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一方時は遡り、ヴァルダと別れたエルヴァンとアンリは帝都の街を歩いていた。

正確には、エルヴァンは特に興味は無かったのだがアンリが街を見てみたいと言っていたので、エルヴァンはその意見を尊重して歩いているのだ。


「エルヴァン様、凄い人ですね!」

「そうだな。塔とは違って少し歩きにくい。人と人との間が狭すぎる」


興奮しているアンリの言葉とは反対に、エルヴァンの言葉は少し憂鬱そうな声を出す。

心なしか鎧の下の顔色が悪い様に見える。

その事を気にしないアンリは左右に広げられている店に目を移してキョロキョロとしていると、エルヴァンはアンリの様子を見てこのまま放置していても終わる事は無いだろうと察し、


「落ち着けアンリ。とりあえずはこれから冒険者ギルドに行き、アンリの冒険者登録をしないといけないだろう。街を見学するのは良いが、今は冒険者ギルドを優先する。その後ならいくらでも付き合おう」


そう提案すると、アンリはキラキラした瞳に緩んでいた口元を引き締めて真剣な表情をし、


「分かりましたエルヴァン様」


そう言ってエルヴァンの後ろに移動して、まるでエルヴァンの従者の様に斜め後ろに移動してエルヴァンに付いて歩く。

ヴァルダ様の配下の者として、同じ立場なのにこの立ち位置はあまり良くないな。

エルヴァンはそう思いながら、人の多いこの場で立ち止まり注意するのを躊躇い、後で時間と場所があったら言っておこうと考える。

そうしてエルヴァンとアンリは冒険者ギルドに辿り着き中へと入ると、ギルドの中にいた冒険者達が一斉にエルヴァンから視線を逸らした。

中には、ギルドの中に置かれているテーブルに身を隠す者もいる。

そんな光景に、


「……」


エルヴァンは少し面倒だと感じる。

こういう団体との横の繋がりなどは馬鹿には出来ないと聞いた事がある。

それが本当なら、今の私の状況はよろしくない。

私はそう考えつつも、始まりは最悪だったがこれからの対応で印象を変えていくしかないな。

そう考え、今はアンリの冒険者登録をする事を優先して歩き出す。

依頼の内容を聞いている冒険者の後ろに立ち順番を待っていると、前の冒険者の話が終わって私の番になる。

すると、私の顔を見たカウンターにいた受付の女性が、私の姿を確認した後、


「……ご、ごごごご用件は?」


顔色を悪くして私にそう聞いてきた。

騒動の時にはいなかったはずだから、おそらく他の職員や冒険者から話を聞いているのだろう。

私はそう思いつつ、


「彼の冒険者登録を頼む。それと、私とパーティーになるのでその手続きの仕方を教えて貰いたい」


受付嬢にそう説明しながらアンリの事を手で呼ぶと、アンリは私の隣にやって来る。


「わ、分かりました。そ、それではお名前を。あ、あとパーティーの登録ですと、パーティーのリーダーを決めて欲しいのですが…」


受付嬢は私にそう説明しながらも用紙を出し、色々と手続きの準備を始める。

受付嬢は私と話す時よりもアンリと話をする時は少し顔色が良くなり、話し方も普通に戻っている。

アンリはそんな受付嬢を特に気にした様子も無く、聞かれている質問に笑顔で答えていく。

そうしてアンリの冒険者登録を終えようとした所で、


「…えっと、このままでは第三級冒険者にアンリさんはなってしまうのですが、そうすると…第一級冒険者様のエルヴァン様とパーティーに入られますと、危険な依頼などを受けていく事になるのですが、大丈夫でしょうか?」


受付嬢が私とアンリの事を交互に見ながらそう聞いてくる。

すると、


「はい、大丈夫です!エルヴァン様と違って剣を振るう事は出来ませんが、魔法を使ったりする事が出来るので!」


アンリが受付嬢の言葉にそんな返答をする。

その瞬間、周りにいた冒険者達の気配が変わった。

最初は私に怯えている感じではあったのだが、今の様子は少しだけアンリに注目している様だ。

私がそう思っていると、


「…分かりました。それではアンリ様は第三級冒険者となりまして、第一級冒険者様のエルヴァン様とパーティー登録をしました。リーダーの方はエルヴァン様でよろしいですよね?」


受付嬢が私とアンリの間を見てそう聞いてくる。

なるほど、私を見ると畏怖の感情で上手く会話をする事が出来ないから、見ない様にしつつ失礼が無い様に目線を私とアンリの間を見ているのか。

私がそう思っていると、


「はい。それで構いません」


アンリが先に答えてしまう。

本当なら、人と話しても相手に怯えられる私よりも相手に嫌な感情を感じさせないアンリの方がリーダーとしては向いていると思うのだが、


「では、こちらをどうぞ」


アンリの言葉を聞いた受付嬢が、もうパーティー登録をしてしまったのを見て私は諦める。

どうせ2人のパーティーなのだ、アンリに交渉は任せよう。

私がそう思っている内に、受付嬢がアンリの冒険者カードを受け渡し、私の後ろの壁を見る様に視線を移して、


「これがパーティー登録の証明書ですので、お持ちください。再発行は出来ますが、基本的に再発行をする際に銀貨3枚の罰金がありますので、お気をつけて保管して下さい」


そう言って紙を差し出してくる。

私はその証明書を受け取ると、


「では、これから御二方に危険がない事を…」


受付嬢はそう言ってカウンターに頭をぶつける様な勢いで下げ、そう言って見送ってくれた。

さて、これで必要な事は済んだろう。

依頼を受け、資金を貯めよう。

私がそう思うと、依頼が張り出されている掲示板に歩き始める。

だが、文字が読めない。

…ふむ、とりあえずは今日はもう帰った方が良いのか?

いや、だが宿に泊まるのなら金が必要だ。

どうしたものか。

私がそう思って依頼の貼り出されている掲示板を眺めていると、


「エルヴァン様、どうしたんですか?」


アンリが普段より小さな声で心配の声を掛けてくる。

今、冒険者ギルドは受付や冒険者同士の情報交換でうるさい程だ。

アンリの声も他の者には聞こえていないだろう。

私はそう判断し、


「文字が読めない。これは少し面倒な事になった」


アンリにそう正直に話すと、彼は掲示板に張り出されている依頼書を見つめ、


「なら、僕に提案があります」


そう言ってきた。

私はその言葉を聞き、今はアンリに任せてみようと思い静かに頷く。

私の反応を見たアンリは、私の側から離れて先程の受付嬢の所へ行くと、


「すみません、何か強いモンスターとかの討伐依頼とかありますか??」


そう聞いていた…。


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