表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/86

17話 ケルベロス(アホの子)1


「それはね、アタシがアコ太郎の後ろでふわーっと漂っていたからなのだ!だから、話は大体聞いているのだ! それより、アコ太郎、その蜂蜜ケーキ、アタシのでしょ? ちょーだい! ちょーだい!」


 今一つ分かり辛い彼女の説明をフォローしたのは、アコナイトだった。


「召喚魔法の詳細については、私から補足しましょう。フロッガー、少し静かにしていなさい。蜂蜜ケーキは、後であげますから」


 アコナイトは、フロッガーの首根っこを掴むと、そのまま自分の後ろに下げた。フロッガーは手持無沙汰になったのか、アコナイトの腰に手を回す。その光景は、年の離れた姉妹の様である。

 

なお、その行為に対し、後方に控える実の乳母姉妹の顔が、凄まじい事になっていた事は言うまでも無い。ここまでのアコナイトへの接近を許せるのは、自分の姉妹だけなのだろう。


「まず召喚魔法なんですが、この魔法、系統的には暗黒魔法で、死人の魂を奴隷化し、使役する闇属性魔法の1種です」


「暗黒魔法……。倫理的に使用が忌避される一連の魔法系統の事でしたわね。死者の魂を使役……そんな事が出来ますのね」


「かなり高度な魔法であるのは事実です。奴隷化させる『契約』のやり方もえぐく(・・・)て、倫理的に大変問題がある魔法です。伊達に、暗黒魔法へ系統化されていません」


「何故、そんな魔法をアコナイトさんが習得しているのか、少々気になりますが……」


「何故と言われても……。やり方は、生まれつき知っていたんですよね。車内で、ドロセラが話していたと思いますが、前世の紺碧薔薇の魔女殿の知識ですかねぇ。魔女殿の記憶は無いんですが……」


 どうやら、アコナイトも自身の前世の事は把握しているらしい。


「私の前世の事は良いのです。さて、『契約』のやり方ですが、対象に対し、専用の魔法をかけた上で、首を切り落とす事で『契約』が成立し、術者に死者の魂を紐づけする事が出来ます。霊は術者の近くで、言わば『憑いている』状態になり、その後は術によって一時的に肉体を復活させた上で、魂を入れて実体化させ召還される事で、術者の奴隷として、こき使われる事になります」


「え、えげつないですわね……。フロッガーさんが先程全て聞いていた、と言っていたのは、アコナイトさんに憑いている状態だったからという事ですね」


「だから言ったでしょう? 倫理的に大変問題があると。特に、人の霊を使役するネクロマンサーはいかれている奴、と考えた方が良いでしょう」


「覚えておきます。そういう方とは付き合わない様にしますよ。ところで……そんな幼女を使役しているアコナイトさんは……? 」


 恐ろしい事を想像したのか、マリーはやや恐怖を含んだ目で、アコナイトを見る。これに対し、アコナイトはすぐに弁解した。


「勘違いしないでください。ケルベロス族ってモンスターの中でも、魔力制御が得意な種族なんです。犬が魔法を操れるように進化した種族で、知能が高く、人間に変化するのも得意です。彼女が人間態で活動するのが好きなだけです。本来の姿は、体長3m近い3つ首の犬ですよ」


「だって、この姿の方がエネルギー消費少なくて楽なんだもーん。それに、この姿なら、使用エネルギーが低い分、実は正規の召喚の手順を踏まずに顕現出来る裏技もあるし。あっ、見たいなら、元のかっちょいい姿に戻るよ!」


「フロッガー、静かにしてくださいって言いましたよね?」

 

 アコナイトは、彼女の喉を優しく撫でつつ、口調は厳し目に言った。フロッガーは、くぅーん、と喉を鳴らすと、しぶしぶ口を閉じた。

 

マリーはというと、喉を撫でられているフロッガーを、羨望と嫉妬で震えながら見詰める姉妹2人の冷たい視線に戦慄しつつ、あえて、それについて言及する事は無かった。


「ちなみに、紐づけされた魂は、自ら成仏する事も、転生する事も出来ません。術者が死ぬまで離れる事が出来ないのです。なので隙を見て、術者を殺そうとしてくる契約者や契約獣も多く、そういった意味でも、極めて危険な技と言わざるをえません」


「その割に、その子、妙にアコナイトさんに懐いていますわね。後ろの2人の視線が怖いですわ」


 ピンギキュラとドロセラの瞳に、一切の光が宿っていないのを認めたアコナイトは、自分の腰にオナモミの実の様にへばりついている幼女を、半ば無理矢理引き剥し、一言「お座り」と命じた。命じられた方の幼女は、しぶしぶ地面へ体育座りで座る。


「フロッガーについては、色々と事情がありましてね。半分、事故の様な形で、私と契約してしまったというか……」


「それについては、アタシが説明しよう!」


 フロッガーの『お座り』は、30秒と持たなかった。フロッガーは両手を高々と掲げて、聞いてほしいとぴょんぴょんと、その場で跳ねる。そのまま、アコナイトの許可を得る事もせず、1人でぺらぺらと喋り始めた。

挿絵(By みてみん)



アコナイト「私の眷属がケルベロスなのは、ギリシャ神話由来です」

フロッガー「かのヘラクレスが、ケルベロスを地上に連れ出した時、太陽に驚いて出た唾液からトリカブトが生えた神話が由来だね」

アコナイト「他にも蜂蜜ケーキが好物なのも神話由来ですね」

フロッガー「ギリシャ神話公式で好物だよ! 一応、作者も無い頭絞って色々調べてるんだなって思った方は、評価・ブクマよろしく!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ