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令嬢護衛戦編 エピローグ

 

「あ、その棚はこの辺りに置いてくださいまし。あぁ、その食器は丁寧に運んでください」


 カタスト帝国、帝都エニグマ。帝国一活気のある都市の一角の上流階級が住まう地区。官憲の目も行き届いている帝国でも屈指の安全地帯だ。


 こじんまりとはしているが、上品な佇まいの屋敷の一室で、マリー・エーススピアは引っ越しの指揮を取っていた。


「マリー様、この箱は? 」


「あ、アコナイトさん、その箱には私のドレスが入っています。後で私が自分で片付けますから、部屋の隅に置いておいてください」


 引っ越しの手伝いをするのは、アコナイト達捕食毒華3人と1匹である。これも、冒険者としての仕事だ。マリーが直々に、引っ越しの手伝いとして、彼らに指名し、依頼したのだ。


 あの護衛戦から、はや、2週間。時間はあっという間に過ぎたが、情勢は、刻一刻と変化している。

 

 まず、キャメル侯爵家が粛清された。


 アコナイト達が囮になった事で、侯爵家の私兵軍は、本拠地バール城から、ヴァッヴ廃城へ移動せざるをえなくなった。そうして本拠地ががら空きになった隙を突いて、帝国の『汚れ仕事専門部隊』が突入し、家中の者をことごとく討ち取ったという。エニグマにおいて、それらキャメル家の一門の首が梟首された事は記憶に新しい。


 キャメル候自身は、後日、ヴァッブ廃城の近くの森、ポイント・シエラ2で首をくくっているのが発見された。


 もっとも、これはアコナイト達が知る由もない事だが、候の体が不要と判断した『何か』が、自殺に見せかけて、体を捨てただけだが。


 侯爵家が滅亡した事で、アコナイト達は特に目をつけられる事も無く、冒険者稼業と、邪像の探索を続けられている。


 空白地帯になったプサラスには、新たに『ナイトホーク家』なる伯爵家が入ったという。この家、どうも、前述の『汚れ仕事専門部隊』を指揮する家だそうで、どうもきな臭い。帝国は、しばらく領内の裏切り者(・・・・)を抹殺する事に専念するつもりなのでは? ともっぱらの噂だ。


 何か、良からぬ事が起こらねば良いが……。と、フィッシュベッド(ギルドマスター)がぼやいていた事が、アコナイトは印象に残っている。プサラスも、しばらく、混沌とした情勢が続きそうだ。


 更に、それからしばらくして、カタスト帝国は、ラープのクーデターへの介入を正式に決定し、国境を超えて、軍を進撃させた。

 

 当初は、順調に進んだ介入だったが、戦況は、時間が経つにつれ、地の利に勝るラープ側が優勢になり、戦闘は拮抗。


 カタスト側は、泥沼化を嫌い、占領地の一部を割譲する事と、不可侵条約を結ぶ事を条件に、講話を結んだ。


 これが、1週間前。


 マリー達ラープの亡命者達は、帝国の保護の元、支援を受けながら、亡命政権を樹立し祖国奪還を目指す事になる。奇しくも、アコナイト達と同じ立場になった訳だ。ラノダコール残党軍も同様、帝国からじゃぶじゃぶと支援を受けている。


 別に慈善事業では無く、将来、祖国奪還が成った暁に干渉の口実を得るため恩を売られている形だが、背に腹は代えられない。後の事は後に考える事にしている。


 現在、帝国から与えられた屋敷に、マリーの荷物を運び込んでいる所だ。彼女の荷物は、亡命する時に、異次元に入れて持ってきたらしい。


「一通り、運び込んだ所ですし、少し、休憩にしましょうか」


 マリーは、人数分のケーキと紅茶を持ってきた。特にケーキは蜂蜜ケーキで、フロッガーは目を輝かせている。


 それに舌鼓を打ちながら、5人は話に花を咲かせた。ほんの1日一緒にいただけだが、あれだけ濃い経験をした後だと、半年くらい一緒にいた戦友の様な気になっている。わざわざ彼らを雇ったのも、状況も少し落ち着いた所で、改めて礼と話をしたかったのもあった。


「改めて、今回の護衛戦ではお世話になりましたわ。あのまま、捕まったままだったらと思うとゾッとしますわ」


「いえ、こちらも仕事ですから。それに、槍も失われてしまいましたし……」


「それは残念ですが、あれは私のせいでもあります。それに、他に脱出した者が持っていた槍の中には、盗られなかったものもあります。正統な継承は、これで行われません。あまり気に留めなくて良いですわ」


 気にするな、と、言わんばかりに、マリーは顔の前で手を振った。アコナイト達も槍の件については、心残りだったのだ。本人からフォローされて少し、救われた気分だ。


「……しかし、大蛇討伐の報酬、出なかったんですよね」


「そ、それは……心中お察ししますわ。心なしか、先程からイライラしている様に見えるのは、そのせいですか……」


「本当に、この国のギルドは腐ってますよね……。あぁ、ギルドの本部に5t爆弾(セイスモ・ボム)を命中させたい……」


「浮浪者や流民難民を集めて使い潰す組織が、まともな訳が無い、と言われればそれまでですが」


 3人が恨みを込めて言うように、大蛇討伐の件は、死体が残っていなかった事で、ギルドに報酬を出し渋られた。指輪の改造費用や、竜車やそれを引くキャリアドラゴンのリース代。更に、スタングレネードやスモークグレネードの費用など、全体での収支を考えると、トントンか、少し赤字くらいになった。大蛇討伐の報酬をケチられたことに、捕食毒華の面々が、ギルドへ鬱憤を溜めたのはいうまでもない。


 ちなみに、暴れられれば満足なフロッガーは、特にその話に加わる事も無く、蜂蜜ケーキを幸せそうに食べている。


「話を変えましょう。あの、エルフの方はどうしていますか? 」 


「スペクターなら、あの後、我々と別れ、元の居場所に戻りました。あの方、我々の主君の側近の方なのです」


「彼女にも、私が感謝していたと、よろしくお伝えください」 


 あの後、スペクターはアコナイト達と別れ、アコナイト達の主君、ファントム姫へと報告を行った。

 

 ファントムは、当初、件の邪像そっくりの化け物蛇が出てきた事にまず驚愕し、次いで、この邪像に秘められた力に恐怖した。なんらかの関連性がある事は明白。早く、残りの4つの邪像も回収しなければ、と改めて思ったらしい。


 ラノダでパルチザンとして、ノスレプの占領軍への抵抗運動を行っているメンバーから、何グループか引き抜いて、アコナイト達と同様に調査に当てるつもりらしい。人手が増えて悪い事も無い。今後は、邪像の調査もよりはかどるだろう。


「その……これは依頼。と言ってはなんですが……」 


 マリーは、紅茶を飲みながら、少し照れくさそうにしながら言葉を続ける。


「冒険者業に差し支えない範囲で構いません。たまに、ここに来て、私の話し相手になってくれませんか? 何分、カタストには知人もいないもので。くだらない話をして、暇を潰す相手もいませぬ故……」


 マリーのお願いに、3人と1匹は顔を見合わせる。そして、代表してアコナイトが微笑んで返答した。


「喜んで。我々で良ければいくらでも話し相手になりましょう」


「ありがとうございます! 皆さん、改めて、よろしくお願いいたしますわ! 」

挿絵(By みてみん)





「「ただし、私達のモノであるアコ(ちゃん)(兄様)は、あげませんよ! 」」

姉妹(あなた方)は、そう言うと思いましたわ……」



アコナイト「これにて、第一章『令嬢護衛戦篇』完結です! 」

ドロセラ「読者の方々、ここまでお付き合いいただきありがとうございました! 」

ピンギキュラ「いやー、9月から連載スタートして、約半年。思いのほか、長丁場になったね……」

マリー「約17万字。単行本1.5冊分。よく書いたものですわ」

フロッガー「次章以降は、設定解説減る分、少しは減るはず……。減ると良いなぁ」

アコナイト「その次章ですが、プロット組んだり、書き溜めしたりもしたいので、少しの間、投稿まで、間が開くと思います。しばらくお待ち下さい」

ピンギキュラ「休載中のタグもつけとかないとね」

ドロセラ「アホ作者、まだ仕事忙しいらしいからねぇ。それに、カー○ィの新作(厳密にはリメイク)も出ているし、アニメイトバディにも何か出したいらしいし。登場人物や用語のまとめも(半分自分用に)上げたいらしいし……」

マリー「アニメイトバディは、トップページで宣伝していましたわね。異世界恋愛で何か書くらしいですわ。さて、次章開始はいつになるやら……」

フロッガー「……アホ作者、おじさんだけど、異世界恋愛ものとか、書けるのかなぁ?」 

アコナイト「それについても、どうなることやら……。改めて、ここまで付き合ってくださった読者の方々、重ねてお礼申し上げます」

ピンギキュラ「しばらくお別れですが、また、そのうちお会いしましょう。読んでくださり、ありがとうございました! 」

ドロセラ「ブックマークしていただいた方は、新章開始時にすぐに分かる様に、外さずにしていただけると幸いです」

フロッガー「次章もお楽しみに! 」

マリー「よろしければ、評価、ブックマーク、感想、誤字脱字報告もよろしくお願いしますわ。それでは、ごきげんよう」


coming soon!


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