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4話 馬車強襲

 アコナイト達は、先回りして襲撃地点に到着した。


 草むらに伏せながら、3人と1匹は、馬車が来るのを辛抱強く待つ。


「……来たよ」


「よしよし、想定通りこのルートを通りましたね」


 やがて、馬車がやってきた。荷台には檻があり、その中には何人か人が入れられている。


 アコナイトは、双眼鏡で確認しながら偵察時の記憶を思い出す。


(護衛は4人、荷台に乗っているのは5人か。荷台の人間は全員女。恐らく、全員盗賊に攫われてきた女性達でしょう)


「……どう? アコ太郎。当たり?」


「ええ。間違いなさそうですよ。檻の中に女性がいます。テレサ嬢が居るかは分かりませんが」


「……じゃあ、作戦通りにいく?」


「ええ。予定通り、まずは私とフロッガーが睡眠魔法で先制攻撃をかけ、敵を無力化させます。その後は、闇商人でも、盗賊でも、眠った1人か2人を捕虜にします」


「残りは?」


「その場で『処分』しましょう。ケルベロスの仕業に見せかける為に、フロッガーは、捕虜にした奴以外を爪と牙で殺害してください」


「任せて! 人殺しなら大好きだよ!血の臭いも、断末魔も、何もかもが最高だからね!」


 フロッガーは舌なめずりをしながら嬉々として答えた。


「では、作戦開始です」


 3人と1匹は、それぞれ配置についた。


 アコナイトとフロッガーが前衛に立ち、睡眠レーザー『ヒュプノス・バックショット』の呪文を唱え始めた。


 相手を眠りに誘う睡眠魔法は、もはや麻酔といってもよく、しかも彼らが使うのは、避けにくい散弾レーザーである。この狭い道では、逃げる隙間もない。


「……我と我の中の紺碧薔薇の魔女の名のもとに放つ。眠れ、永遠の夢へ」


「さぁ、おやすみなさい」


「「ヒュプノス・バックショット!!」」


 フロッガーの左頭と、アコナイトの戦斧のスパイクから放たれた光弾が、途中で分裂し、辺り一面に降り注ぐ。それは、まるで光のシャワーのようであった。


「な、なんだ!?」


 不意打ちで、しかも文字通り、光の速さで着弾したレーザーに盗賊たちは、反応すら出来なかった。


「……zzz」


 そのまま、バタバタと倒れていく。檻の中の女性達も巻き込んでいるが、そこは睡眠魔法、危害を加える事はない。


「よし、今!」


 ピンギキュラとドロセラが飛び出す。2人は、素早く盗賊達を縛り上げ、身動きできないように拘束していく。


 時間にして、わずか30秒程の出来事だった。


「これで終わりかな」


「ええ。全員眠っていますね」


 アコナイトは、縛り上げた中から、適当に2人、盗賊と闇商人を選んで捕虜とした。


「尋問用はこの2人にしましょう。フロッガー、あとのガラクタは適当に始末しといてください」


「はーい」


 フロッガーは、早速、倒れた盗賊達の元へ行き、鋭い牙で頭を砕いたり、同じく鋭い爪で、喉笛を引き裂き始める。


「うわあああああっ!!」


「やめてくれえええええっ!!!」


「ぎゃぁぁぁぁ!」


「ん~、楽しーい♪」


 彼女の性癖からか、わざわざ眠っている相手を起こして、一通り嬲ってから殺していくので、悲痛な断末魔が周囲に響く。百戦錬磨のアコナイト達ですら思わず目を背ける程、残虐な光景が繰り広げられる。


 しかし、彼女にとっては、それが至上の快楽らしい。


「……相変わらず凄まじいですね」


「まぁ、あれがあの駄犬の良い所でもあるけどね。汚れ仕事任せても、嫌がるどころか、率先してやりにいくし」


「……つくづく、カタストに来て早々、あんなヤバい奴を仲間に出来たのは、運が良かったね。それより、私達は、捕まっている女の子の様子を見に行こう」


「ええ」


 アコナイトとピンギキュラは、檻の中を確認する。


 そこには、10代後半から20代前半くらいの女性達が数人居て、全員レーザーを浴びて眠っていた。


「大丈夫ですか? 助けに来ましたよ」


 アコナイトは、戦斧で鍵を壊し、檻を開けながら声をかける。


「…………」


 返事は無い。全員深い眠りに落ちているようだ。


「仕方ない。気持ちよく寝ている所悪いですが、起こしますか」


 アコナイトは、檻の中で一番年下の女の子を優しく起こした。他の女に触れた事で、ピンギキュラとドロセラが露骨に嫉妬心を向ける。アコナイトは、振り返って余裕たっぷりに彼女達に「大丈夫、私が愛しているのはあなた達だけです」と甘く囁くと、少し表情が柔らかくなった。が、まだ警戒は解いていない。


 これは後でたっぷり私の愛を注いであげねば……。そう考えつつ、今は仕事の事を優先する。


「起きてください。もう安心ですよ」


「……ん……ふぇ?」


 女の子は、アコナイトに揺すられて目覚めた。


「あ、あなた方は……?」


「カタストの冒険者パーティー『捕食毒華』です。我々は、あなた方を保護しに来ました。助け、いるでしょう?」


 アコナイトの色気に当てられたのか、女の子は頬を赤らめて答える。


挿絵(By みてみん)


「ええ……はい。お願いします……!」


「よし。では、近くの街、レイフォストへ行きましょう。ピンギ、ドロセラ。他の女の子達も起こしてください。かの街のギルドに保護を求めましょう」


 アコナイト達は、起こした女性達を檻の外に出るように促した。


「……目を瞑って。一番近くの子、私の肩に掴まって。他の子もその子の後に、数珠つなぎで掴まって」


「え……何で……?」


「いいから!」


「は、はい!」


 檻の外の虐殺はほぼ終わっていた。フロッガーの玩具にされた盗賊たちは、四肢を引き千切られ、頭を砕かれ、周辺は血まみれになっていた。とてもじゃないが、年端もいかない女の子に見せて良い光景ではない。


 ピンギキュラは、気を利かせて目を閉じさせたまま、ひとまず安全そうな物陰まで行列を牽引した。その後、隊列を解いた後、改めて、全員の様子を確かめる。


 助け出した人数は5人、皆、疲れ切っていたが、ひとまずレイフォストくらいの距離までなら自力で歩けそうだ。


「……この中に、テレサ・サケットという子はいる?」


 ピンギキュラが尋ねたが、誰も名乗り出ない。


「いない様ですね」


「ま、元から居たらラッキーくらいに思ってたし」


「……この後はどうしようか?」


「そうですね……ピンギとドロセラ、あとフロッガーの3人で、彼女達を街まで送ってください。……私は、彼らと少しお話(・・)を」


 そうアコナイトが縛られて転がっている盗賊と、闇商人に視線を移した。それだけで以心伝心したのか、2人はうなずいた。


「別行動だね。任せて」


「お互いやる事が済んだら、宿で落ち合いましょう」


「……アコちゃん、気を付けてね」


「はは……。ちょっと2人に見せられない事をするだけですよ。すぐ済みます。……それから、もし、敵対的な存在と遭遇したら、あの子達を囮にして逃げてください。『ヴェナートルオクト』なる、訳わからん連中に絡まれたばかりですし、トラブルが起きないとも限りません。非戦闘員を5人も護衛しながらまともな戦闘なんて、無理です」


 アコナイトは2人に小声で命じた。


「……相変わらず、冷徹だね」


「あくまで、あなた達の身の安全の為です。我が最愛の乳姉妹にして、最高の忠臣。あなた達を失ったら、私は……私は……!」


「分かったよ。兄様、だから鬱にならないで。じゃ、私達の安全最優先でいくよ」


「……アコちゃんも、何かあったらすぐに捕虜を口封じして、逃げてね」


 ピンギキュラは女の子達の先頭に立つと、火炎放射器を構えつつ、先導する。さらにドロセラが、周囲を警戒しつつ、それを後尾で護衛する隊形になった。一方のアコナイトは、縛り上げた盗賊と闇商人の元に向かう。


「『筋力強化』」


 アコナイトは自身に、強化魔法をかけると、2人を軽々と持ち上げた。この世のほぼ全ての魔法をマスターしているというのは便利なものだ。そう思いながら、虐殺を終え、血と叫び声で興奮状態になっているフロッガーを口笛を吹いて呼んだ。


「何々? こいつらも殺しちゃって良いの?」


 アコナイトが抱えている捕虜2人を見ながら、フロッガーは嬉しそうに言う。


「殺す前に聞きたい事があります。この2人は、拷問用に回します。私がここから少し離れた森の中でやるので、フロッガーはドロセラ達と共に、解放した女の子達を街まで送ってください」


「えー! アタシが拷問したかったのに~! まぁ、しょうがないな。分かったよ」


「終わったら、また合流しましょう」


 アコナイトは、フロッガー達に指示を出し終えると、今度は抱えた盗賊と闇商人の方を向く。


「さて……」


 アコナイトは、それを抱えたまま、少し先の、森の奥に入っていった。


 悲鳴の聞こえない程、奥に、奥に。

ドロセラ「やっぱ散弾レーザー強すぎるよね……」

アコナイト「不意打ちで撃てば避けようがありませんからね」

ドロセラ「地味に睡眠魔法も凶悪……」

アコナイト「捕獲任務なら任せろー!バリバリ」

ドロセラ「公爵邸襲撃事件でお見せ出来なかった分、今回使われて良かったって人はブクマ、評価おねがいします」

アコナイト「感想、誤字脱字報告もよろしくお願いします」

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