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馬車が出てない


 馬車乗り場に着くと北行きの乗り場に向かう。Sランクダンジョンはこの町の北にある。


「あれ?馬車が一台もないな。」


 いつもならこの時間ごちゃごちゃとうるさいくらいの人で溢れているはず。それが人も馬車もいないんだ。


 代わりに南に向かう馬車乗り場は人でごった返している。


「南になんて何もなかったよな?聞いてみるか?」


 一番近い馬車で馬の手入れをしている若い男性に声をかけてみた。


「すいません、南で何かあったんですか?」


「ああ、新しくダンジョンが出来る予兆があったみたいなんだよ。だから商人とか冒険者とか集まってるんだよ。」


 なるほど一番乗りは儲かるチャンスだからか。


「北には馬車出ないのですか?」


「もう出ないんじゃないか?今から行っても祭りに間に合うかどうか微妙だしな。行くなら歩きか、自分で馬でも借りて行くしかないな。」


「そうですか、ありがとうございます。」


 お祭がやっているのか。間に合えば少しは稼ぐ事が出来たのにな。まあ、地道にやっていくしかないか。


「はぁ、どこからか馬車でも来ないかなぁ。」


 北行きの待合所のベンチに腰掛け、はぁと呟くと、


「おーい、ソラくーん!」


 そんな声が聞こえてきた。


 ガダゴトと音をたてて近いてくる馬車、声の主は御者台に座っている女の子だ。


「え?ニーヤちゃん?どうしたの?」


 この子はニーヤちゃん。酒場に肉を卸しているお肉屋さんの一人娘で、この町で唯一の俺の友達だ。


 肩まで伸ばした茶色い髪を片方だけ耳に掛けてヘアピンで止めている。このヘアピンは先月の誕生日に俺がプレゼントしたんだ。十五歳で成人になったお祝い。


 白いシャツに茶色のズボン、日に焼けた健康的な肌。活発なニーヤちゃんに良く似合っている。


「ソラ君!乗ってく?」


「は?」


「だから、Sランクダンジョンの拠点まで乗ってく?っていうか乗ってけ!ほら!」


 強引だなぁ、でも助かったよ。いつも困った時には助けてくれるんだよな。


「うん。ありがとう。でも何で馬車?」


「話しは後でするから、乗って乗って。出発するよ。」


「じゃあ、隣失礼します。」


「ちょっ、ちょっと隣に乗るの?馬車に乗ればいいでしょ!」


「それじゃ話し出来ないよね。」


「……それはそうだけど汗臭いかもしれないし、御者台は狭いよ。」


「ん?良い匂いするよ。クンクン。それに狭かったらくっ付けばいいでしょ。」


「もう、恥ずかしいってば!匂い嗅ぐな!いいから行くよ!」 


 


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