最弱スキル【音楽家】は、本当に最弱ですか?
【東京 サントリーホール】
車から1人の少年が降りてくるとあっという間に女性達に囲まれた。
「響ちゃ〜ん!サインくださ〜い!」
「こっち向いてくださ〜い!」
「…」
助けて欲しいと思いながらファンサービスをしている少年、木楽 響は、アイドルでも俳優でもない、響は最少年の天才演奏者兼指揮者と名高く、彼に演奏(指揮)出来ない楽器や曲はないと言われるほどだった。
今日は、サントリーホールで、木楽 響の生誕記念コンサートがあるため、会場に入れなかったとしても少しでも生で聞こうと会場外にもファンが押し寄せていた。
「響ちゃん…頑張ってね…!」
会場の関係者入口前に居た老婆に応援された響は笑顔になり
「はい!頑張ってきます!桃おばあちゃん!」
響に笑顔で元気よく返事された老婆こと、天秦 桃子は、笑顔で手を振り見送ってくれた。
あの老婆は、昔から響のことを応援してくれる老婆で、両親がいない響にとって本当の親みたいなような者になっていた。
●◯●◯●◯
生誕記念コンサートは、ピアノ、ヴァイオリン、フルートの順で、ソロ演奏から始まり最後は響が指揮者にオーケストラ演奏で終わるスケジュールとなっていた。
案の定、コンサートは順調に進み、このまま最後のオーケストラの演奏が終わり、歓喜の声で生誕記念コンサートは終わると思われていたが、演奏の終わりに響が観客に対して礼をしている時、事件が起きた。
響の上に設置されていた照明がガタンッと音を立てて落ち、そのまま響の頭に直撃したのだ。
外まで聞こえていた歓喜の声は、一転として悲鳴へと変わった。
直ぐに救急車が到着し、意識がない響は、病院へと運ばれ、集中治療室であの手この手と尽くしたが、響は即死に近い状態だったため、助からなかった。
こうして、木楽 響は若くして人生の幕を閉じたのだった。
だが、彼の演奏に惚れた、とある世界の神々が、彼の承諾を無視し、とあるスキルを付与したのちに自分達の世界へ転生させたのだ。
●◯●◯●◯
いったぁーーー!!
頭部に激しい激痛を受けて、俺は目を開けた。
視界に写り込んできたのは、全く知らない森だった。
「へっ?」
変な声を上げつつ、俺は立ち上がり、渡りを見渡した。
森は、薄暗く何かが出てきそうで少しだけ怖い。
「……待て待て待てまずは、状況整理だ…え〜っと、たしか俺は頭部に物凄い痛みを感じた後、その場に倒れ込んで、おそらく気絶した…そして、気づいたらここに居た………いや、意味わからん」
まだ、ズキズキと痛い頭を抱え、下を向くと演奏していた時、着ていたタキシードではなく、ヨーロッパの貴族のような服になっていることに気づいた。
あれ?と思い近くの水溜りを除くと、写った顔は、俺の顔ではなく、どちらさんですか?!と叫びたくなるほどの全く違う顔だった。
「……いっ!」
考え込んでいるといきなり、頭痛がし、頭痛と共に全く知らない記憶が流れ込んできた。
「……おい…おいおいおい!これ、巷で噂の異世界転生ってやつでは?!」
流れ込んできた記憶と俺の服装と顔が倒れる前と違う理由を考えた結果、俺が異世界転生していると、行き着いた。
「と、とりあえず、まずは俺の整理だ…」
まだ、不安なことが多い為、色々と整理することにした。
「俺は、生誕記念コンサートで指揮が終わった後に、観客に対して礼をしていた…そしてら、突然頭部に強い衝撃を受けて、倒れ込んだ…おそらく、硬い何かが俺の頭にぶつかって、俺は、そのままぽっくり逝ってしまったのか……もう少し、色々とやりたかった…」
俺が死んだ理由を考えだした俺は、四つん這いになって、後悔をしていたが内心は、嬉しかった。
やっと、俺のことを金儲けの道具にしか見ていなかった叔父たちから逃げれたのだから。
「…そして、俺が転生したこの子は……名前は、サウンド・S・レオン…とある貴族の子で幼い頃に両親を失い、親戚に引き取られるも順調に育ち、18歳の誕生日にスキル鑑定をしてもらうが、自身のユニークスキルが最弱のユニークスキルと呼ばれる【音楽家】と分かり、当主を狙っていた伯父の子供に嵌められたのち、追い出されこの森を彷徨っていたと……なーんか、俺に似てるな…」
色々と俺に似てるなと思っていたら、どこから走ってくる音が聞こえた。
俺は、人一倍耳が良いから直ぐに分かる。
俺が目覚めた場所に置いてあった指揮棒だと思う、棒を拾い持ち走る音が聞こえたほうに小走りに向かうと反対方向から、眼鏡を掛けて走りにくそうなローブを来ている少女が本を片手に走って来ている。少女の後ろには、明らかヤバそうな巨大な狼が涎を垂らしながら少女を追いかけていた。
「…ちょっ!こっち来るなぁ!!」
少女がこっちに来たため、俺まで巻き込まれ横に並びながら少女と共に全力で走る。
「あ、貴方、魔道士様ですよね!…この状況、何とかしてください!」
ふぬ…どうやら、俺の服装と指揮棒を見て魔道士とやらに、勘違いしているようだな…
「俺、魔道士じゃないんだけど…!?」
「う、嘘でしょ…!」
ショックだったのか、少女は走るのをやめて地面に倒れ込んだ。
「まずっ!」
俺は、慌てて少女をお姫様抱っこし巨大な狼から逃げるため、全力疾走した。
「か、鑑定……あっ…駄目ですねこれ…」
少女がいきなり俺の顔を触れたと思ったら、何故か絶望し始めた。
「俺に何したんだ?!」
色々と聞きたかったため1人ずつしか入れなさそうな入口の洞穴に入った。
入口が小さいだけで中は、広々としていた。
あの狼は、デカすぎたためか、穴で詰まっている。
「ハァ…ハァハァ……で、俺の何が駄目なんだ?」
先程から聞きたかった、何が駄目か聞いてみると、少女は、下を見ながら
「……貴方のスキルですよ…」
「俺のスキル?」
「はい、私のユニークスキルは【鑑定士】…解析系のスキルで、私はいつも、人に【鑑定士】を相手の許可無く使ってしまう癖があるんですよ……それで、貴方を鑑定して、貴方のユニークスキルが最弱のユニークスキル【音楽家】だと、分かったんですよ…」
最弱のユニークスキル…そう言えば、そんなことを言ってる記憶があったな…ついでに、【音楽家】について聞いて見るか。理由は簡単、説明してくれている記憶がなかったからだ。
「…そう言えば、【音楽家ミュージシャン】ってどんなスキルだったけ?」
「はぁ?…自分のユニークスキルなのに、知らなかったのですか?……まぁ、勝手に見た私も悪いので教えますよ…【音楽家】は、指揮棒と呼ばれる棒を演奏したい曲の曲名をしっかりと思い浮かべ、その曲にあったテンポで指揮棒を正しく振ることにより、演奏中のみ曲名に合った、何かが起きるみたいですね」
呆れ顔で少女は、俺に教えてくれるもよく分からなかった。
「……どういうこと?」
俺が少女に聞いてみると少女は
「例えばですね……花よ咲けと言う曲名の曲があるとします…その曲を貴方がその曲を指揮棒で指揮すると、地面から花が咲くって感じですね…」
なるほど、あまり分からん!
「でも…音楽なんてなんの意味もないですよね」
「あ"?」
「えっ?」
「おい、お前今なんて言いやがった?音楽が意味ない???巫山戯るじゃねぇぞ!!」
音楽を馬鹿にされ俺は、つい切れてしまった。
「いいか、その腐りきった耳をかっぽじってよく聞いとけよ…!ミュージックスタート!」
指揮棒を構え、合図を言うと俺の周りに様々な音符と小節線が漂い始めた。
「ふー……っ!」
一度、息を整えた俺は、勢いよく指揮棒を振り始めた。
【威風堂々】
俺が指揮棒で威風堂々の指揮を始めると、それに合わせてどこからともなく、演奏が聞こえ始めてきた。
怒りのあまり、威風堂々を演奏し始めてしまったが、俺自身は満更でもない、異世界でもこうして、好きな音楽を奏でることがとても幸せだからだ。
あっという間に、演奏は終わってしまい、最後に指揮棒をゆっくりと下ろす。
ふと、少女の方を見ると目を見開いてこちらを見ていた。
「す、すごい……」
「どうだ?これが音楽の力という物だ…」
少女は、感動のあまりか、拍手を初めた。
「こんな、音楽初めて聞きました!」
「……あれ?狼居なくね?」
「ほ、本当ですね…」
ふと、外の方を見るとずっと居たはずの狼が居なくなっていた。
…もしかして、威風堂々を奏でたことで、ビビって逃げたのか?…その可能性はあるな……待てよ、もしかして、この【音楽家】って俺に相性抜群なのでは?!
「この世界は…音楽の素晴らしさを分かっていないのか…?」
そう、少女に尋ねると少女は残念そうに
「はい…音楽より魔族との戦争が優先せれているため、興味がある人なんて世界に片手で数える程度しか居ないと思います…実際、貴方の演奏を聞く前まで私も興味なかったですし…」
「なるほどな…」
……よし!俺が一肌脱ごうじゃないか!
ある事を決めた俺は、少女と面を向かってとあることを頼むことした。
「俺は、音楽の良さをこの世界に広める…だけど、俺だけだと分からいことが多い…だから、君の力を貸してくれないか!」
頭の下げて、少女に頼んでみると少女は、笑顔で
「こちらが頼みたいぐらいですよ…貴方の素晴らしい音楽を聞けるのなら大バンザイですよ!」
了承してくれた嬉しさでつい、ガッツポーズを取ってしまった。
「じゃあ、旅に出るか!」
「はい!」
狼が近くに居ないことを確認し洞穴から出た俺達は、森を抜けるために歩き出した。
「そう言えば、名前を聞いてませんでしたね…私は、メーティス・A・アリスと言います」
元気よく自己紹介をしてくれたアリスは、何故かウキウキしながら俺の自己紹介を待っていた。
バカ正直に、名前を言ったら不味い気がするからな……前世の名前を使うか
「ヒビキって呼んでくれ」
「ヒビキさんですか…分かりました!」
自己紹介を終わらせ、俺らは歩き続けた。
しばらくすると、俺達は森を抜け出し綺麗な大草原に行き着いた。
草原は、綺麗な緑で埋め尽くされており見惚れるほど、綺麗だった。
「綺麗だな…」
いつも、引き籠もって音楽の勉強をしていた前世ではこういった美しい自然を見ることは、中々なかったためつい、綺麗だと呟いた。
「取り敢えず…あっちに行ってみましょうか」
「だな…」
アリスが指さした方向へ歩きだして、見ると、先程のきれいな草原とは、一変して荒廃した大地が広がっていた。
だが、よく見ると荒野を少し歩いた先に、村のようなもがあるのを見つけた。
「…向かうか」
「そうですね、何故ここだけが荒廃しているのが気になりますし…」
こうして俺達は荒野を歩き、村へ向かった。
●◯●◯●◯
「……荒れてるな…」
村に着くも、人の気配はまったくと言っていいほどなく、村の建物はあちらこちら壊されていた。
村のあちらこちらで所々に火事のような跡がある。
「魔族にでも、襲われたのでしょうか…」
「分からん…取り敢えず、見廻ろうか」
村を探索していると、後ろから気配を感じ、とっさに指揮棒でガードしてしまった。
しかし、指揮棒は折れず、金属同士がぶつかった時に出る音を出す。
どんだけ丈夫なんだよこの指揮棒…
そんなことを思いつつ、襲ってきた相手の顔を見ると、右目に大きな傷を負ってボロボロ状態で剣を持っている赤髪の女性だった。
「…貴様ら!何者だ!」
一度後ろへジャンプして下がった女性は、完全に俺達のことを警戒していた。
「ただの旅人だって、ここの村の様子がおかしかったから、見に来たんだよ」
「…」
旅人っと名乗るが女性の目つきは、まったくもって信じていない目だった。
これは何とかして信用してもらわないと…
「お姉ちゃん…」
女性の後ろからそんな声が聞こえたと、思ったらボロボロの子供達と老人達が現れた。
「で、出ては駄目だ!」
「で、でも……」
なるほど、薄々思っていたが、この村壊滅状態に近いのか…なら、それこそ音楽で…!
俺は、指揮棒を持ち直し
「ミュージック…スタート…!」
合図を言うと、前回と同様、俺の周りに様々な音符と小節線が漂い始めた。
【四季「春」】
演奏が始まると警戒していた女性や子供達、老人達が拍子抜けた顔で見ている。
演奏が進むに連れ、俺を中心に草が生えだしては、どんどん広がっていった。
第1楽章が終わる頃には、殆どの村の地面が草に包まれていた。
「……一旦、ここまで…」
演奏を第1楽章で終わらし、ふと女性を見ると、顔の傷が綺麗に治っていた。
なるほど、四季「春」は植物を生やすだけじゃなくて、人の傷を治す速さを上げることが出来るのか。
「……お前たちが、怪しい者ではないことは分かった…が、どうやって私の傷を癒やし、この村に植物を生やすことが出来たのだ?」
傷があった部分を触りつつ、質問してきた。
「それは、おr「ヒビキさんのユニークスキルが【音楽家】だからです!」
質問に答えようとしたら、アリスに先に言われた。
そして、アリスの言葉を聞いた女性や村の人らは信じられないような顔をしていた。
まっ、最弱のユニークスキルって呼ばれている【音楽家】が、こんなスゴイことをしていたら、こうなるわな…
「本当に【音楽家】を使って、植物をはやしたり、私の傷とかを治したのか?」
「本当だ…これが【音楽家】の本当の力だ」
まだ信じ難いのか、女性は険しい表情をしたままだった。
しかし、何を思ってか剣を地面に置き、
「……貴様の…いや、貴方のユニークスキルを見込んで頼みがある!…この村を助けてくれないだろうか!」
土下座をして頼み込んできた。
「え、えっと…この村に何があったか知りたいんだけど…」
「そうだな!まずは、何があったか知らないといけないな!」
何故か、俺が助ける前提で話が進んでいることにはツッコミを入れず、話を聞くことにした。
「数日前だ、魔王軍の小鬼達がこの村を襲撃したのだ、対抗しようとしたが…村の男達は戦争で国に連れて行かれていた上に、飢饉が重なり…これ程の被害が出たのだ…私1人だとなんにも出来なくてな……おそらく、今夜にでも再び来るだろう…」
悔しそうな顔で下を見ている様子を見て、俺は、
「……分かった、小鬼退治に協力するよ」
「えっ!?」
「本当か?!…よろしく頼む!」
俺が引き受けたことに驚いているアリスと喜んでいる女性や村人達を見ていた。
正直に言って、この小鬼退治は好都合…俺のスキルを色々と試せるからな。
「それで、名前はなんて言うんだ?」
「あ、嗚呼!自己紹介がまだだったな、私は、ブレイド・B・リアだ」
立ち上がって自己紹介をしてくれたリアに、俺は、
「俺は、ヒビキ…んでこっちが、アリスだ」
「はい、【鑑定士】がユニークスキルのメーティス・A・アリスです!」
「二人共…よろしく頼む…!」
リアの期待に答えるためにも、小鬼を迎え撃つ準備を初めた。
●◯●◯●◯
小鬼が来るだろう、晩となった。
村人達は塔の中に避難させ、リアがその入り口を守るように立っている。
そして、俺とアリスが塔の一番上から監視しているという状況だ。
さてさて、本当に来るのか…?
「っ!来ました!」
俺の隣で【鑑定士】を応用して、敵の反応を見ていたアリスが告げてくれた。
「よし、アリスはリアに伝えてくれ…小鬼達は俺が倒す」
「分かりました!」
アリスは俺の指示通りに、リアに報告するために階段を使って、下へと降りていく、それを見届けた俺は指揮棒を構えた。
「さて、ミュージックスタート!」
【子犬のワルツ】
俺が演奏を始めた曲は、子犬のワルツ。
子犬のワルツはその名の通り、大量の子犬を呼び出すことが出来るみたいだ。
俺が呼び出した子犬たちは、次々に襲い掛かって行った。
子犬たちは小鬼を撹乱しながら、嚙みついたり、爪で引っ掻えたりし続けた。
演奏時間は二分、これでどれだけの小鬼を倒せかは、分からないが…できるだけ、切り札は一応あるが、このまま行けば何とかなりそうだな…
考えながらも、俺は演奏を続けた。
子犬たちのおかげで、小鬼の数は着々と減っていく、これなら演奏が終わるころには、大半は削れそうだな。
俺は余裕な表情を浮かべだが、そう上手くいかないのが、現実だ。
「ハァ、ハァハァ…ひ、ヒビキさん!」
息切れをしながら、階段を走って登ってきただろうアリスが、不味そうな顔をして俺を呼んだ。
「どうしたんだ?」
「じ、実は──
アリスが何かを言おうとしたその時、下の方から大きな音が聞こえた。
「不味い…!ヒビキさん!下に来てください!」
「お、おう…」
丁度、演奏を終えた俺はアリスが言う通りに下に向かうと、金属同士がぶつかる音が聞こえて来た。
嫌な予感がし、急いで下に向かうと、リアが1人で大きな小鬼と戦っていた。
「アリス、皆を上に避難させてくれ、俺はリアに助太刀する!」
「分かりました、皆さんこっちに!」
アリスが指示を出して、村人たちを避難させて行く。
さて、俺は加勢するか。
俺はリアを大剣で斬ろうとしていた小鬼の攻撃を、指揮棒で防いだ。
マジで何なんだよこの指揮棒…硬すぎるだろ
「ヒビキ…」
呆気を取られた顔をしているリア。
「助けに来たぜ…で、こいつは何なんだ…」
俺は直ぐ、リアを抱えて大きな小鬼から離れた。
なんか身体能力が高いな…前世の俺なら、跳び箱を三段超えるだけで、ばててたのに…
「あれは、小鬼王…小鬼をまとめる王だ」
王ね…うん?待てよ、もし王が居なくなったら小鬼達は大混乱するんじゃないか?…それなら王を倒して方が手っ取り早いな。
俺はリアを抱えたまま、考えた。
「リア…」
俺はその場で考えた作戦をリアに伝えた。
「……分かった、私はいつでもいいぞ」
そう言い、リアは剣を構えなおす。
「行くぞ、ミュージックスタート!」
【ザ・グレート】
俺は音符を小節線を展開しては、演奏を始めた。
俺の予想が正したかったら…
俺が展開した音符と小節線は、光を放ちながらリアの中へと入っていく。
音符と小節線が身体に入っていく中、リアの髪色が赤く綺麗に光始め、目の色も同じように赤く綺麗に光り始めた。
「これは、力が漲る…!」
リアは目を見開き、小鬼王に斬りかかった。
先ほどの戦いで、小鬼王は、リアは弱いと判断していたのか、悪い笑みを浮かびながら、防御しようとしたが、リアは軽々と小鬼王の左腕を切り落とした。
「グガアァアァァァアァ!!」
叫びながら小鬼王は、怯み始めた。
「ガァァアァアァァア!」
リアが自分を斬ったのにキレたのか、大剣を無造作に振り回した。
だが、グレート化…覚醒しているリアにとって、小鬼王の攻撃は余裕に回避できるモノだった。
「終わりだ…」
背筋が凍るような声でリアは言い、リアは一瞬で小鬼王の首を斬り飛ばした。
大きな音を立てて、小鬼王の首が落ちる。
それを見た小鬼達は動揺を始める。
「リア!一気に畳みかけるぞ!」
「嗚呼!」
俺は、リアを覚醒状態にキープし、覚醒しているリアは動揺している小鬼を斬り始めた。
司令塔ともいえる小鬼王を失った小鬼は、面白いほど倒しやすかった。
そして、あっと言う間に小鬼達の討伐を終えた。
何匹かは逃がしたが、まぁ問題ないだろう。
ふと、気が付くと、太陽が昇って来ていた。
「疲れたぁ~」
気が抜けた俺は、その場に座り込む。
「わ、私もだ…い、今までに感じた事のない疲れが…来ている」
リアの場合、その場に倒れこんだ。
恐らく覚醒の反動だろうな…
そんなことを思っていたら、
「ヒビキさん!、それにリアさん!大丈夫ですか!?」
そう言いながら、アリスが駆け寄ってきた。
「お姉ちゃん!」
アリスの後ろからは、子供達も出てきて、リアの下へ向かった。
「俺は大丈夫なんだが、リアの疲労がやばそうだから、ベットへ運んであげてくれ」
「うん!」
子供たちは、リアをベットへと運んで行った。
「アリス、二時間後には村を出るぞ」
「えっ?身体の方は大丈夫なんですか?」
「嗚呼、それにお礼とかされても…俺、そういうの不得意だから…」
「…分かりました、食糧だけ分けてもらって、出ますか」
「嗚呼…」
こうして、俺らは村を出る準備を進めた。
●◯●◯●◯
「本当に、それでよろしいのですか?」
村を出る前、村長が不安そうな顔で言ってきた。
「ええ、当然のことをしただけなので…では!」
「それでは、またどこかで会いましょう」
俺達は村人達に挨拶をし、旅を続けるために歩み出した。
村からだいぶ離れた頃、後ろの方から気配を感じた。
「おーい!ヒビキ!リア!」
そう、俺達についてきたのは紛れもない、リアだった。
「リアさん!?ど、どうして…」
戸惑うアリスに、リアは胸を張って
「私も旅についていくことにしたんだ、私が居たら百人力だぞ?実際、お前達には近距離攻撃ができる者が居ないからな!」
正論を言われ、俺らは黙り込んだ。
「…でも、村の人達はどうするんだ?」
「嗚呼、それなら…怪我をした男達をヒビキが治療したおげで、また戦えるようになったから、村のことは俺達に任せて、ヒビキさん達と共に旅に出て行って来いって言われてな」
「……ヒビキさん!折角なら仲間に入れましょうよ!」
アリスが俺に迫ってくる。
「………ハァー…分かった、一緒に旅をしよう、リア」
「嗚呼!勿論だ!」
そんな会話をしながら、三人に増えた俺達は歩み続けた。
さてさて、これから世界に音楽の良さを広めるぞー!!