洞窟の前に、アコナイト率いる『捕食毒華』のメンバーは集結していた。


 目的は勿論、盗賊たちから、テレサ・サケット嬢を奪還する事である。


 あの後、アコナイトは、捕らえた盗賊を官憲に突き出した後、先に戻っていた他のメンバー達と、宿で作戦の修正を行った。


 当初の作戦案は、閉所という事もあり、アコナイトとドロセラが盾を張りながらピンギキュラが前衛になり、火炎放射器と炎魔法による、熱と酸欠と一酸化炭素による窒息で敵を制圧するという物であったが、今回は、救出目標がいる為、あまり派手に暴れられない。


 そこで、アコナイトは、作戦を修正した。


 いつも通り、夜間に奇襲を仕掛けるのはそのままだが、まずは洞窟に進入し、換気装置を破壊し、空気の循環を滞らせる。そのまま、ピンギキュラがこんな事もあろうかと持ってきた催眠ガスを散布。そのまま残敵に注意しつつ、洞窟を制圧。賊共を捕縛し、テレサ嬢を救出する。


「もし、作戦失敗の場合、フロッガー。しんがりになって敵を食い止めてください。その間に我々は退避します」


「任せて! アタシは死んでも、魂は滅びず復活(リスポーン)するからね。安心して逃げて!」


 フロッガーは獣形態のまま、武者震いしている。


「なんか、今日はすごくやる気がありますね」


「ふふん、昼間の興奮が残っているんだよ。あぁ、また人を殺せると思うと、ゾクゾクしてきたよ!」


「……まぁ、その調子なら大丈夫でしょう」


 アコナイト達は、フロッガーのテンションの高さにやや不安を覚えるが、作戦は決まった。


「それじゃ、皆さん。よろしくお願いしますよ」


 アコナイトの言葉と共に、洞窟の入り口に向かった。


 入口では、昼間捕らえた盗賊が言っていた通り、2人の盗賊が見張りをしていた。油断しているのか、無駄話をしていて、暗闇の中、迷彩服を着たアコナイト達が、物陰に隠れつつ接近しているのに気づいていない。


「聞いたか、昼間の件」


「ああ。あの商人、ケルベロスに襲われたってな……」


「俺、あの奴隷商、割と気に入ってたんだがな。売る前の商品を味見(・・)させてくれたし」


「ああ。惜しい奴を亡くしたぜ。許しを請う女共を、無理矢理犯すのは最高だったんだがな」


 下卑た笑い声をあげる盗賊達の死角に、アコナイト達は忍び寄る。


「……よし、準備完了です。行きますよ」


「了解」


 アコナイトは、戦斧のスパイクで狙いを定めながら、必殺の『アコニチン・バックショット』の詠唱を始めた。


「『紫色の花に宿りし、おぞましく甘美なる毒よ、我と我に宿る紺碧薔薇の魔女の名において、これを使役せん……アコニチン・バックショット!』」


 スパイクから放たれた猛毒をまとった散弾レーザーは、拡散しながら、盗賊達を飲み込んだ。


 2人は悲鳴をあげることさえなく倒れる。即死だ。彼らは自分が何で死ぬ事になったかすら、理解できなかっただろう。


「撤退用に、入口にブービートラップを仕掛けたら突入開始です。全員、忍び足で、静かに私に続いてください。会話は全てラノダ語で行う事」


「アコちゃん、暗闇の中で識別がつかない時の合言葉は?」


「ブラッドと聞いたら、イーグルと返すようにしましょう」


 合言葉をラノダ人のおぞましい生贄の儀から取って、3人と1匹は手早く罠を仕掛けると、前衛がピンギキュラとドロセラ。後衛がアコナイトとフロッガーというバディで、洞窟内に侵入した。



 ***



「(……中は意外と明るいですね)」


 洞窟内は、完全な闇ではなかった。奥に、ぼんやりとした光が見える。恐らく、ランプか蝋燭の火だろう。換気装置は、少し入り組んだ奥にある。夜中の3時である。中で盗賊は殆ど寝ていて、それらに気付かれぬ様に、一行は慎重に進んだ。


「(兄様、前方に盗賊1名発見。どうする?)」


 道の奥の方で、寝ぼけ眼をこすりながら男が歩いてくる。恐らく尿意でも催したのだろう。まだ、物陰に隠れながら進むこちらには気付いていない。


「(予定通り、まずは私が一撃を与えます。ピンギとドロセラは、私がミスった時のフォローを)」


「(了解! いつでも言ってね!)」


 小声で話した後、アコナイトは単発の狙撃用レーザー『シクトキシン・ショット』を放つ。白色の光線は、男の額に直撃。男は悲鳴を上げる間もなく倒れた。


「(さすが、アコちゃん! 濡れちゃいそう!)」


「(姉様、発情するなら帰ってからにしよう。ほら、行くよ)」


 ピンギキュラとドロセラは前衛として警戒しながら、洞窟を進んでいく。


 その内、若い女性の喘ぎ声が聞こえてきた。昼間の盗賊が吐いた頭目の部屋からだ。換気装置の部屋に行くには、そこの前を通らなければならない。


「(あそこには、ここの盗賊達の頭目が居るはずです)」


「(うわぁ、生々しい声が聞こえる……。絶賛お楽しみ中ってわけ)」


「(テレサ嬢には気の毒ですが、あれではこちらに気付く事は無いでしょう。先に換気装置を破壊しましょう)」


「(アコ太郎達も、お楽しみ最中には、アタシの声が届かないよね)」


「(フロッガー、余計な事は言わなくて良いです)


「(分かってるって! アタシはいつだって真面目だよ!)」


「(……では、そろそろ行きましょうか。気付かれない様に)」


 頭目の部屋の前を素通りしつつ、アコナイト達は、換気装置が置かれた部屋にたどり着いた。


 換気装置、厳密に言えばそれらを動かす魔導電源装置は、人一人くらいの大きさの箱で、蓋を開けると幾つかのボタンやレバーがついていた。


 ピンギキュラは、それを簡単に観察すると、ゴム手袋をはめて、持ち込んだ工具で、早速作業に取り掛かった。


「(……このタイプのは、ちょっと弄ればすぐに動かせなくなるようになるね。安物を使っててよかったよ)」


「(ピンギ、お願いします。派手にぶっ壊してしまいなさい。あ、でも、音は立てないでくださいよ? 気づかれるかもしれませんから)」


「(大丈夫、大丈夫。任せてよ。技術屋なら、こんな物、朝飯前だから)」


 ピンギキュラは、鼻歌を歌いながら、楽し気に作業を進める。ちなみに、鼻歌はラノダコールの国歌だった。


 宣言通り、5分ほどで、換気扇の動きが止まった。


「(一丁あがり! 後は通気ダクトを通じて、催眠ガスを流し込めばOK。これで、作戦は終了だね)」


「(ご苦労さまです。ピンギキュラ。勲章ものです)」


「(えへへ。後で、沢山いじめて、沢山可愛がって欲しいなぁ……ドロセラちゃんと一緒に)」


挿絵(By みてみん)


(……姉様、こう見えてドMだもんなぁ。私も付き合わされるんだろうなぁ、妾の娘をいじめる正室の娘プレイでの言葉責め要員として……)


 なんとなく、呆れた様な視線で姉を見るドロセラ。それを尻目に、ピンギキュラは手早く、催眠ガスの散布準備を終えた。


「(よし、それじゃ、今からこれを撒くから、皆、ガスマスクをして待機しておいてね)」


「(了解です)」


「(ほら、駄犬も、早く人間態になって)」


「(これ、息苦しくて苦手なんだよなぁ)」


 ピンギキュラは、スプレー缶に似た機械から、霧状の液体を通気ダクトへ撒き散らした。それは瞬く間に、洞窟内に充満していくだろう。


ピンギキュラ「という訳でお姉ちゃん無双回でした」

ドロセラ「身内に技術者がいると一気に取れる選択肢増えるね」

ピンギキュラ「あと本作だけど、アホ作者が最近忙しいらしいからしばらく週1ペースで更新になるよ」

ドロセラ「アイリスIF3の締め切りももうすぐだしね。そっちにもリソース割きたいし」

ピンギキュラ「『えっ、ざまぁをしたら世界が滅亡する?!  嫁いだ先の旦那様にすでに3人もお嫁さんがいますが、私は元気です(https://ncode.syosetu.com/n8017ih/)』という話だよ。良かったら読んでね」

ドロセラ「ブクマ、評価おねがいします」

ピンギキュラ「感想、誤字脱字報告もよろしくお願いします」

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