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俺が何故自信満々に女生徒の言葉にそう返したかというと、生徒やリーゼロッテ先生に渡した魔導書は読んだら魔法を覚える事が出来る消費アイテムだ。
「UFO」の時はアイテムを使用すると、すぐに魔法を習得する事が出来た。
なら、この世界でも多少時間が掛かっても1日以上は掛からないと予想している。
俺がそう思っていると、
「…一気に胡散臭くなった」
レナーテ・ミュルディルさんがそう呟いたのが聞こえた。
俺は彼女の呟きを聞いて、
「昨日今日出会った俺を全て信用しろとは言いませんよ。ただ、俺は貴方達をクラス対抗戦で勝ってみせると言いました。そこだけは信用してもらいたいものですね」
そう言って苦笑する。
自分で言っていて思ったが、とても胡散臭く感じるな。
塔の最近入った人達以外の皆だったら、すぐに言う事を聞きそうだけどな。
俺はそう思いつつ、
「皆さんには時間がありません。出来ればすぐにでもその本を読んで欲しいです」
そうお願いする様に言葉を発すると、
「…分かりました」
少し離れた所にいるリーゼロッテ先生がそう言い、1番上に置いてある水魔法の魔導書を手に取って本を開いた。
リーゼロッテ先生の行動を見た生徒達も、少し躊躇してから魔導書を手に取って読み始める。
やはり、リーゼロッテ先生は生徒達から慕われているのだろうな。
俺がそう思った瞬間、ゴン、ガンといった何かが落ちた様な音が生徒達の方から聞こえ始める。
俺がそちらを見ると、生徒達は机に突っ伏す様に開いていた魔導書を開いたまま枕にして眠り始めてしまった。
そんな光景を見ている内に生徒達は全員寝てしまい、リーゼロッテ先生も生徒と同じように寝てしまった…。
え、もしかして俺全員が寝ては起きての繰り返しを黙って見ていないといけないのか?
俺がそう思っている内に1人の男子生徒が起き始める。
彼は自分がどういう状況だったのか理解できていないのか、少しキョロキョロとしてからキョトンとした表情をして俺の事を見てくる。
「あれ?ど、どういう状況ですか?」
そう聞いてきた男子生徒に俺は、
「その本を読むと眠くなってしまうようですね。起きる時間は個人差があるようですが…。体や精神状態は大丈夫ですか?」
状況を説明して体調が大丈夫か聞くと、彼は少し体を動かした後、
「大丈夫そうなので、続けて読んでみます」
そう言って本を読もうとすると、彼は少し顔を引きつらせた。
何があったのだろうか?
俺がそう思っていると、
「あ、あの…書かれていた文字が…読めなくなっていて、文字の大半が消えているんですけど…」
男子生徒がそう言って申し訳なさそうにそう言ってくる。
その言葉を聞いた俺は、これが消費した事になるのだろうかと考えつつ男子生徒の元に行き、彼が持っている魔導書に目を通すとそこには、
『消費済み』
そう書かれていた。
文字は日本語であり、確かにこれでは俺は読めるが生徒達は読めないだろう。
俺はそう思いつつ、
「この本はもう良いらしいですね。次の本を読んでください」
男子生徒にそう指示を出す。
男子生徒は俺の言葉を聞いて少し不安そうな顔をしつつも、次の本を開いて読み始めると再度眠りについた。
俺がそれを見ていると、今度は女生徒が顔を上げる。
それから俺は、生徒達とリーゼロッテ先生に先程の男子生徒と同じように何度も説明を行い、その内皆も慣れていって起きては寝てを繰り返す様になった。
流石に慣れてくると俺が話す機会が無くなるので、俺は皆が寝ている間にどうしようか考える。
とりあえず全員が魔導書を全て読んだ後、時間があったら練習場へ行って魔法の練習とかをさせよう。
もし時間が無かったら、明日に練習場へ行く手続きをリーゼロッテ先生にして貰って、朝から魔法と実戦の練習をするか。
俺がそう思って時間を過ごしていると、まず最初に全ての魔導書を読み切って目覚めたのはリーゼロッテ先生だった。
流石は魔法を教える先生。
「おはようございますリーゼロッテ先生。体の調子はどうですか?」
目を覚ましたリーゼロッテ先生にそう聞くと、彼女は少しボォ~とした顔をしたまま体を動かし、
「特に…問題は無い様です」
そう言って伸びをする様に両腕を上に伸ばし、体を少し反らせる。
なるほど、スタイルが良い人が伸びをするとあんな感じになるのか。
俺がリーゼロッテ先生を見ながらそんなくだらない事を考えていると、少しずつ生徒達も目を覚ましていく。
最後に目覚めたレナーテ・ミュルディルさんを確認すると、俺は少し寝ぼけ眼の生徒達に、
「皆さん、起きて下さい」
拍手をして音を出してそう声を掛ける。
音に反応して、生徒の皆が俺の事を見てくるがその反応はあまり良くない。
寝起きの所為で反応が鈍いな。
俺がそう思っていると、
「皆さん、しっかりと起きて下さい。……しっかりと起きない人には、皆さんご存知の私の起こし方をしてあげますよ」
しっかりと目を開いて意識を覚醒させたリーゼロッテ先生が、生徒達にそう声を掛けた。
その瞬間、今まで眠そうにしていた生徒達が背筋を伸ばして、まるで整列している軍人の人達の様に綺麗に皆が同じ姿勢で座っている。
…ここまでの反応をされると、むしろどんな起こし方をしてきたのか気になってしまうのだが…。
俺はそう思いつつ、
「皆さんお疲れ様でした。現状で、体調や精神面で具合が悪いという人がいたら手を挙げて下さい。今後の練習にも支障をきたす可能性がありますので、無理などをしないで変だなとか思ったら挙げて下さって構いません」
生徒達にそう質問をすると、生徒達は少し考える様な表情をしたリ体を少し動かして確認をしている。
すると、レナーテ・ミュルディルさんが少し表情を曇らせた。
だが、少し観察してみると彼女は何度か頷くような仕草をした後、先程の曇らせた表情とは反対に意思がしっかりとした表情をしている。
俺はその様子を見て、少し気がかりになりつつも話を進めようと、
「では皆さんが大丈夫だと判断して、これから魔法の試し打ちといきましょうか。リーゼロッテ先生、練習場の使用許可をお願いできますか?」
そう言ってリーゼロッテ先生にお願いをした。
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