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私に吹き飛ばされた男は、他の冒険者にぶつかって地面に倒れる。
その様子に臆する事は無く、次々を冒険者達が私に斬りかかってくるが、私はそれを全て大剣で受け止めて反撃をしていく。
力を制限している所為で少しずつではあるが、確実に向かってくる者達を倒していく。
ふむ、剣で戦ってくる者は色々な剣技を使ってくるが、どれも我流の所為か特に目立った攻撃を仕掛けてくる者はいない。
それにしても、やはりあの女の様な攻撃方法や威力を持っている者はいないな。
私がそう思っていると、
「チッ!コイツ、口だけじゃねえぞ!1人1人で仕掛けても受け止められるだけだぞ!モンスターを殺す時と同じ攻撃方法で仕掛けろッ!」
どこからか聞こえるそんな指示に、周りの冒険者達は素直に従って1人ずつ仕掛けてくるのを一度止める。
まとめて来ても、大した問題では無いだろう。
私がそう思って大剣を構えると、一気に10人程の男達が仕掛けてくる。
仕掛けてくる方向は前後左右別々。
だが、大した問題では無い。
それに、これ以上同じ様に大した攻撃を仕掛けられても時間の無駄だ。
少し、力を込める。
「ウオォォラアァッッ!!」
そんな掛け声と共に斬りかかってくる男達に、私は力を込めたまま大剣を横薙ぎに薙ぎ払った!
瞬間、私に斬りかかってきた男達が私の大剣の起こした風で吹き飛んでいくのが見える。
周りにいた野次馬達も、風に負けて地面に倒れていくのが見える。
「な、何しやがったあの野郎!?」
地面に倒れている冒険者の一人がそう言うのが聞こえたが、周りの者達は何をされたのか分からなかった様で近くにいる仲間の顔を見回す。
どうやら誰も今起きた事が理解出来ていなかった様だ。
さて、斬られてしまった獣人の彼を治療できる場所に連れて行くか。
私がそう思って歩き出そうとした瞬間、
「剣圧…だな。それほどの力を有しているって事だ」
冒険者ギルドの中から、少し歳を重ねている男がのっそりと出てくる。
「ギルドマスター」
倒れて私達を見ている男がそう呟いたのが聞こえた。
ギルドマスター、字面から見てこの冒険者ギルドの長的な存在か?
「お前達みたいな半端者じゃまだこの男の剣圧は理解できないだろうな。振った剣の数も死にかけた場数も足りていない」
私が男をそう思いながら見ていると、男が倒れている男達にそう言って私の事を見てくる。
そんな男に私は、
「ギルドマスター、という事はここの者達の中では強者なのか?」
そう聞いてみる。
すると、
「まぁこいつらの中では強いな。だが、あんたが期待しているほどの強さは持ち合わせていないぜ。あんたが大剣を振った時の剣圧、あれはもしかしたら先日攻めてきた魔族の女よりも強い力を持っているかもしれないな。つまり、現騎士団長と同じくらいの強さ、超越者と同じくらいの強さだ」
ギルドマスターの言葉を聞いた周りの者達が、驚いた様な声や短く悲鳴を出すのが聞こえた。
「お前らも、この鎧の男に感謝しときな。この男が本気を出したら今頃あの世で神様の元へ逝っていたぜ」
男がそう言うと、周りの地面に倒れている冒険者達が慌てて私から遠ざかる様に這い蹲るのが見える。
私はそんな冒険者達を横目に、
「このような者達に本気を出す必要などない。私が望んでいるのは強者との戦いだけだ」
そうギルドマスターに言うと、彼は私の言葉を聞いてフッと笑い、
「あんたそれだけの力がありながら更に高みを目指しているのか?」
そう聞いてくる。
私はその言葉に頷き、
「力だけなら確かにある方ではある。だが、剣技という技術はあまり持ち合わせていない。私はそれを磨きたいと思ってここへ来たのだが、どうやら間違っていたかもしれないと思っている」
そう声を出すと、ギルドマスターは私の言葉を聞いて何回か頷いて、
「そんな残念な感想を持たれて帰らせちまうのは、ギルドマスターとして恥ずべきだな。どうだろう?少しこの冒険者ギルドで働いてみるのはどうだ?依頼を受ければ、様々場所に行ってあんたが求めている強者との戦いが出来るかもしれないぜ?しかも金も入る、一石二鳥ってやつだ」
そう提案してくる。
だが、
「…今の様子を見るに、ここにいても意味はないと思うが」
私はギルドマスターの言葉を断ち切る。
すると、ギルドマスターは私の言葉を聞いて、
「それはあんた、見る世界が小さすぎるぜ。この帝都には冒険者ギルドの他にも、騎士団がいる。騎士団はこの国の警護が最優先だが、戦いのプロみたいな連中だ。どんな環境で生きてきたかは知らねえが、もう少し見方を変えた方が良いぞ。他にも様々な場所に冒険者ギルドはあるし、そこを拠点にしている強者がいるかもしれねえ。今は貿易も何もしていないジークって国には、噂だが凄まじい剣客がいると聞いた。それを聞いても、あんたはここでしばらく働く気はないか?俺の権限で、今すぐに第一級冒険者にしてやる。そうすればあんたの望んだ依頼が受ける事が出来るぞ」
物凄い勢いでそう言ってきた。
さて、どうしたものか?
ヴァルダ様の言われたこと以外の問題が発生してしまった。
私1人では対処が出来ない。
そう思っていると、
「散れ散れ!何をこんなに集まっている!他の通行人の邪魔になるだろう!さっさと解散しろ」
今度は皆同じ装備を着けている女達が、地面に伏している冒険者や見物人を退かしてそう言っている姿が見える。
何だあの者達は?
私がそう思っていると、
「まったく、また貴方のギルドの者達が騒ぎを起こしてるんですか?ギルドマスター、ゼン?」
女達の先頭に立っていた女がギルドマスターの男にそう言うと、
「全部が全部俺達の所為にされちまうと困っちまうぞ騎士団?今日はレオノーラの騎士団長様はお出でじゃないのか?」
ギルドマスターがそう言ってへらへらと笑う。
私はそれを見ていると、
「レオノーラ団長は、修理した装備の受け取りに行っている。この後合流して下さる予定なのだ」
何故か胸を張ってギルドマスターの言葉に返答する女騎士。
もう無視して帰っても良いだろうか?
私がそう思ったのは、女騎士とギルドマスターの会話が始まって十分は経過した後だった。
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