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27話 地上の処刑人

 ドロセラは、宿から出ると、手近な木の陰に隠れ、身体を出さない様に気を使いながら、上空を観察した。


 はたして、上空では、巨大な影がおよそ20匹、悠々と飛んでいる。あのシルエットは間違いなく、デイノアーラのそれだった。


(まさか本当にデイノアーラの群れが飛んでくるとは……正直、近縁のバーンサウルスかデイノクレストあたりの誤認と思ったんだけど……)


 心の中にあった疑念を、ドロセラは払った。同時に、嫌な予感もしてくる。


「――毛氈苔(ドロセラ)の名において、我が魔力に命ず。5つの感を研ぎ澄ませ。『哨戒』! 」


 彼女は、哨戒の魔法を発動させると、強化された五感をもって、再び上空を観察した。


 巨鳥の体長はおよそ30m。翼を広げた全幅はおよそ40m。白い羽毛はデイノアーラの特徴である。


 この群れの出現に何の意味があるのかを知る為、ドロセラは上空の群れの観察を続ける。そのうち、妙な事に気付く。


 デイノアーラは両足に1つづつ、何か(・・)を掴んでいた。それは、カーキ色で、がっしりとした人型だった。


 そうするうちに、帝国の空軍だろうか。何匹か、航空竜騎士をのせた飛竜が飛んできた。


 飛竜は、茶色の羽毛で覆われており、オウムの様なくちばしと、特徴的なとさかを持っている。


「あれはマザーラプトル。確か、帝国空軍もこの種を使っていたね……」


 見覚えのあるシルエットに、ドロセラは懐かしさを覚えた。

 

 この飛竜は、かつて、ラノダコール空軍も航空竜騎士(ドラゴパイロット)隊で使っていた種である。


 白亜紀に存在した羽毛恐竜、オヴィラプトルの子孫が大量絶滅を生き残り、魔力を獲得。大型化しドラゴンに進化して、空に進出した『スカイラプトル』を、航空竜騎士(ドラゴパイロット)用に品種改良したのが本種だ。


 ラノダコール時代のドロセラの愛竜でもあった種である。


 誇らしげに空を舞う、全長19m、全幅11mにもなる大型の飛竜を、ドロセラは羨望の眼差しで見つめた。


「……あぁ。もう、二度と乗れないんだろうなぁ」


 『マザーラプトル』の軌道を指でなぞりながら、彼女はため息をつく。


挿絵(By みてみん)


 アコナイトの乳母妹として、恋人として、今の生活に不満はない。ブラック環境の冒険者稼業も、初めから分かっていた事ではあったし、戦争時や落ち延びていた時より遥かにマシだ。不満は無いのだが、それはそれとして、元航空竜騎士の本能として、再び空を自由に駆けてみたいという思いがあるのも事実である。


 今回の依頼の様に、竜を操る事はたまにあるが、陸生ドラゴンと飛竜は全くの別物だ。


 遮るものの一切ない空を、かかるGに耐えながら、急加速、急減速、旋回、ロールを繰り返しながら飛び回るのは、これ以上ないくらい刺激的だった。


「いけない、いけない。今の私はあくまでアコ兄様のモノ。空やドラゴンに浮気するわけにはいかないよね」


 そう自分に言い聞かせ、無理やり空への未練を断ち切ると、改めて、観察を続ける。


 元エース航空竜騎士(ドラゴパイロット)が見るに、帝国空軍の航空竜騎士(ドラゴパイロット)の動きはあまり良くない。


 大型の『マザーラプトル』といえど、デイノアーラよりは小回りが利く。にも関わらず、航空竜騎士(ドラゴパイロット)達の魔法攻撃は、中々デイノアーラに命中しない。


航空竜騎士(ドラゴパイロット)が操縦している訳でも無い、野生のデイノアーラ相手に何をもたもたしているの……! 市街地への被害を気にしているの? 」


 歯がゆい思いで眺めていると、ようやく、1発、炎系の魔法が命中した。デイノアーラは全身が炎に包まれて錐もみ状態で墜落していった。墜落地点は郊外の森の中。街に死骸を落とさない様に、慎重になっているのだろう。


「気持ちは分かるけど、歯がゆいなぁ」


 やきもきしながら戦闘を見ていたドロセラは、妙な事に気付いた。デイノアーラ達が持っているもの。すなわち、カーキ色の人型の物を次々手放し始めたのだ。


 初め、ドロセラは、人型のものが、デイノアーラに餌として攫われた哀れな人間だと思っていた。しかし、奇妙な人型のものは、何と、デイノアーラから解き放たれると、驚いたことに、『落下傘』を開いたのである。そのまま、落下傘はゆっくりと安定した機動で地上へ向かっていく。そして、だんだんそれらが地上へ近づいてくるに従って、ドロセラにはその正体が分かった。そして驚愕する。


「あれは……オーク?! 空挺降下してきたって事?! 」


 空挺部隊はどこの軍隊でも、専門の訓練を積んだ、精鋭部隊というのが相場だ。オークがそれを、しかも野生のデイノアーラを使ってしてくるというのは前代未聞だった。


「単純計算で、降下したオークは40匹弱。……兄様達と合流するより、お嬢様……というより宿の防衛に回った方がいいかもね……」


 何か、とんでもない事がおきているのは確実。騒ぎを聞いたら、すぐにアコナイト達も駆けつけてくれるだろう。そう、ドロセラは判断し、『オオトリ』へ踵を返そうとした。


 が、運の悪い事に、ちょうど、まさに目の前に、落下傘をつけたカーキ色のオークが2匹降り立ってきたのだ。


 彼らは、ドロセラを見つけると、ただでさえ鬼のような顔を、好戦的に歪ませた。どうやら、ロックオンされてしまったらしい。


「間が悪いとはまさにこの事。こいつを倒してからじゃないと、後退も出来ないって事ね……それに、サンドマン・オークって事は、さっき待ち伏せしてた連中って事か。凄腕魔術師様の指金って所かな」


 ドロセラは、目の前のオークが、先程、フロッガーに虐殺されたサンドマン・オークだと見抜いた。つまり、この裏には、話題に上った謎の凄腕魔術師がいる事を示している。彼女は覚悟を決め、腰に下げた2丁のメイスを両手に持った。


「『捕食毒華』は奇襲戦法ばっかり使うから、こういう正面切っての戦いは苦手なんだけど、仕方ない。『カナハの処刑人』が、地上でも『処刑人』って事を教えてあげようか」


 周囲に人はいないが、あえて、気合を入れる為、名乗りを上げた。


「ラノダコール王国空軍第1航空師団、第1特殊攻撃団。オーバーキラー隊1番騎。アコナイト・ソードフィッシュが第一の郎党、ドロセラ・ファイアブランド、参る! 」


マリー「アホの作者、ここぞとばかりに推しの恐竜を優遇して……」

フロッガー「熱いオヴィラプトル推しだね! 自分の好きな物を活躍させたくなるのは物書きの性だからね! 」

マリー「……マザーラプトルの名は、卵を守ったまま死んだオヴィラプトル(厳密には近縁種のシティパティ)の有名な標本にちなんで命名したそうですわね」

フロッガー「本作は、なろうで一番オヴィラプトル(の子孫)が活躍する小説を自称していく所存だよ! 今後も活躍する予定だから、アホの作者と同様オヴィラプトル推しの読者兄貴達は気長に待っててね! 」

マリー「ティラノサウルスよりオヴィラプトル推しの読者の方はブックマーク・評価お願いしますわ」


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