俺、追放されたの?
春のポカポカした日差しの中を馬車が進んで行く。
暖かいのとガダゴトと揺れるので眠くなってしまう。朝早くから店の仕込みをしてたからなぁ。眠気を飛ばす為に身体を伸ばしていると、ニーヤちゃんが話しかけてくる。
「ねえソラ君、追放されたんだって?お父さんが酒場に納品しに行ったらそんな話を聞いたって。ツラかったよね。」
追放とか何でそんな話になってるんだ?別にツラくないし。
「追放?そんな事ないよ。自分から辞めたんだよ。」
そう、自分で決めたんだ。
「そうなの?ソラ君って明日が誕生日でしょ。成人したら給料とか権利とか他の人と同じになるじゃない。今までみたく安くこき使えなくなるから追放したって店長が言ってたみたいだよ。」
「店長が?嘘でしょ、あの人がそんな事言う訳ないよ。退職金も出してくれたし、良くしてくれたんだから。」
「そう、ソラ君がそう言うならそれで良いけど。」
え?俺って追放されたの?そんな事よりも馬車の事を聞かないと。
「それよりもこの馬車どうしたの?」
「私も成人したから仕事探しててね。家の手伝いだけじゃなくて何かやってみたくて。たまたま馬車の仕事があったから、昔バイトした事もあったし。ソラ君が馬車なくて困ってるだろうなとかそんなんじゃないんだからね。」
ニーヤちゃんが早口で話す時はそんなんじゃ【ある】時なんだよね。また助けてもらったな。
「ニーヤちゃん、ありがとう。」
「ばかっ、そんなんじゃないんだって。帰りはお客さん一杯乗せて帰るから稼げるんだよ。」
「でも、ありがとう。いつも助けてくれて。」
「好きな人が困ってたら助けてあげたくなるのよ。」
何か小声で言ってるみたいだけど。
「え?馬車がうるさくて聞こえなかった。もう一回言ってくれる?」
「ばーか!」