5話 血の鷲
今回微グロ注意
2人の盗賊と1人の闇商人がアコナイトに尋問されている。2人は、首にバンドを付けられ、そこに両端がフォーク状になった器具をとりつけられていた。それは、『異端者のフォーク』と呼ばれる拷問器具で、対象の首に取り付ける事で、その先端がそれぞれ首と顎に食い込み、精神的・肉体的な苦痛を与える事が出来る。
アコナイトは、まずは盗賊の方に話しかけた。
「……まずは、あなた達の洞窟の構造を教えてもらいましょうか」
「……嫌だ。親分に殺される……!」
「このまま黙っていても、私に殺されますよ? もしも素直に吐けば、命くらいは助けてあげましょう」
アコナイトの言葉に対し、闇商人の方が侮蔑の言葉を吐く。
「ふん……その訛り、ラノダ人か。お前のような、野蛮人に情報なんて吐くものか」
「野蛮人?」
「そうだ。蛮族め。未だに生贄の儀式なんてやっている狂人どもめ。卑劣な愚か者共が!」
闇商人は、唾を飛ばして叫ぶ。
アコナイトは、溜息を一つつくと、今度は闇商人の髪を掴んで、顔を持ちあげた。
「これはこれは、中々活きの良い捕虜の様で。あなたにも質問しましょう。答えてくれたら、命は助けてあげますよ。テレサ・サケットというお嬢さんを知りませんか? 何でも良いです。奴隷として売り飛ばした中にいたとか、殺されたとか、どんな些細な情報でも構いません」
「知らない」
「本当に?」
「本当だ。蛮族野郎に吐く情報はない」
「ふむ。……では、情報を持っていないなら、あなたは用済みですね」
アコナイトは、あっさりと言った。彼の乳姉妹に語り掛ける時の様に、甘くとろけそうな美声とは全く違い、恐ろしい程に冷たい口調だった。
その口調に、異様なものを感じたのだろう。少し商人は、震え始めた。
「おい、待ってくれ……! 俺はこれでも闇取引で財を成していてな。俺が殺されたとなれば、必ず俺の商会の人間が報復に来るぞ」
「なら、ますます生かしておけませんね。……この山奥です。死体が見つからなければ、私が殺った事など分かりません」
アコナイトは、淡々と告げながら、闇商人の背中を蹴り飛ばして、地面に転がした。
「あなた、先程、ラノダ人の事を狂人だの野蛮人だの言っていましたね。別に怒っていませんよ? 未だに野蛮な生贄の儀式をしているのは事実です。むしろ、嬉しいくらいです。我が国の文化が他国にも知れ渡っている様で」
そのまま、アコナイトはよく研がれたナイフを手に持った。
「丁度いい。せっかくなので、あなたにはより知識を身に着けてもらいましょうか。ラノダではね、夏至と冬至に、生贄を我らが神々に捧げる儀式を行います。生贄に捧げるのは犯罪者。栄えある贄に選ばれた罪人は、自身の罪を許され、来世で幸福になれると言われています」
アコナイトは、もう一人の捕虜の盗賊の顔の前で、脅かすようにナイフをちらつかせて見せた。
「ちょうど、あなた方は罪人。片方は盗賊として、もう片方は人身売買の闇商人。しかも、2人とも生贄の候補になれる様な重犯罪を犯している」
「……!?」
「お、おい、まさか……」
明らかに自身の信仰への狂信を孕んだアコナイトの言動に、2人の罪人は戦慄する。
「夏至にも冬至にも、まだ早いですが、我らの神々も、生贄を捧げられたなら喜んでいただけるでしょう」
そう言いながら、アコナイトは闇商人の方に歩み寄っていく。そのまま、背中にナイフを突き立てると
*** あまりにも野蛮で、残虐で、おぞましい行為(R18G)につき中略 ***
「う、うわぁぁぁぁぁぁ!! 」
その生贄を間近で見せられた盗賊は、恐怖のあまり、絶叫した。
「どうですか? 素晴らしい方法だと思いませんか? ラノダのやり方は。美しくないですか? この最期に鷲が羽を羽ばたかせる様な所など。昔、ラノダが健在だった頃は、これは半年に一度のお祭りの時のメインイベントだったものです。懐かしいですね」
アコナイトは、血まみれの手を拭いながら、満足げに微笑みかける。その笑顔は、まるで、無邪気に蟻を潰す子供の様だった。
「さて、次はあなたの番ですよ。……知ってる事を話してください。さもないと、またさっきの光景を繰り返す事になりますが?」
「ひぃ……」
盗賊は、怯えた目つきでアコナイトを見る。
彼が行ったのは、ラノダにおける、メジャーな生贄の方法で『血の鷲』とよばれる処刑であった。
詳細については、あまりにもおぞましい為、読者の方々に各々自己責任で調べてもらうとして、それを目の前で一部始終見せつけられた盗賊は、完全に心が折れていた。
「あ、ああ……話すよ。だから、もうやめてくれ……!」
「ありがとうございます」
アコナイトは、にっこりと笑うと、首のフォークを外す。窮屈さから解放されて、盗賊は大きく息を吸った。
「じゃ、まずは洞窟の構造を教えてもらいましょうか。注意点があれば、それも一緒に」
「えっと……洞窟の入り口は、2人づつ、バディで仲間が監視している。そこを降りるとすぐに大きな空間がある。そこには、俺達の仲間が何人かいて、食料とかも保管している」
「ほうほう……」
アコナイトは、盗賊の言葉を聞きながら、洞窟内の間取り図を描く。裏をとった訳では無いので、完全に信用はしない。あくまで、話半分だが、盗賊は『血の鷲』の処刑があまりにも惨いもので、それが余程ショックであった為か、聞いていない事もペラペラしゃべった。嘘をついている様にも見えなかった。
「テレサ・サケットというお嬢さんを知っていますか? モストラルの村を貴方達が襲った際、さらった少女です」
「……知っている。あの子、そんな名前なのか」
「はい。それで、彼女はどこに?」
「あの子、親分のお気に入りでな。毎晩、親分のおもちゃにされているぜ。ま、俺達の知った事じゃないけどな」
「……そうですか。ひとまず、殺されてはいない様ですね」
アコナイトは、それだけ聞くと、地図を丸め、懐に入れた。
ひとまず、彼女の生存を知れただけでも十分な成果だ。ただ、アコナイト達は、彼女が既に殺されている想定で動いていたので、作戦の練り直しが必要だろう。
「最後に、もう一つ。警告と言ってはなんだが……親分、かなり強いぜ」
「……それは、どういう意味でしょう?」
「言葉通りの意味だよ。あいつは、俺らみたいなならず者とは格が違う。俺が言うのも何だけど、あんたみたいな別嬪さんが勝てる相手じゃないと思うよ」
「ふむ。忠告ありがとうございます。ですが、ご心配なく。私もそれなりに修羅場はくぐっています」
アコナイトは、不敵に言いつつ、盗賊に睡眠魔法をかけた。殺す事はしないが、ギルドには突き出す。とりあえず、命だけは助けるという約束は果たすつもりだ。
「……盗賊の親分、強敵ですか」
先程の不敵な顔から一転、厄介そうに、アコナイトは溜息をつく。
「なるべく、交戦は避けたいものですが……。出来れば寝込みを襲って、一撃で首を落とすとかしたいですね」
そう呟くと、アコナイトは、生贄に捧げた闇商人の死体を、火炎魔法を使って、骨まで焼却処分してから残骸を埋めると、眠らせた盗賊を担いで、レイフォストの街まで戻った。
ドロセラ「大丈夫? 読者さんドン引きしてない?」
アコナイト「ここまでついてきた人たちなら大丈夫でしょ、多分……。」
ドロセラ「あのノスレプ女の罵倒が差別や偏見に由来するものじゃなく、文字通りの意味だった事実」
アコナイト「倫理観を気にする必要無くなるので便利なんですよ。蛮族設定。それはそれとして、大量虐殺にはPTSDになっていますが」
ドロセラ「そういえば、また投稿遅かったけど……」
アコナイト「間に一本、中編小説を書いてましたので。「昔から、策士策に溺れると申します……。(https://ncode.syosetu.com/n0991ij/)」というお話です。変化球よりの婚約破棄ものです。そっちもよろしくお願いします!」
ドロセラ「こっちの話も、まだの人は、ブクマ、評価おねがいします」
アコナイト「感想、誤字脱字報告もよろしくお願いします」




