表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/501

5頁

ロードの時間が終わって転移をすると、俺が作り出した家…というか世界が目の前に広がる。


「…こう思うとよくここまで作り込んだな」


目の前には、天高く聳え立っている塔があり、その塔の周りに様々な地形の島が空中に浮かんでいる。

塔の中には居住区があり、外に浮いている島は庭みたいなものだ。

何故こうなったかというと、様々なモンスターの育成をするために最適な環境を造っていたらこうなっていた。

最初の頃は普通の家だったのに、今じゃ立派になって…。

俺はそう思いながら歩き出して、塔の中へ入る。


「……」


塔に入るとすぐに出迎えてくれるのは、魔族のメドゥーサであるメヒテアだ。

俺が考えた設定では、この塔に侵入してきた敵を排除するのが彼女の役割だ。

メドゥーサである彼女のスキルで、相手の動きを止める。

あとは侵入してきた敵を他のモンスターなどが殺す、という設定。

ちなみに普段から目を隠すために、目元は布で覆われている。

彼女の布はシュリエルが作ってくれたオリジナルだ。

可愛らしい刺繍が目立つ。

メヒテアを見ると、彼女はあまり動かないのが気になる。


「あれ?動かない設定にしていたっけ?」


俺はそう呟いてメヒテアの設定画面を開いたが、彼女の設定はこの塔の1階層の全体になっている。

つまり、ここから移動して他の場所にいても良いのだが…。


「バグかな?それともNPCの機能が制限されてる?」


今日が4月26日、最終日の午後11時38分。

もうサービス終了をするから、色々と設定が制限されているのかもしれない。

俺はそう考えて、メヒテアの設定を塔の全階層に変更して、設定画面を閉じる。

塔の中の構造は複雑な階層とシンプルな階層の2つに分けられている。

ここは家で言う所の玄関なので、シンプルにしている。

ここから下は基本的に倉庫だから今行く必要は無い。

行くとするなら、自室だろう。

俺は1階層の端にある転移ゲートに入り、自室へ移動する。

自室へ移動すると、そこには魔王軍の幹部であったデュラハンのエルヴァンとストーリー上で契約することができたエルフのシェーファが護衛の様に立っている。

ここでもエルヴァンとシェーファが立ち尽くしているのを見ると、やはり何かしらのNPC達に対する制限が掛けられている方を疑うべきだろう。

俺はそう思いつつ、自室に置かれている椅子に座る。

ふかふかの椅子に座ると、途端に寂しさが心の中を支配する。

今まで出会ったプレイヤー達や、様々な仮説を立てて挑戦したモンスター育成。

本当に色々あったが、それも今日で終わる。

あと、11分か。

俺が視線の端に見える時間を確認して、背もたれに深く寄りかかる。


「すぅ…はぁ…」


俺は深呼吸をして、気分を落ち着かせようとする。

本当は情けないが、声を出して泣きたい程だ。

俺はこの先、何を楽しみに生きていけばいいのだろう。

ただ黙ってそう思っていると、睡魔が襲ってくる。

…あぁ、マズいな。

おそらく、放課後のダメージが今になって疲労感でやってきたんだ…。

気分を落ち着かせようとしたら、眠くなってきたなんて…。

最後だっていうのに、薄情だな…。

俺は自分を貶して、目を閉じる。

次起きた時には、自分の部屋なんだろうな…。

俺はそんな事を考えて、睡魔に意識を奪われた…。


………………………


…んぁ…。

今何時だ?

俺は目を閉じたまま目覚まし時計を探す。

ちなみに俺はスマホのアラームでは起きられない。

何故なら電源を切ってしまうからだ。

というか、どこまで手を伸ばしてもふかふかのベッドなんだが?

俺の部屋のベッド、こんなに広くないはずなんだが…。

俺はそう思いながら、手を動かす。

すると、ふにょんとした柔らかいモノが手に収まる。

なんだこれ?

こんな柔らかいモノベッドに置いてあったかな?

俺はそう思いつつ、手に収まっている柔らかいモノを揉み解してみる。


「~~~~!!」


だが、どんなに揉んでも心当たりがない。

気持ちいいから触り続けていたくなるが、そろそろ時間を確認しないとマズい。

俺がそう思っていると、揉んでいるモノが少し水気を纏い始める。

??

俺は更なる疑問に首を傾げつつ、目を開けると、


「~ッ!…~ッ!…」


そこには、水色の饅頭がピクピクしている。

…んん?

んんんんんんッ!?!?

お、落ち着け俺!

何か変なモノを見た気がするが、幻覚に決まっているじゃないか。

きっと寝ぼけているんだろう!

俺はそう思うと、目を出来るだけ全力で擦った後、ゆっくりと目を開ける。

するとそこには…。


「……?」


水色の饅頭がむにょんむにょんと動いている…。

寝ぼけている…んだよな?

俺がそう思って部屋を見ようとすると、そこは俺が過ごしてきた部屋とは大きく違った。

いや、ある意味では過ごしてきた部屋ではあるのだが、ここにはもう来られないと思っていた。

それ故にやはり寝ぼけているか、まだ夢の中なのだろうと思う。

俺はそう思いながら、とりあえずベッドから下りようとすると、


コンコン


ドアがノックされる。

へ?

扉がノックされる?

俺がそんな当たり前ではあるが、今の現状ではありえない事に驚いていると、


「ヴァルダ様、お目覚めでしょうか?」


凛っとした声が、扉の向こうから聞こえてくる。

この声は聞いた事があるが、それは事務的というかシステム的な感じがしていた。

でも今掛けられた声は、明らかに感情が籠った声だった。


「ヴァルダ様?」


俺が返事をしない所為か、彼女の声が少し不安そうだ。

と、とりあえず返事をして彼女を安心させないと。


「あ、あぁ…。起きてる」


俺が声を出すと、水色の饅頭が俺の膝の上に乗っかる。

饅頭…というよりかは、完全にスライムだな。

俺はそう思いながら、饅頭を触る。

この感触が夢には思えないが、とりあえず撫でてみる。

すると、


「失礼してもよろしいでしょうか?」


扉の向こうからそう問われる。

とりあえず、色々と確認する意味も込めて彼女とも会わないとな。

今撫でている饅頭だけなら、まだギリギリ夢だと思える。


「大丈夫だ」


俺がそう声を掛けると、失礼しますという声と同時に扉がゆっくりと開けられる。

俺も扉に目を向けるとそこには、


「おはようございますヴァルダ様」


俺に頭を下げているシェーファが、そこにいた…。


読んで下さった皆様、ありがとうございます!

ブックマークして下さった方、ありがとうございます!

評価や感想、ブックマークをして下さると嬉しいです。

誤字脱字がありましたら、感想などで報告して下さると嬉しいです。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ