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俺はどうやって彼らと友好関係築こうかと考えていると、3人の人達が木を切って草を抜いただけの道を歩いて門番達の方へやって来るのが見えた。
そして3人の人達が男性2人と女性1人のパーティー的なモノだという事が分かる。
それぞれ装備を身に着けていて、どこか緊張した顔をしている。
3人が門番に近づくと、門番の2人が警戒した様に腰に下げている剣に手を伸ばした。
3人は何やら慌てた様子で荷物を漁ると、それぞれが何かを門番に見せつける。
ここからだと何を持っているのかは分からないが。
5人の動きを観察していると、門番達は警戒を緩めて剣から手を離して柵の内側に入ってくれと言う様に手を動かす。
そこまで見て、俺は何か許可証みたいな物が必要なのかと考える。
「さて、とりあえず現状は何故か知らないがヴァルダ・ビステルとしてここにいるという事。見た感じは「UFO」とは違う地形にいる。モンスターの存在は確認していないが、おそらくいるだろう。育成したモンスター達は今の所、俺に忠誠をしてくれている。問題はここがゲームの中か、もしくは異世界なのかだ」
俺はそう呟きながら、ふーむと考える。
ゲームなら楽しく遊べるのだが、もし異世界に来てしまっているのだとしたら…。
「毎日楽しく…とはいかないだろうな」
俺はそう思い、更に考える。
もし本当に異世界だとしたら、俺だけがこの世界に来たとは考えられない。
可能性はあるから、同じ状況に陥っている人を探して協力するか?
だがどうやって判別すればいいんだ?
俺の感じだと外見は本人ではなくてキャラクターだし、名前も同じだ。
本名を広めればいけるか?
それでも俺の本名を知っている人がここに来ている可能性は低いな。
和名を広めるのはどうだろう?
珍しくはあるしその方が確実性はあるが、もしこの世界に和名に似た名前の言語文化があったら、効果は薄くなる。
…結構手詰まり感があるんだけど…。
俺は軽くショックを受けるが、
「こうなったら俺の事を知っているプレイヤーに会う事を祈るしかないな」
そう考えて呟き、気持ちを前向きにする。
「とりあえず、今はこの世界の事に関しての情報が欲しいな」
俺は独り言を言い、しばらく考えたのち、
「クラスチェンジ・騎士」
職業を騎士に変更して、今装備している武器や防具を全て初心者装備に変更する。
これなら威圧的でもないし、旅人という設定で入れてくれるかもしれない。
俺はド田舎から出てきた旅人だ。
頑張って演技するんだ!
俺は自分を鼓舞すると、立ち上がって門番達の方に歩き出す。
俺が歩いて門番達の元に向かうと、彼らは俺の足音に気づいてこちらに振り向く。
すると同時に、
「何者だ!?」
威嚇する様に荒い声で質問してくる。
腰の剣にも手を伸ばしており、俺が変な動きをしたらすぐにでも抜刀して襲いかかって来そうだ。
「俺の名前はヴァルダ・ビステル。旅人でここから遠い辺境の村から歩いてきたんですが、ここは何て言う場所でしょうか?」
俺が自己紹介をして問いかけるも、彼らの警戒は解けない。
むしろ強まっている気がする。
あまり詳しい事は言わずに、変に怪しまれる事は無いと思ったんだが、それが逆に駄目だっただろうか?
俺がそう思っていると、
「貴様!魔族ではないのか!?」
そんな事を言ってくる。
どこからどう見ても人間なんだが?
「いえ、俺は正真正銘人間です」
俺がそう答えると、青年の門番が抜刀してくる。
「そんな白髪に赤い瞳!どこを見ても魔族にしか見えないぞ!」
そう言ってくる青年の言葉を聞いて、俺は自分の顔をまだ鏡で見ていない事に気づく。
俺が今ヴァルダ・ビステルという事は、外見もヴァルダ・ビステルになっている…。
そして彼が俺の姿を見て危険視しているのだ。
そして俺は今にでも襲い掛かって来るかもしれない青年に、
「13の頃に、病気に掛かって外見が変わってしまったんだ」
そう言って俺は過去の恥ずかしい歴史を、地面に項垂れながら言う。
元々は普通の外見をしていたのだが、あの黒歴史をきっかけにこの外見になってしまった。
ちなみに15歳には卒業する事が出来たのだが、慣れとフレンドに混乱されない様にと思って変えなかったのだ。
こうなると知ってれば普通の外見に設定してたんだ~!
俺がそう思いながら意気消沈としていると、
「そ、そうだったのか…。悪い事を言った」
青年が俺にそう言ってくれる。
見ると、気まずそうな顔をしながら俺の事を見てくる。
その表情が、また一段と俺に恥ずかしさを感じさせられる。
「い、いえ…。大丈夫です」
俺はそう言って立ち上がると、
「ここはベンタート領のブラム村だ」
青年が俺にそう教えてくれる。
ベンタート領のブラム村…。
そんなマップは「UFO」には存在していない。
完全な新世界だな。
「えっと、ビステルさん?とりあえずここで立ち話をしていると警備が出来ないので、中に入られてはどうですか?」
俺が考察をしていると、男性が俺に声を掛けてくる。
「良いんですか?俺はまだ安全な者だとは証明できてませんよ」
俺がそう言うと、
「野盗や盗賊ならともかく、1人でここを襲いに来たという事は無いでしょうしね」
男性が苦笑しながらそう答えてくれる。
野盗や盗賊なんかも出るのか。
俺がそう思っていると、
「アシル、ビステルさんを村長の所まで案内しろ。それとドニーを呼んできてくれ」
男性が青年に指示を出す。
「分かった!えっとビステルさん、付いて来てくれ」
「お願いします」
青年が剣を男性に渡して歩き出す。
俺は軽く男性に頭を下げた後、青年の後を追いかける。
村の様子を見ると、少し活気が無いように感じる。
と言うよりも、村の皆が俺の事を警戒して遠目から見ているからそう感じるのだろう。
ま、外見が魔族に間違えられる程だからな。
俺がそう思っていると、先程の青年が剣を男性に渡していた事に疑問を感じる。
「あの1つ聞いても良いですか?」
「何ですか?」
俺が後ろから声を掛けると、青年は少し振り返って返事をする。
「先程男性に剣を渡していたのを見たのですが、それは何故ですか?」
俺がそう聞くと、青年は苦笑して、
「簡単な話ですよ。村にお金が無いから、武器なんかは見張りが装備するだけしかないんです」
そう答えた。
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