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VRゲーマーお嬢様はeスポーツ動画配信でご飯が食べたい  作者: 五月晴くく
Playlist02 わたくし、夏休みをエンジョイいたしますの ~ごきげんよう、VRMMO編~
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7本目 あなたの可能性



「みみこさあん。そろそろ終わりにい」


 集中する。矢の動きを想像する。ゆっくりと狙って――


「撃つ!」


「あのお、みみこさあん、まだやることがあ」


 すばやくリロード。今度は予備動作を抑え、早めに狙って――


「撃つ!」


「みみこさあん! 聞こえてますかあ!」


 次は動く的を狙う。的の動きを感覚で追従する。弾着までの時間をリズムとして思い出す。タイミングを合わせつつ、あとは狙って――


「撃つ! チッ、外しましたわね」


「みーい、みーい、こーお、さあーーん!!!」


 やはり偏差撃ちはまだ難しい。次の矢をリロードして――と思ったところで矢がもう無いことに気づく。


 仕方がないのでこれで終わりにしよう。


「ふう、まあそこそこはわかってきましたわね。お待たせいたしましたわベルさん」

「やっと戻ってきてくれましたあ、待ってたんですよお、しくしく」

「あらそうですの? それはたいへん申し訳ございませんでした。銃の練習を始めると周りが見えなくなる(たち)でして」


 わざとらしい泣き真似をするベルさんをなだめる。本当に気づかなかった。


 でも思い返してみれば確かに言っていたかもしれない。対人戦の心構えでやっているときならむしろ音は普段よりよく聞くのだが、一人でエイム練習をしているときの気持ちでやっていたのでまったく耳に入っていなかった。


「まあいいですよお。それだけ真剣だったということですしい? 私は寂しかったですけどお」


 いじいじとし続けるベルさん。わたくしはひたすら謝りつつ宥める事しかできない。


 ……別に、「うわ、なんだこの人ちょっとめんどくせー」なんて思ってないですわよ。ほんとですわよほんと。


「じゃあ次にいきましょうかあ」


 なだめ続けること一分ほど。ようやく気を取り直したベルさんにほっとする。ベルさんはなにやらまた空中に向かって操作を始める。


「さて、みみこさんは絆を結んだ七色龍はいますかあ?」

「絆、ですの?」

「絆ですう。ギルドに入ったらまず七色龍と絆を結ぶところから始まるのですがあ、すでに絆を結んだ七色龍がいる場合はその手順はスキップできますのでえ。もしいたら喚び出してくださいねえ」


 次は七色龍についての話らしい。絆と言われてもピンとは来ないが、黒いもふもふを三匹もらったようなもらってないような記憶がある。あれが絆を結んだ七色龍なのだろうか。


「喚び出すってどうやるんですの?」

「そうですねえ。ぐにょにょうって気合を入れながら来てほしい気持ちを胸の内で表現するんですう。絆を結んでいるならそれで喚び出せますよう」

「やってみますわね」


 ぐにょにょうの意味はよくわからなかったが、ひとまずあの真っ黒もふもふを思い出しながら念じてみる。三もふたちー、出てきなさーい、出てきなさーい。


「おお! みみこさんのお友達はもふもふさんなんですねえ」

「案外簡単に喚び出せるんですのね」


 想像以上にあっけなく喚び出せてしまった。かっこいいエフェクトや音はなく、強いて言うならぽんって感じで現れた三もふたち。


「簡単に喚び出せたということは、それだけみみこさんとこの子たちの絆が強いということですよう。素敵ですねえ」

「そうでしょうか」


 会ったばかりの三もふとわたくしの絆が強いということには疑いしかない。けれどもわたくしがこの三もふと絆を結んだということは事実らしい。なぜなら喚び出せたので。


「ところでこれはなんですの?」


 わたくしは三もふを指差す。三もふとの初対面からずっと気になっていたことだ。本当になんなんだこのもふもふたちは。


「似たような子なら見たことありますけどお、このタイプの子は初めて見たので私にもわかりませんねえ」

「そうですの。わかりませんのね……」

「七色龍はわからないことばかりですう。ですがあ」

「ですが?」


 そこでベルさんはひと呼吸置く。そして、これまでのニコニコ顔を一変させ真剣な顔で言った。


――この子たちは紛れもなく、あなたの可能性です。



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