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パウルの意外な事に驚きつつも、俺はとりあえず生徒達に対して、


「大丈夫ですので、怖がらないで下さい」


そうお願いをするのだが、生徒の皆は俺とパウルに近づいてこない。

ど、どうしたものかと思っていると、


「凄い、こんなに人が近づいているのに喰らい付こうとしないなんて」


まさかのリーゼロッテ先生が、落ち込んでいるパウルの目の前に手を振ってそう呟いていた。

リーゼロッテ先生のそんな行動に、俺も生徒達も驚いてしまう。

何だろう、出会ってからあまり日数は経過していなくても普段の彼女を見ていたら怯えて何もない所で盛大に転びそうな予感がしていたのだが、思った以上にグールに対して普通に接している。


「ヴぁ~」


リーゼロッテ先生が普通に接してくれる事が嬉しいのか、パウルは少しだけ元気そうな声を出す。

そんな様子を見ていた生徒達も、恐る恐る俺とパウルに近づいてくる。

それにしてもリーゼロッテ先生がここまでグールに抵抗なく接する姿に、とても違和感を覚えてしまうな。

俺はそう思いつつ、


「リーゼロッテ先生は、グールに抵抗とか感じないんですか?」


そう質問をしてみた。

すると、少しずつ俺達に近づいてくる生徒達の表情がよく聞いてくれたと、まるで褒めているかの様な笑顔になる。

なんか俺と生徒達の間で、リーゼロッテ先生に対する団結力的なモノが固まりつつあるな。

俺がそんな事を思って、内心苦笑していると、


「魔法学院の上級生になりますと、この街の冒険者ギルドで危険すぎない位の依頼を受ける事が出来る様になるんですよ。基本的には薬草の採取とあまり強くないモンスターの討伐依頼なんですが、その時によくグールを仕留めていたんですよ。良いお小遣い稼ぎになって」


俺の質問にそう言って教えてくれたリーゼロッテ先生の言葉に、既に血色も悪く皮膚が剥がれているパウルの顔色が更に悪くなり、ソソッとリーゼロッテ先生から離れて俺の後ろに隠れる…。

モンスターとして、それはどうなのよパウル…。

俺はそう思いつつ、


「今日はグールであるこのパウルと戦ってもらいます。ただしパウルから攻撃はさせないし、基本的に攻撃を避けてもらう事に専念してもらうから安心して下さい」


生徒達にそう指示を出すと、生徒の1人が手を挙げて、


「でもグールって弱い方の分類になるモンスターですよね?それに少しでも魔法が当たったら、マズいんじゃ…」


そう言ってきた。

パウルの事を心配しているというよりも、俺の召喚したモンスターを倒しちゃって良いのかという考えでそう聞いている様な気がする。

俺はその言葉を聞いて、


「大丈夫ですよ。俺が丹精込めて育てたパウルがそう簡単に貴方達の魔法で倒されるなんてありえませんよ」


そう言うと、挑発の言葉を聞いた生徒達が一気に殺気立つ。

なんていうかリーゼロッテ先生の請け負っている生徒皆、魔法に関しては本当にやる気があるというか真面目なんだな。

俺がそう思っていると、


「先生からのアドバイスです。グールは一気に燃やすのが確実です」


リーゼロッテ先生の言葉に、火の魔法が得意な生徒達がやる気満々になる。

というかリーゼロッテ先生?

それ確実にグールの殺し方じゃないですか?

生徒達の闘争心の原因は、リーゼロッテ先生の所為なのかもと推測する。

そんな様子に、パウルはどうしていいのか分からないのか、


「ヴぁ~……」


不安気な声を出す。


「パウル、今からお前に魔法の雨が降り注がれるから逃げ切るんだぞ。大丈夫だ、俺が保証する」


俺がそう言ってパウルを勇気づけると、パウルはゆっくりとだがしっかりとした足並みで前へ進み、生徒と程よい距離で止まる。

俺はそれを確認すると一拍置き、


「始め!」


スタートの合図を言い放つ。

その瞬間、


「熱き魂よ、ファイアボール!」

「穿ち燃えろ、ファイアボール!」

「熱き炎、我が敵を穿て、ファイアボール!」

「ファイアボールッ!」

「燃えろ燃えろォッ、ファイアボール!」


一斉に魔法の詠唱をして魔法がパウルに放たれる。

だが、勢いと速さを重視した所為で、威力と精度が下がった魔法がパウルに向かって飛んでいく。

速さは十分ではあるが、最初に放った人達が全員スピードを重視した魔法なのは減点だな。

俺が冷静に魔法の分析をしていると、パウルは必要最低限の動きで次々に向かってくる魔法を避ける。

先ほどまで燃やし尽くされるのではないかと怯えていたパウルも、自身に迫ってくる魔法が予想よりも威力が弱かったのを見て少し不思議そうにしている。

それにしても、一節詠唱でも台詞が違うんだな。

想像だけど、こういう詠唱文って同じ言葉だと思っていたのだが…。

俺がそう思っている内に、


「風裂きの雷撃よ、ライトニング!」


体勢を崩したパウルに向かって、先程よりも鋭く速い魔法が放たれる。

少し前に見た、レナーテさんの魔法だ。


「早く魔法を使える人は、あのグールが動けない様に魔法を撃って!その間に範囲魔法の準備を!」


レナーテさんは次々にライトニングをパウルに放ちつつ、周りの生徒に指示を出す。

その指示を聞いた生徒達は、彼女の指示に従って一節詠唱で魔法を放つ。

流石に何度も放たれる魔法の嵐に、パウルも動き辛そうに避ける事に徹している。

その間に、


「囲え囲え、不動の大地よ、我の願いを聞き隆起せよ」

「全てを焼き尽くす炎よ、我が敵を囲い収縮せよ、皮膚を焦がし骨を残すな」


詠唱をしていく生徒達。

聞く感じ、意外と容赦がない詠唱をしているが威力はどれくらいなのだろうか?

それに見た感じ生徒達の魔法はF組の連中に負けてはいない。

もう少し詠唱を短く出来れば良いし、精度も上げる事が出来れば言う事なしだと思うのだが、それでは優勝には程遠いだろう。

A組の実力を知りたいが、直で見る事は盗み見する以外に方法がなさそうだな。

俺がそう思っている内に、


「アースウォール!」

「フレイムサークルッ!」


土属性と火属性の範囲魔法が発動する。

流石の範囲魔法、消費魔力も多いがそれだけ広範囲に展開する事が出来る。

パウルの周りを、激しく燃える炎の輪が出来るとそれが徐々にパウルに迫り始める。

それと同時に少し広めの空間が出来る様に大地が隆起し、パウルとフレイムサークルを覆う様にドーム状の土の壁が作られる。

連携は上手く出来てるな。

俺がそう思った瞬間、


「ヴぁーー」


間の抜けたパウルの声が聞こえ、土の壁にヒビが入った。


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