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92頁

ラーラさんの頷きを見て、俺は大した事はしていないからそんなに頭を下げないでと伝え、アーデさんと頭を上げたラーラさんに、


「そうだ、ここで掃除などの仕事をしているのなら聞きたいのですが、A組からF組の場所とか教えて貰えませんか?」


そうお願いをする。

俺の言葉を聞いたアーデさんは、少しキョトンとした顔をした後に、


「それは構いませんが、どうしてその様な事を?」


そう質問をしてきた。

俺はその問いに苦笑しつつ、


「次のクラス対抗戦で、優勝しないと彼らの居場所が無くなってしまうんですよ。それを回避する為に、俺はここにいるんです。まぁ正直、あまり出来る事は少ないんですけどね」


そう答える。

ここに来て俺がしてる事って、魔導書読ませて俺自身が魔法の的になったり、パウルを召喚して同じ様に練習相手にさせているだけだからな。

魔法の詳しい説明は、リーゼロッテ先生に丸投げしているし…。

俺がそう思っていると、


「そう言えば、その様な事を生徒達が話しているのを聞きましたね」


アーデさんが思い出す様に少し考える様な素振を見せながらそう言い、ラーラさんがそれに頷く。


「それを避ける為に、他クラスの実力と情報を得る為に姿を消して潜入していたんです。…協力してもらえませんか?」


俺が再度そうお願いをすると彼女達は笑顔で、


「分かりました。では案内をします。ラーラ、貴女は持ち場に戻っていなさい」


頷いてくれたのだが、アーデさんの言葉にラーラさんがショックを受けた様な絶望した表情になり、耳がシュン…と項垂れてしまった。

あそこまで耳って下がるものなのか?

俺がそう思って見ていると、ラーラさんが俺とアーデさんに頭を下げて挨拶をした後、トボトボと悲しげな後ろ姿で俺達の元から去っていった。

それから俺とアーデさんに簡潔にアンジェの指輪の効果を説明し、アンジェの指輪を首に掛けてアーデさんの後ろにピッタリと付いて、他生徒から見たらアーデさんが1人で歩いている状態で本校舎へ再び侵入する。

廊下を歩いていると、アーデさんが手で合図をして俺の元から離れて教室の扉を開き、室内に一礼してゆっくりと扉を閉めようと動く。

扉を閉められる前にアーデさんの元に忍び寄るように移動し教室内に入ると、アーデさんが少しずつ移動しながら窓の拭き残しがないか確認し始める。

俺はその間に生徒達の様子を見ていると、座学をしながら魔法を発動しているのを観察し分析をする。

威力を弱めている状態でこれなら、本気を出せばおそらく結構な威力になりそうな生徒も見える。

だがその生徒も含め、全てと言っても良いほどG組に比べると精度が良くない。

集中していながらも威力の制御が甘く、いつ暴発するか分からない。

おそらくだが、リーゼロッテ先生の教育の仕方が威力重視ではなく精度の精密さを重視した結果だろう。

俺がそう思いながら生徒の様子を見ていると、俺はある事に気がついた。

それは、G組の生徒に比べてこのクラスの生徒達は真面目に魔法の練習をしていない。

このクラスの生徒はどこか怠そうに、面倒くさそうに魔法を使っている。

G組の生徒達と違って、クラス対抗戦で他クラスに負けてもペナルティーがないからだろう。

ふむ、この油断をしていて貰えれば俺達はこのクラスには勝てるな。

次のクラスにお願いしてもらおう。

俺はそう思い、


「…アーデさん、次をお願いします」


窓枠の埃の残りを指で確認しているアーデさんに近寄り、小さな声で彼女にお願いする。

俺の言葉が聞こえたアーデさんはコクリと小さく頷いて、すぐに教室から出ようと教室の扉の元に行くと、一度教室内の生徒と講師の方を向くとしっかりとお辞儀をして教室から出る。

毎回、教室内に入る時はこうやってお辞儀をしないといけないのか。

俺はそう思いながらも声には出さずにアーデさんの後ろを付いて歩き、それから何回も同じ様な侵入方法で他クラスの教室内に侵入し、情報を集めていった。

そうして数ヵ所の教室に潜入し情報を得た結果、とりあえずA組の生徒以外はこのままなら勝てると実感した。

どの生徒も真面目に授業を聞いていなく、魔法を扱っても長時間の魔法を維持するのは不可能。

精度は甘く、冷静な判断をすればしっかりと避けれるであろう魔法。

それが、本校舎に侵入し得た情報だ。

後は、冒険者ギルドに行ってみてA組の生徒の実力を確認するだけだな。

そう思いつつ、俺は旧校舎に向かっているアーデさんの後ろを付いて歩く。

旧校舎に到着すると、俺はアンジェの指輪を首から外して姿を現し、


「アーデさん、ありがとうございました。これで少しだけG組の生徒達にどのように今後魔法を教えるか考えられそうです」


お礼を述べる。

俺の言葉を聞いて、アーデさんは静かに首を振り、


「こちらこそ、ラーラの事を助けていただき本当にありがとうございました」


俺にお礼の言葉を言って頭を下げてくる。

俺はその様子を見て、


「一応薬は飲ませましたけど、完全に治っているかは俺には分からないので後で確認してあげてください」


そう言うと、アーデさんは分かりましたと返事をしてくれる。

俺はその様子を見て、


「…大丈夫です?ラーラさんを含め、ここで働いている奴隷は自由な会話を規制されているんですよね?」


そう聞いてみる。

すると、アーデさんは寂しそうな微笑みを俺に向けて、


「そうですね。自由な会話は出来ませんし、ラーラを含めてここで生活している奴隷達の声を聴いた事は無いですが、意思の疎通は出来ます。感覚が麻痺している自覚はありますが、それを我慢すれば未来があるんです。他の場所で未来が無いと分かっている奴隷達に比べれば、私達は幸せなんだと思います。…ヴァルダ様、ありがとうございます」


改めてそう言ってきた。

ここまで言われてしまったら、もう俺から言う事はないだろう。

何かがあり彼女達が助けを求めてきた時、俺は彼女達の為に動くとしよう。


「体には気をつけて。失礼します」


俺はアーデさんに軽く頭を下げて、そう言って踵を返す。


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