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アンリの言葉を聞いた俺は、少し驚いてしまった。
強者を望むエルヴァンや、他のモンスター達なら外の世界に興味を持つとは予想していたが、まさかアンリも外の世界に興味を持つなんて予想していなかった。
だが、
「そうか」
こんなに喜ばしい事は無いかもしれない。
まだ自我を持っているアンリ達との生活は短いが、それでもアンリが他の者達に比べて気弱な方であるとは感じていた。
そんなアンリが自らの意思で外に出たいと言った。
些細な事でも成長する。
それを嬉しいと感じるのは、親心的なモノかもしれない。
俺は一人で感動しつつ、
「アンリが外に出る事は反対しないが、それでも1人で行かせるのは心配してしまう。お前はスキルと魔法に力が偏っているから、それを補える者が良いな」
そう言うと、アンリがぱあぁっとキラキラした笑顔を見せて、
「では、エルヴァン様が良いです!」
エルヴァンと俺を交互に見ながらアンリがそう提案してきた。
流石のエルヴァンも驚いたのか、頭をアンリの方に向かせる。
俺も、アンリがまさかエルヴァンを誘うとは思わなかった。
俺はそう思いながら、
「何故エルヴァンが良いのだ?」
そう質問をしてみる。
聞かなくてもおおよその考えは理解できる、魔法やスキルを使うアンリは後方で戦うのが当たり前だ。
つまり前衛がいなければ、攻撃を防ぎながら魔法やスキルを使う事が出来ない。
前衛にエルヴァンがいれば、安心して魔法などを使う事が出来る。
俺がそう考察していると、
「はい!ヴァルダ様の仰った通り、いざ戦闘になった際に僕は魔法とスキルが主な攻撃手段です。ですが上級魔法やそれ以上の魔法、スキルを発動する際に僕は無防備になってしまいます。そのために前衛で足止めをしてくれる人が必要なので、エルヴァン様がいて欲しいと思いました!」
アンリがハキハキとそう言ってくる。
すると、
「それに僕は今はナヨナヨしていますが、いつかはヴァルダ様やエルヴァン様の様な恰好良い、堂々とした男になりたいのです!エルヴァン様の言葉遣い、仕草を勉強したいと考えています」
アンリが更に理由を言う。
その言葉に俺とエルヴァンは目を合わせて、俺は少し笑いエルヴァンは少し息を吐いた。
アンリにここまで言われたら、俺は絶対に断る事は出来ない。
エルヴァンも、同じ事を思ったのだろう。
ならば、
「そこまでしっかりと考えて言った事なら、俺は止めはしない。エルヴァンはどうだ?」
俺はエルヴァンの口からアンリに付いて行くと言う言葉を引き出そうと質問する。
俺の問いを聞いたエルヴァンは、
「ヴァルダ様が許可をし、友が誘ってくれたのを断る事はしません。謹んでお受けしましょう」
そう言ってくれた。
俺とエルヴァンの言葉を聞いたアンリは嬉しそうな顔をして、
「ありがとうございます!」
俺とエルヴァンにお礼の言葉を言ってきた。
さて、じゃあ色々と準備をしないといけないな。
俺はそう思うと、
「ではアンリとエルヴァンは、明日の朝に出発だ。それまでに準備をしておくように」
アンリとエルヴァンにそう指示を出すと、2人は返事をして俺の部屋から退室した。
まずは、エルヴァンとアンリに持たせる荷物の準備をしないといけないな。
俺はそう思うと、本の中の世界を開いてアイテム欄のページを開くと、
「回復薬は結構な数を買い置きしておいたからな、とりあえず100個。エルヴァンとアンリの事だから死んでしまう可能性はないと思うが、蘇生薬は…数があまり多くないな…。素材もレアな物だから集められていないな。とりあえず30個しか渡せないな…。あと必要な物は……」
独り言を呟きながら、様々な状況を予想して必要になるであろうアイテムを選んで取り出していく。
ただ問題なのは、「UFO」の世界には無かった状態異常があった場合、それを俺が持っている物で対処する事が出来るか分からない事だ。
もし蘇生不可能になってしまったら…。
俺はそう思うと、途端に不安になってきてしまった…。
俺と一緒に行動させた方が便利かもしれない、だけどそれじゃあエルヴァンとアンリの成長を俺が妨げてしまうかもしれない…。
「あ゛あぁぁぁ~!ネガティブな事を考えたらどんどん悪い想像が浮かんでくるぅ…」
俺はそう言いながら、本の中の世界を持ちベッドに移動すると、ベッドに本の中の世界を置いて俺は床に座ってベッドの上に置いてある本の中の世界を眺める。
こんな姿、情けないというか威厳が無いから他の者には見せられないな…。
俺はそう思いながら、ため息を吐いてベッドに体を引きずりながら横になると、
「アンリ達の装備も、ガチ戦闘の時に付ける良い物に変えないといけないな。それは明日の出発する前にするとして、あとは何かする事があるかな?」
そう言いながら色々と思考する。
エルヴァンは特定の敵に対する効果ダメージを出せる剣よりも、単純に攻撃力が出せる武器にした方が良いな。
防具は逆にアンリでは防ぐ事が出来ない魔法攻撃の耐性が高い物を装備させよう。
アンリには魔法攻撃力を底上げする装備と、スキル効果で消費するMPを減少させる装備の方が良いかな?
武器は攻撃力を上げるのよりも、特定のスキルを使える様になる杖が良いな。
俺は色々と試行錯誤をし、アンリとエルヴァンの装備を見直していく。
そうして夜を過ごし、俺は心配な気持ちを残しながら眠りに着いた。
翌朝目を覚ますと、いつものベッドで寝たのにも関わらず体が怠い。
睡眠はしっかりとした気持ちでいるが、眠る瞬間まで不安な気持ちでいた所為か思った以上に体が休めていない様だ。
しかし、ここで怠そうにしていればエルヴァンにもアンリにも心配をかけてしまう。
俺は自分の両頬を両手でパンッ!と叩くと、ベッドから立ち上がって装備を着け直して自室から出る。
そういえば、昨日の夜からセシリアとシェーファに会っていないな。
いつもだったらすぐに現れそうなのに、何か問題でも起きているのだろうか?
俺がそう思っていると、
「「おはようございます、ヴァルダ様」」
身支度を整えたエルヴァンとアンリが、俺の部屋までやって来た。
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