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8話 令嬢と毛氈苔1

「……」


「……」

 

 車内では相も変わらず、沈黙が流れている。

 

 目の前の座席にちょこん、と座っている少女は、マリーの方へ目は向けず、その視線は窓の外を向いている。


 その少女の名は、ドロセラ・ファイアブランド。

 

 姉と正反対の白色髪を右サイドテールにして、姉と全く同じの漆黒の瞳。スタイルの方も姉と比べると控え目。話によると、アコナイトより1歳年下の18歳だそうだが、小柄で凹凸が控えめな体型も相まって一見、それよりも幼く見える。


 彼女の視線の先の風景は、広大な草原地帯から一転、海岸線へと変化している。


 陽の光が海面へ反射し、美しく輝いている。彼女もマリーと話すのが嫌、というよりも、それに見とれている様に思われた。


 一行は、宿場町ごとに御者を交替しているが、今の御者はアコナイト。警戒はピンギキュラだ。休憩はドロセラである。


 正直、このパーティーの中にはアレ(・・)な奴しかいない。という事は、マリーも、もう察しがついている。


 その中でも1番の残念なのは、ドロセラだと思っていた。


 乳母姉妹兼恋人への、束縛と独占欲が強すぎるアコナイト。


 自分の命よりも、他の2人の命に価値があるとして、『価値の低い』自分の命を投げ出す事に一片の躊躇も無いピンギキュラ(火炎放射器使い)。


 と、立て続けに酷い性格の連中と関わっていただけに、自然、警戒心も強くなる。


 下手な事を言ったら、彼女の脇の座席に立てかけられたメイスが、頭上から降ってくるであろう事を想像し、思わず頭を抑える。


 彼女のメイスの先端には、トゲが溶接されていて、殺傷力が増してあるのが見て取れた。

 

 兜でも被っているならいざ知らず、何も防具が無い状態で食らったら、血と脳味噌の花びらが周辺に飛び散る事だろう。マリーは花が好きだが、自分が花になるのは御免こうむる。


 それも、先程アコナイトと話していた時に見た、悪意敵意嫉妬心を剥き出しにした、光の一切籠っていない瞳のせいである。


 第一印象というものが、どれだけその後の評価に影響を与えるか、というのをマリーは痛感していた。


「マリー様」


「ひ、ひゃい!? 」


 そんな事を想像しながら、マリーはドロセラの方をぼんやり見ていたので、突如話しかけられた事に酷く動揺する。

 

 それに対し、ドロセラはいぶかし気にマリーの事を観察しながら、口を開いた。


「いえ、先程から私の方を見ていたので、何かあったのかと……」


「いえいえ、何でもありません事よ。お気になさらず……」


 普段の彼女ならあり得ない程の、丁寧な応対である。彼女も命は惜しいのだ。


 すると、ドロセラはじっ、とマリーの方へ向き合うと、ゆっくりと口を開いた。出てきたのは、意外な事に謝罪の言葉である。


「……先程の事、申し訳ありませんでした」


「は? 」


 突然の謝罪に、今一つ、話が呑み込めないマリーは、素っ頓狂な声を上げてしまった。


 マリーの声には、特に反応は示さず、ドロセラは話を続ける。


「先程、マリー様を睨みつけた事です。……自分で言うのも難ですが、私は嫉妬深い女なのです。アコ兄様と、仲睦まじげに話しているのが、妬ましくて、盗られるのが怖くて、恨めしくて、本来、スポンサーにすべきではない顔を晒してしまいました。申し訳ありません」


「ドロセラさん……」


 突然の謝罪というまさかの展開に、マリーは困惑の方が大きい。


「実は運転中、ずっと謝ろうとは思っていたのです。謝罪が遅くなった事も、お許しを」


「はぁ……まぁ、私もそこまで気にしておりませんので、お気にせず」


 嘘だった。本音を言うと気にしまくっているのだが、ここは上に立つ者として、度量の大きい所を見せようと、余裕を持った口ぶりで答えた。


「流石、侯爵令嬢様。お心が広い。手討ちにする。などと言われたら、どうしようかと思っていたのです」


「まさか、そこまで心は狭くありませんよ」


 ――むしろ、私が討たれないか心配ですわ。


 という、本音の方は黙っておいた。


「私、これでもパーティーの常識人・ツッコミ役を自称しているのです。あの時は、錯乱していたと思っていただきたい」


「常識人……? ツッコミ役……? 」


 先程の完全に病んでいる瞳を思い出し、思わずドロセラには聞こえない様に、小声で反芻する。


 ――面白いですわ。


挿絵(By みてみん)


 そんな風に言われたら、かえって興味が湧いてきた。


 本当に常識人か否か、試させてもらおう。

 

そうマリーは決意し、彼女に話を振ることにする。


ドロセラ「ちなみにこのメイス、量産品を使っている兄様や姉様と違い、私の専用装備です」

マリー「それは意外ですわね。『捕食毒華』は皆、量産品好きなのかと」

ドロセラ「何だかんだ言っても、専用装備は本人用に調整されていますから、使いやすさはダンチです」

マリー「ロマンですわよね、専用装備とか専用機とか」

ドロセラ「そうそう、ドロセラ専用アコ兄様とか……」

マリー(ヤンデレ娘はそういう事言いますわよね~。とか思った読者の方々は評価・ブックマークよろしくお願い致しますわ)

ドロセラ(やっぱりアコ×ドロだよなぁ……と思った画面前のカップリング好き達も評価・ブックマークしていってね! )

マリー(今、頭の中で声が……?! )


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