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5話 襲撃狼退治

 空は白み始めている。


 時折、車内に目を向けつつも、ドロセラ・ファイアブランドは『哨戒』の魔法を使って警戒を続けている。


 魔力を常に一定量消費する代わりに、五感の感度を上昇させる魔法で、警戒役になった者はかける事になっている。


「どう思う? あの女」


 すぐ隣にいる姉が小さな声で呟いた言葉を、『哨戒』で限界まで強化された耳はしっかり捉えた。


 彼女の姉、ピンギキュラ・ファイアブランドは炎の様な赤髪のツインテールに、妹と同様の黒真珠の様な瞳が特徴の女性である。


 黒フレームの眼鏡をかけ、出る所は出て、引き締まった所は引き締まった身体は妹と対極的だ。歳は、アコナイトより5,6歳くらい上だろうか。頭に被る三角帽は、彼女が魔法使いである事を示している。


「アコ兄様に手を出すとは思えないけど、手を出すつもりなら思い知らせるだけだよ」


「やだ、物騒」


「そういう姉様も、顔に嫉妬の2文字が書いてあるよ?」


「あ、バレた?」


「何年一緒にいると思っているの。まだ、手を出しちゃダメだからね」


「分かってる。排除はあくまで最終手段、だよね」


「その通り。兄様に手を出す雌には思い知らせる必要があるけど、同時に我々までアコ兄様に嫌われるのも避けたい。厄介事は起こさない様に」


 真面目な顔で、恐ろしい事を言い合うヤンデレ姉妹。が、マリーを即排除とはならない辺り、まだ理性は僅かながら残っている。


「それでさ、姉様。お嬢様とは別に、アコ兄様に手を出そうとしている雌がいるんだけど」


「その心は? まさか、ピンギキュラ・ファイアブランド。とか言わないよね」


 「流石の私でも、身内は敵認定しないよ。距離、前方500m。レイダーウルフ。雌と雄の混合で数は5。草むらで待ち伏せ中。この特徴的な鳴き声は間違いない」


「本当の意味で雌犬を探知した、って事ね」


 レイダーウルフは、狼型モンスターの一種だ。襲撃狼の名の通り、ウルフパックを組んで集団で狩りをする。ある程度腕のある冒険者ならさほど脅威ではないが、不意打ちや物量で押されると、厄介な相手である。


 ピンギキュラは竜車を停止させると、中のアコナイトに、敵を探知した事を告げた。


*  *  *

 

「と、いう訳でお嬢様、これから戦闘になりますので、絶対に外には出ません様に」


「い、いきなり戦闘になりますの?!」


「車に籠城している限り、食われる事は無いですよ。中で、戦闘の様子でも見物していてください」


 急な展開に、動揺を隠せないマリーを、車内にいる限り安全である事を強調し、彼女1人を残して、車に鍵をかける。レイダーウルフには車を破壊出来る様な武器は無い。ひとまず、これで食われる事はないだろう。


「しかし、妙ですね。こんな人里近い所にレイダーウルフが出てくるのは」


 アコナイトは、バトルアックスを手に取りながら感想を述べる。本来なら、もう少し深い山や森で遭遇するモンスターだったからだ。


挿絵(By みてみん)


「ここの所、天候不順だから、食べ物が少なくなっているのかも。ま、放置しても危険な事には代わり無いし、時間も無い。さっさと倒してしまおう。私と姉様で誘導するから、兄様は待ち伏せして横合いから奇襲するというのはどう? 魔法で一網打尽」


 ドロセラは私見を述べつつ、作戦を提案した。


「それでいきましょう。但し、無理はしない事。一応、防禦強化魔法をかけておきましょう。それに、攻撃失敗に備えて近くに(ブービートラップ)も仕掛けて」


「兄様は心配性だね」


「でも、アコちゃんに魔法をかけてもらうのは悪くない」


 アコナイトは、2人に厳重に、それはもう過剰な程に魔法をかけた。そして、光の無い目のまま、2人に口づけをする。一切、目に光は宿っていない。


*  *  *


 誘引はあっさり成功した。

 

 待ち伏せしていた草むらを、ピンギキュラの炎魔法で焼き払われた事で、狼達は出て来ざるをえなくなったのだ。


 それでも、数の差を考えるとまだ勝負できると判断したのか、狼達はドロセラとピンギキュラに襲い掛かった。


 2人は狼達の攻撃をいなしつつ、アコナイトが待ち伏せる草むらに、狼たちを誘い込む。


「紫色の花に宿りし、おぞましく甘美なる毒よ、我と我に宿る紺碧薔薇の魔女の名において、これを使役せん……」


 アコナイトは、集中しながら魔法の詠唱を行うと、片刃のバトルアックスの斧頭についているスパイクを、狼の集団に向け狙いを定める。


 愛用の97式バトルアックスは、元は帝国軍の払い下げ品である。木製の柄には魔法杖にも使用される『魔導梅』の木材を使用していて、それ代わりにも使えるのだ。


 使い心地は、流石に魔法仕様に特化した魔法杖には劣るが、この器用万能さが冒険者稼業と相性が良い。


 また、重さと大きさが体格に合っている事もあって、量産品であるにも関わらず、アコナイトはこれを好んで使っていた。


 姉妹からは狙いを逸らしている。


 タイミングを合わせ、彼は魔法発動の条件である技名を静かに呟いた。


 「――アコニチン・バックショット! 」


 その瞬間、戦斧の刺頭から紫色の光線が放たれた。光線は細かく拡散して周辺を光で包んでいく。光線は瞬く間に狼達を飲み込んだ。数十秒間の照射の後、周囲を包んでいた光が晴れると、そこには狼の死体だけが残っていた。表情は全て著しく強張っており、苦しんで死んだ事が伺える。


 これが、彼の必殺技、アコニチン・バックショットである。


 狙撃用では無く、面制圧を目的とした闇・光混合属性魔法だ。光線によるエネルギーで、敵にダメージを与える事が主な使い方だ。しかも、光線には猛毒が含まれており、もし光線で仕留められない場合でも、後遺症を与える事が出来る。


 2種の魔力を混ぜ合わせる強力な魔法な分、使いこなせる人間は少ない。アコナイトは、そんな数少ない人間の1人だった。


「流石アコちゃん。相変わらず、ほれぼれする」


「文字通りの面制圧。美しいよ」


 うっとりとした表情で、アコナイトを称える姉妹。アコナイトはその称賛を満足げに受けると、次いで姉妹達の身体に傷が付いていないか、丁寧に確認した。そして異常が無い事を確認し、安堵すると、彼はさも当然といった具合に、2人に濃厚なキスをした。


 姉妹も姉妹で、それをさも当然といった具合に受け入れていた。


 ヤンデレ同士が恋人になると、周辺そっちのけで自分達だけの世界にずぶずぶと入っていってしまったまま帰ってこない。この主従兼恋人同士にもそれが当てはまる。


 結局、中々3人が戻ってこない事に不安を募らせたマリーが、中から鍵を開け、3人を見つけて、こちらの世界まで帰って来させるまで、いちゃいちゃは続いた。


アコナイト「何ですか、このパート? 」

ピンギキュラ「……ここは茶番パート。今回から始まる、本編に入れると冗長になる設定解説、裏話、茶番、宣伝をするSSパートだよ」

ドロセラ「メタフィクション、茶番マシマシでいくから、今後は、このノリが苦手な読者さんは、このパートが始まったらブラウザバックするか、ブラウザの閉じるボタンを押してね! 」

アコナイト「早速メタネタを……」

ドロセラ「まだまだこの小説は発展途上。投稿されたばかりで読者さんも少ないし、せっかくだから色々やってみようよ。不評だったら消せば良いし」

アコナイト「……まあ良いでしょう。今回は初戦闘回でしたね」

ピンギキュラ「さすがアコちゃん! 狼達を一網打尽にしたね」

ドロセラ「よっ! なろう主人公! さすアコ! さすアコ! 」

アコナイト「改めて称賛されると照れますね。しかし、なろう主人公って大体剣使いなイメージがありますが、私って、バトルアックス使いなんですよね」

ピンギキュラ「アホの作者曰く、いわゆる逆張りと、ヤンデレ美少女(♂)に無骨な斧を使わせる事でギャップ萌えと、狂気性の表現を狙っているらしいよ」

アコナイト「その割に、攻撃には魔法を使いましたが……。私がかっこよく斧を振るうシーンはこの先ありますかねぇ……」

ドロセラ「そこはアホの作者の戦闘描写を書く能力次第かなぁ。読者の方々は気長に待っててね。あと、ブックマークや評価をしてくれると、作者のモチベが上がるよ! 上がるよ! 」

アコナイト「ここぞとばかりにアピールを……」


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