表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

幸せからの転落

いきなりの展開です


新連載です

 僕は谷山力斗、高校一年生。勉強はかなり得意なので県内有数の進学校に入ったが、それ以外の容姿とかスポーツは至って普通の高校生だ。まぁ、家庭は恵まれている方で、家族は仲良い上に、親父が県議会議員をしているから比較的裕福だ。


「おはよう力斗」

「おはよう奈美」


 こいつは黒木奈美。中学から同じ学校の同級生で、僕の彼女だ。もう付き合ってもうすぐ1年になる。互いの父親同士が知り合いで、その縁で仲良くなった。


「やだなー。もう中間試験ね~」

「なに言ってんだ~。この前まで体育祭、文化祭と学校のお祭りが目白押しだったじゃないかー。お陰でクタクタだよ。学生の本分は勉強なんだから、勉強しないと」

「もー、力斗は真面目ーー」

「普通だって、普通ー!」


 この中間試験こそ頑張って学年1番だ! と僕は益々意気込んだ。そして試験を受けてから2週間が経つと、成績順位100位以内の学生の名が廊下に張り出される。

 どれどれ……僕は僕は……と、


「くわー、また谷山2位かー。すげーなー!!」

「おー、谷山すげーっ」

「……」


 くそっ、また2位かっ。そしてまたしても1位は……、


「流石義家(よしいえ)さん。別格だなー」

「なんたって、県警本部のお偉いさんって話だ。谷山とは格が違うわな」

「……」

「おい見ろよ、義家さんだ。綺麗だなー」


 廊下を歩いている彼女、義家(よしいえ)正美(まさみ)。成績優秀、スポーツ万能で、黒髪は背中まであるロングヘアーで少しつり目の美少女だ。もう歩く姿は百合の花状態だ。しかもその容姿と勉強と父親譲りの正義感からか、この学校の生徒会副会長までしている。もはや出来過ぎて、何を目指しているのかよく分からない状態だ。


「力斗ドンマ~イ」


 奈美がニヤニヤしながら、からかいにやってくる。


「くそー、次こそは負けねー」


 そう僕は息巻いた。とは言う物のそれとは別に僕には大切な用事がある。そう奈美とも1年記念プレゼントだ。何を買えば良いか悩んでいる。妹の可憐に訊いても、


「ちゃんと奈美さんのこと想ったら、欲しいものくらいパッと分かるのはずよ!」


 と言われ、何を買えば良いか教えてくれなかった。ショッピングモールを色々回ったが、今日も何を買えば良いか分からず、そのまま帰宅した。


「おー、お帰り~」

「お、なんか久しぶりに父さんを見た」

「まあな、帰れる時に家に帰らないと。家族を大切に出来ないものが、県民を幸せに出来ないと思っているからな」

「出たよ、親父の力説が」


 清廉潔白な政治を旨とし、県をこよなく愛する公職者の鑑のような県議会議員だ。時に厳しく、時に優しく家族を常に気にかけている、なんだかんだ僕が尊敬する父親である。


「どうだ? 黒木の娘とは上手くいってるのか?」

「ま、……まあまあかな?」

「もうそろそろ1年じゃないのか? プレゼント買ったのか?」

「まだ悩み中……」

「えー、まだ買ってないのー。早く買ってあげなよー」

「可憐の言う通りだ。彼女一人幸せに出来ないものが、勉強が出来てたとしても、立派な人間にはなれないぞ」

「だー、うるさいなー。分かったよ、明日までには買うよ!」

「よしよしっ」

「はい皆~、ご飯出来たわよ~」

「はーい」


 そうして久しぶりに家族4人揃って、団欒してご飯を食べるのであった。翌日になり僕が起きた時には、親父はもう家にいなかった。母に訊くと、今日も遅くなるらしい。県議とはとても忙しい職業のようだ。朝は可憐と一緒に登校するのだが、彼女はまだ中学2年なので、僕は中学校の近くまで送る。本人は嫌がっているのだが、まあまだ小さいから兄としてはやはり気になってしまう。

 そして可憐と別れた後に、奈美と会う……のだが、今日は元気がない。


「どうかしたか奈美? 風邪か?」

「え? ううん。違うわ……」

「じゃあ、どうした?」

「ううん。何でもないわ……」


 恋人一人幸せにするのも難しいなーと僕は親父の顔を思い出しながら、思い悩むのであった。


「谷山~、今日のグラビア見たか?」

「いや、見てない」

「今週号のグラビアで優衣ちゃんが水着だぞ!」

「おー、マジで!?」

「見てみろ、見てみろ!? このくびれの美しさを」

「おほーっ、く、食い込みがエ、エロ……」

「ちょっと男子ー? そんなの教室で見てたら、先生に言いつけてやるわよー」

「うるさいな~。少しぐらい良いじゃねーか、なー、谷山~?」

「そうだぞ~。これぐらいで学校の校則は破れないぞー?」

「むー……。奈美~、なんとか言ってよー」

「まぁ、これぐらい男子なんだから良いんじゃない?」

「もう、彼氏の肩持つんだからー」

「流石は奈美だ。分かってる~♪」

「……」


 そして放課後になって部活終わり、僕は急いでショッピングモールへ行き、僕とお揃いのキーホルダーを買った。


「まぁ、嫌……とは思わないだろう……」


 僕は呑気に鼻歌を歌いながら、家に帰って玄関のドアを開けた。その後に我が家の平穏な日常が崩壊することを露ほども知らずに……。


「たっだいまー」

「力斗!」


 母がよたよたしながら、涙目で廊下に慌ててくる。


「どうかした?」

「大変、お父さんが……」

「え? 父さんがどうかしたのか!?」

「お兄ちゃん……」


 可憐も辛そうな顔してこっちにくる。


「テ、テレビ……」


 僕は急いでテレビを見に行った。そうしたらその画面には、デカデカと文字が書かれていて、ある一人の男性が警察に連れられていく衝撃映像が流れていた。


『谷山県議、公金横領の容疑で逮捕』

最後まで読んで頂きありがとうございます。

ブックマーク、評価を頂ければ励みになります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ