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しがない異世界一兵卒の日常  作者: 剣吾郎
一章 しがない訓練兵の日常
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03 友たちと訓練兵の朝

 


 翌朝、訓練兵たちは日が昇ると同時に起床し、手早く身支度を整え始める。

 起きないものは教官の愛の鞭によって物理的に叩き起こされ、その後例外なく全員が早朝の基礎訓練へと向かっていった。


 朝飯前ということもあり、まずは体を慣らすためのストレッチを行う。

 決まったメニューを淡々とこなし、軽くランニングや筋トレなども行った。

 しかし、ここは北部各地から志願して集まった魔法使いの卵たちを育成する魔法兵訓練基地。

 体力トレーニングを早々に終えると、訓練兵たちは魔法の訓練に入った。


「――スゥーッ、ハァー……よし」


 朝の爽快な空気を吸い込み、ルークは集中力を高める。


 訓練兵が主に使う【魔法】は皆、基本はほとんど同じである。

 物体を自在に操る《念動》や、不可視の力場を生み出し盾とする《防壁》の魔法。

 身体能力を一時的に向上させる《強化》の魔法など、戦いに身を置く魔法兵として基礎であり、必須となる魔法をそれぞれのペースで鍛えはじめる。


 この魔法訓練に関しては、体力トレーニングで手を抜いていたようなやや不真面目な者も含めて、全員がとても真剣に取り組んでいる。


 ルークやクラウスもその例に漏れず、高い集中力を持って訓練に取り組んでいた。


 それからしばらくすると、朝食の時間を知らせる鐘が訓練場で鳴り響く。

 その音に、訓練に没頭していた兵士たちも空腹に負けて訓練を切り上げて食堂に向かった。



 ーーーーーーーーーー



 昨夜と違って温かな朝食を持ったルークが適当な席に着くと、同じように朝食を持った友人たちが簡単な挨拶を交わしながら周りの席に座った。


「ようルーク。昨日も災難だったな」


 友人たちが席について朝食を食べ始めると、隣に座った少年からからかい混じりにそう声をかけられる。


 その少年は、クラウスの他で同期の中で最も親しいと言える友人たちの一人であるフランクリンだ。

 癖っ毛のあるやや珍しい赤茶色の髪に、明るい空色の瞳した少年で、友人たちからは親しみを込めてフランクと呼ばれている。

 少しヤンチャなところがあり、いつも皆にちょっかいをかけては殴られて喜ぶ変態である。

 今は無邪気な笑顔にえくぼを浮かべて、ニッコリとした顔でルークの反応を待っている。


「まあね」


 付き合うのが面倒なので適当にそう返すと、なぜか彼は胸を張って謎のドヤ顔を晒し、


「居残りでしごかれた上に、夕食を食い逃しそうになったんだからな。へへっ、俺たちもお前の飯を確保するのに協力したんだぜ。感謝しろよな!」


 とそう自慢げに語ってきた。


 それを聞いて、ルークの対面に座っていた少女がムッとて反論する。


「何恩着せがましくしているのフランク?あなたはルークの夕食をくすねようとしていただけで何もしてないでしょう!」


 そう言った少女は、訓練兵の中でも数少ない女性であるルーナだった。

 窓辺の朝日に照らされ輝きを放つ綺麗な金髪をストレートに流し、訓練で日に当たっても変わらず白くきめ細やかな肌をした、やや幼さの残るつぶらな碧眼を持つ可憐な美少女だ。


 軍ではたとえ常人よりはるかに強い力を持つ魔法使いであっても女性兵士の割合は少ない。

 彼女は昔、基地に来て間もない頃はその美貌で同期の男連中の心を独り占めしたこともあった。

 しかし、ただの美少女と侮るなかれ。

 彼女は同期の中でもあらゆる戦闘術でトップクラスの成績をもつ実力者でもあった。

 その実力は近接戦闘能力では同期トップであるクラウスでさえ実戦では勝てるかわからないと言わしめるほどである。

 今期の訓練兵が組織された当初、安易な気持ちで近づいてきた男たちが軒並み半殺しにされたのは今では懐かしい思い出だ。

 ちなみにフランクも半殺しにあった一人でる。


 ルーナの指摘に、フランクの対面に座った寡黙そうな男が口を開いた。


「然りだな。お前はむしろ、ルークに謝る方だぞフランク?」


 そう言った少年の名はアーノルドだ。

 クセの少ない黒に近い深い青の髪に、濃い緑の瞳した大人びて端正な顔立ちをしている少年である。


「まあまあ二人ともその辺にしてやれよ。フランクも反省しているしさ」


 二人の指摘に少しいじけ始めたフランクをかばってか、フランクとは逆の隣に座ったクラウスが仲介に入った。

 そんな、いつものメンバーの和気あいあいとした雰囲気の元に朝食の時間が過ぎていった。



 ーーーーーーーーーー



 朝食を食べ終えたら、次は座学の講義を行う。


 兵士は訓練で体を動かすことが主だが、読み書き計算といった基礎知識も学ばれる。

 訓練兵の卒業間際な彼らは既に基礎知識でなく、この国や周辺諸国も含めた国の情勢や歴史、魔法についての知識なども学んでいた。


 魔法兵ではない一般の訓練兵ならば、そもそも訓練期間も魔法訓練兵より短く、体を行使する訓練優先でこういった知識などは最低限軍人として必要な物のみ教えられる。

 しかし魔法兵は、その実力や功績によっては昇格して昇進し、階級的には士官にもなる可能性がある者たちである。

 そのため、可能であればさらに高い知識と教養についても学ぶ必要があった。


 時に相談や質疑を交わしながら、皆真面目に勉学に取り組んでいる。

 ただ一人、フランクだけが居眠りがバレて、教官に連れ出されて今頃はキツいしごきにあっている頃だろうと思われる。

 そんな風に代わり映えのない朝が終わり、昼食の時間を迎えた。






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