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女生徒

作者: 浅野浩二

 朝。ふー。まだねむっちいぜー。ねぼけまなこで着替え、歯をみがき、カガミをみて、イーだ。と言って、あくびをしながらねぼけまなこで朝食をたべる。金魚にエサをやり、ひひひと笑う。あっかんべーして、ネコに、おう、いってくるぜいっ、と言って学校にでかける。学校で友達に

「ユカ。あんたヤンジャンのグラビアにのったじゃん。」といわれると、

「うん。どうだっち。」

「あんた男に利用されてるよ。」と言われると

「フーン。そんなもんかな。」と何処吹く風。授業がはじまると、

「フアー数学なんてつまんないよ。」

と言って、さっそくねむくなる。

「朝っぱらから寝るな。」

と二時間目に英語の先生におこされる。彼女もがんばって授業をきこうと努力はするが。努力する点はえらい。彼女は小学校の習字の時、努力とかいて、二重まるをもらって、それを今でも大切にもっている。昼食はちゃんと残さず食べる。ただピーマンだけはのこす。

「ユカ。おいしい?」

ときくと、彼女は

「何でそんなこときくんだっち。」という。

「ユカ。あんた好きな授業あるのー?」ときかれると

「ないよ。」

と当然のごとく答える。

「ユカ。あんた、何がすきなのー。」ときかれると「別にー。」と答える。

 「ユカ。あんた子供とおもわれてるよ。」

 「べつにかまわんよ。」

 「ユカ。あんた、ムッとした表情がセールスポイントと思われてるよ。」

 「なら、ムッとするよ。」

 「ユカあんた、邪悪な女、悪の美、デカダンスの魅力、いたずらっ気の魅力があると思われてるよ。」

 「そんなもんかいな。」

 「ユカあんた、ちょっとボーイシュな魅力もあると思われてるよ。」

 「フーン。そうかねー。」

 「ユカあんた、正当派ではなく邪道派の魅力、一番ではなく二番の魅力があると思われてるよ。」

 「そんなもんかなー。」

 「ユカあんたツンとした鼻と母性愛がぜんぜん感じられないあがり目と子供っぽい口もとが男にうけてるよ。」

 「フーン。そうかにー。」

 「ユカあんた、ユカ言葉をつくられて偏見でみられてて、社会があんたに期待する性格をおしつけられてるよ。」

 「別にかまわんよ。」

 「ユカあんた、強烈な個性ではなく、普遍性、つまり現代の女の精神の属性を有しつつ、その精神そのものが時代につくられていない反骨性、つまり、時代につくられたはずの精神が時代に反発している面がある個性、つまり誰にとっても時代は産みの親であると同時に、無意識的に戦っている敵でもあるけれど、あんたの場合、あんたの視点が、時代につくられると同時に時代をひややかにみている感性がうけてるんだと思うよ。」

「何をいってるんだかよくわからないよ。」 

「つまりね。別のコトバでいうなら泥っぽい悪い意味での愛のなさ、よくいえばクール。物事に対する無関心性、子供のような冷酷性、いつの時代でも人間があこがれ、求めるところの精神の自由、があんたにはあるんだよ。」

 「私は普通の人間じゃないの?」

「だからね。換言するとね。他の人間は仏教でいうところの一切皆苦の荒波の中であがいているのに、あんたの精神は仏教でいうところのニルバーナにあるんだよ。」

「…・。よけいわからんよっ。」

 「ユカ、あんたいい性格なのに、ちょっとワルっぽくみえるアンビバレンシー、つまり天使の心をもった小悪魔、あるいはその逆で、小悪魔の心をもった天使の外見、つまり、心身不一如のギャップ、矛盾、が男の心に緊張をつくり出し、それがうけているんだと思うよ。」

 「・・・・。」

 「ユカ、あんた性に対する自覚のなさ、肉体の発達に精神の発達がおいついていないアンバランスの魅力、感性が未成熟にみえる故の不可侵性、気まぐれな子供が核兵器をもってるようなあぶなっかしさのスリルがうけてるんだと思うよ。」

 「何をいってるんだか全然わからんよっ。わけのわからん分析をせんでくれいっ。」

 彼女はあまり運動も好きじゃない。たまに気が向いた時に、バレーボールのサービスを「エーイ。」として、オーバーして「キシシ。」と笑う。

 彼女は掃除当番の時、そうじはちゃんとやる。学校がおわって帰り道で、ブティックに友達と寄る。

 「ユカ。これかわいいと思わない。」

と友達にいわれると、その動物の模型をみて、

「キシシ。かもね。」

と笑う。写真の撮影のある時、カメラマンにパシャパシャとられても、ムスッとして、リアクションがない。

 「笑って。」というと、「キシシ。」と「あっかんべー。」をやる。ここまでいくと本当に小学生である。万一、彼女が、この拙文をよんだらおこりはしないか、と心配になってくる。(ユカさんごめんなさい。)

 彼女は写真をとられることは、さほどいやではない。

「写真はきらいじゃないよ。でも、つかれちったよ。」

という。家に帰ると、ネコに、

「おう。かえってきたぜいっ。」

といい、金魚にエサをやり、ひひひ、と笑い、あっかんべーして、ごはんたべてねる。 彼女は、お父さんだけで、お父さんは国内か海外支社に派遣されてる一人っ子という感じ。

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