なんでそうなった?
朝の教室に明るい声が響きわたる。
「おいっす~、朝から元気ねぇなぁ、シャキッとしようぜ!シャキッと!」
そう声をかけてきたのは佐々木大和の友人の一人である中里大輝だ。
大輝は大柄で人懐っこい顔でみんなに好かれている男だ。
「うるせぇなぁ、逆に朝からこんなに元気があるお前がおかしいんだろ?」
そんな大輝とは反対に不機嫌に俺は応える。
「違いない、お前は元気すぎるんだよ!」
そう笑いながら声をかけてきたのはもう一人の大和の友人の北光介だ。
光介は身長が高くスラッとしていて、眼鏡の下には甘いマスクを隠している男だ。
「いいじゃねぇか!今日はとっておきの情報があるんだぜ!これを聞いたらお前らもテンション上がるって!」
「とっておきの情報?どうしたんだよ?まさか、彼女でもできたのか!?」
「ちげぇよ!いや、だがこれからそうなるかも知れねぇな!」
そんな馬鹿みたいなやり取りをしている大輝と光介のやり取りにも興味を示さない大和は、しかし友人との会話を続けるために続きを促す。
「いや、それがよ!今日俺らのクラスに転校生がくるんだってよ!しかも超がつく美人らしいぜ!」
「転校生がくるったって、なんで同じ学年だってわかるんだよ?それに同じ学年でも同じクラスになるとも限らねぇのにそんなに上がるかよ」
「それがたまたま先生と転校生が話してるとこをみた生徒がいて、しかもこのクラスに来るっていってるのを聞いたらしきんだよ!」
「ほんとかよ!それはいいな!」
大輝はこれでもかというほどテンションが上がっているようだ。それにつられ光介も大輝ほどではないがそれなりに興奮しているようだ。
しかし、やはりと言うべきか大和は一切興味を示さず、その話を聞き流すのだ。
「大和はつれねぇなぁ、そんなに女に興味ない男子なんているか普通?おま、まさか!そっちに興味が!?」
「んなわけねぇから。そうじゃなくて...いや、なんでもねぇ」
「お前まさか、まだあいつのこと気にしてんのか?もういいだろ?あれはお前が悪い訳じゃないし、それにあれはあいつが――――」
「おーい、席につけー。ホームルームを始めるぞー」
大和の言葉に光介が反応するが、途中で先生が教室に入りホームルームの開始の言葉に遮られるのだった。
「っち、まあお前は気にすることはねぇからな!」
「あぁ、わかったからもう席につけって、先生にスゲー睨まれてんぞ」
そして光介が席についたところで
「今日はお前らに紹介したいやつがいる。
おい、入ってこい」
先生がそういい終えてすぐに教室のドアが開き、女子生徒が入ってくる。
「どうも、はじめまして。岸野春と言います。今日からこの学校で皆さんと一緒に勉強することになりたした。よろしくお願いします。」
そう一息にいい終えた女性は、大輝が言っていた噂の転校生だった。しかも、その女子生徒は大輝の言うとおり、本当に超がつく美人だったのだ。