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33話 まだらの模様の太刀使い


「故郷があるっていうのは良いですよ、帰りましょう、お嬢様」


 女は、そう言いながら、マリーに近づいてきた。知人ではない。ラープ語を話しているが、アクセントが妙だ。恐らく、他国の人間であろう。


「マロンさんには、指一本触れさせないよ! 」


 唸り声を上げて威嚇するフロッガー。それに、彼女に敵意を向けているのは彼女だけではない。


「やいやい、突然やって来てどういう了見だ!! 」


「エンペラーモールの爪は金になる、倒してやる」


「かっこいい所を見せてやる! 」


 先程、絡んで来た冒険者達だ。それぞれ、剣を抜いて、臨戦態勢になっている。


「警告します。私の目的はお嬢様です。他の方々へ危害を加えるつもりはありません。しかし、向かってくるというなら容赦はしません。やりますか? 」


 3人の冒険者達は、剣を手に突撃する事で返事に変える。ローブの女性はため息をつくと、太刀に手をかける。


 そのまま、一息に刀身を抜き去ると、そのまま刃を虚空に振る。


 驚いた事に、虚空に振った刃からは、黄緑色の衝撃波の様なものが放たれた。それは、3人の男の首筋に真っ直ぐ飛んでいき、そのまま、首を刎ねた(・・・・・)


 恐らく、彼らは自分に何が起こったかすら分からなかっただろう。鮮血と共に、胴体から3つの首が落ちた。


 それを見た他の客達は、たちまちパニックを起こした。阿鼻叫喚の悲鳴が上がる。殺伐とした時代とはいえ、流石に、目の前で人の首が落ちたら正気ではいられない。


「お静かに!! 」


 女性は、群衆に一喝をいれた。客たちは、たちまち静かになった。彼女の殺気と、威圧感は圧倒的だ。彼女はまさに、場を支配していた


「私の目的は、お嬢様だけです。他のお客様は逃げてよろしい。あぁ、それと、ラノダ人が居れば残ってください。……残りは行け! 」


 何故か、ラノダ人を居残りに指定したが、それ以外には、興味がないのか、目配せして、目当ての人間以外を彼女は解放した。ラノダ人も、客の中にはいなかったのか、国籍を詐称しているのかは分からなかったが、誰も残らない。それには、やや不満げだった。


「ラノ(ラノダ人の蔑称)は無しか。いたら、ちょっと痛い目に会わせたものを……まぁ良い。お嬢様、改めて。私は貴女様を迎えにきたものです」


 あくまで淑女的に頭を下げる女性。それを、マリーは恐怖と嫌悪を持って見つめる。


「礼儀がなっていませんね。せめて、名前と顔くらいは晒してくださいまし? 見せられない程醜い顔をしているのですか? 」


「そのまさかですよ」


 女性はそう言うと、ローブのフードを取った。


 髪は白色髪。奇しくもドロセラのものと色彩は似ている。歳も同じくらいの17、8歳くらいだろう。その白色髪をセミロングにし、瞳は炎の様な赤色。美人に分類出来る。


 が、それ以上に目を引くのは、その顔面である。顔は重い火傷の跡があり、まだら色に変色し、異様な雰囲気を持っていた。身体にもその跡は伝っており、かつて、生死の淵をさまよう程の火傷をした事が伺える。


「サラ・ヴァイスハイト。しがない、ビーストテイマーをしております。今回は、とある方の命令で、マリー様を連れてくる様に頼まれました」


「ビーストテイマー? 」


「ええ。動物を操る魔法に長けています。ネタバラシですが、お嬢様達の頭上をずっと、カラスが飛んでいたでしょう? あれは私が放った偵察です。どこの宿場町に泊まるか、どこの宿に泊まるか、護衛が剥がれるタイミングはいつか。常に教えてくれました」


「ずっと、お見通しって訳ですか。あのデイノアーラも、貴女? 」


 そういえば、不気味についてくるカラスがいたと、マリーは思い出した。どうやらずっとこちらの行動は筒抜けだった様だ。


「ええ。私のバディが中々の魔術師でして。彼が召喚したオークを運搬して、降下させ、町中を混乱に落としているどさくさの中で、シェルターに逃げ込んだ本命の貴女を捕獲する作戦です。見事に成功しました。貴女に、頼りの護衛はいない。大人しく捕まってください」


 無表情で、だが、勝利を確信したような口ぶりで、少女は語る。


「ちょーっと待ったぁ! 護衛はアコ太郎達だけじゃないよ! 」


 それまで会話に入れなかったフロッガーが、待っていましたとばかりに大声を上げた。


 そして、そのまま、ポーズを取ると、人間態から獣形態に変身する。そのまま、マリーの盾になる様に、前に出る。


「そういえば、ケルベロスが1体いましたね。召喚獣は分類上アンデッド扱い。ビーストテイマーの魔法で操れるのは、生物のみ。少し面倒ですねえ」


 口ではそう言いつつ、サラは、太刀を構える。


「……アコ太郎もそうだけど、近接戦闘が出来る魔術師ってズルいよねぇ」


「死霊はあの世にお行きなさい」


「やなこった! 」


 フロッガーは、3つの頭からそれぞれ舌を出して挑発する。しかし、サラはそれには乗らず、冷静に間合いを調節している。このまま無策で飛び掛かってきたら、カウンターで睡眠魔法を放って眠らせ、3つの頭でそれぞれ急所へ噛みついて、けりをつけようと思っていたが、アテが外れた。


 言動はアホながら、フロッガーは戦闘時にはそれなりに頭が切れる。どうすれば、より効率よく相手をいたぶれるか、というのを追求しているだけ、とも言う。


「依頼主は……大方、バーンズかハーンの命令ですね」


「ご想像にお任せします」


「バンズ? カン? 」


聞き慣れない名前に、フロッガーの頭に「? 」マークが浮かぶ。それを、マリーは解説した。


「バーンズ・キングスピアと、ハーン・アス。前者は、全ての元凶のキングスピア家の当主。後者は、我がエーススピア家の執事、でありながら、バーンズと内通して我が家の情報を売っていた裏切りものですわ! 特にハーンは私の手で八つ裂きにしてやりたいくらい……! いつも私の事を、いやらしい目で見てきましたが、ここまで性根が卑しいとは! 」


 珍しく、憎悪をにじませた目をしているマリー。主敵よりも、裏切った元味方に恨みが向かうのは、ある意味人間らしいと言える。


 フロッガーとサラは、間合いを取り合いながら、相手の隙を伺っている。


 サラも、ケルベロスが魔法を得意とする種という事は分かっている様で、カウンターを警戒し、中々仕掛けて来ない。


 そんな、短くも長い時が過ぎていると、不意に、シェルターの入り口から、ゆるふわなのんきな声が響く。


「何か、大きな音がしたけど~、大丈夫~? 」

 

「オウカさん?! 今は来てはいけません! 危険です!」


 マリーが振り返ると、そこには、ピンク髪の女性がいた。オウカだ。


「何~? 何があった……の?」


 彼女にも、シェルター内部の惨状が目に入った様だ。崩壊した壁と、巨大モグラと、侵入者、そして、首の無い、3人の冒険者の死体と血だまりをその糸目で見た。


 しばし、呆然とした後、オウカは、それまでの糸目をぱっちりと開いた。髪同様、ピンクの瞳には悲しみと怒りが宿っていた。


「……お客様を守れなかった……。これをやったのは、貴女かしら~? 一見様ねぇ~」


「いかにも。手ごたえはありませんでしたが」


「……うち(オオトリ)のルールはね、他のお客様と、トラブルを起こす方はお引き取り願っているの。危害を加えるなんてもってのほか。すぐに憲兵隊に突き出させてもらっているわ~。お客様は神様だけど、他の神様(お客様)に迷惑をかける方を拝む義理は無いわ~」


そう言って、オウカは、手に持っていた87式12.7㎜多目的ライフルを構えた。


「他のお客様に迷惑をかけるどころか、殺してしまうような方はどうしましょうか~。……この世からお引き取り願いましょうか」


そのまま、彼女は、何発も引き金を引いた。まったくの早撃ちで、単発式のライフルにも関わらず、機関砲なのではないかと錯覚するほどである。


 が、サラは驚いた事に、飛んできた巨大な銃弾を全て、太刀で薙ぎ払ってみせた。


 だが、そうした事で、一瞬、隙が出来る。


「さぁ、サラトガさん、今度はこっちからいくよ! 」


 フロッガーはにやりと笑うと、詠唱を始めた。


マリー「この世界の技術力って結構謎ですわよね……。一見、中世ヨーロッパ風ですが、対物ライフルがある世界……」

フロッガー「一応、作者的には、第一次世界大戦~第二次世界大戦くらいの技術力をイメージしているらしいよ。ただし、内燃機関は無いみたいだね。内燃機関は無いねん(激ウマギャグ)」

マリー「(無視して)その割に、武器は皆、近接武器使っているんですよね……オウカさんはライフル使っていますが」

フロッガー「遠距離攻撃は魔法があって、皆割とポンポン放つ分、飛び道具は細々開発されるだけで、あまり注目されていないって事で一つ。それと内燃機関は無いねん、それも影響しているのかもね」

マリー「気に入ったんですか、そのギャグ」

フロッガー「内燃機関は無いねん(ははーん。この作者、銃器と魔法と剣を全部使う欲張りセットの為に苦労してるな、って思った方は評価・ブックマークお願いします)」

マリー「(また脳内に直接……?!)」



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