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57頁

あれから何回も剣を交えていた2人。

エルヴァンは少し残念そうにしている、それに対してルミルフルは悔しそうに剣を構え直す。

これでは平等な戦いでは無いな。

俺はそう思い、本の中の世界(ワールドブック)を開いて大剣を取り出すと、


「まだ残念がるのは早いと思うぞエルヴァン」


そう声を出して見つめ合っている2人に声を掛けると、エルヴァンが大剣を納刀して首を垂れる。

ルミルフルはその様子を見ながら、悔しそうな表情を崩さない。


「ルミルフル、君の動きを少し見させてもらったが、その剣じゃ軽すぎるんじゃないか?」


俺がそう聞くと、彼女は黙ってそっぽを向く。

俺はそれを見て、


「少し重い剣を使えば、少しはエルヴァンを驚かせることが出来るかもしれないぞ」


そう言って大剣を差し出すと、


「…言い訳はしたくなかったけど、流石に情けないと思われるのは嫌。…だから、ありがとう」


彼女はエルヴァンを見ながら俺にお礼の言葉を言う。

さて、これでどんな戦いが見れるだろうか?

俺はそう思いつつ、2人から少し離れて3人の少女達が見ている所まで下がると、


「さっきまでの私とは違うから」

「…どんな相手でも油断はしない」


エルヴァンとルミルフルはそう言い合って武器を構える。

そして、


「フゥー………」


ルミルフルが息を深く吐いた瞬間、彼女は走り出す。

2人の距離はそこまで開いている訳では無い。

それでも距離を詰めた理由は何だ?

俺がそう思ってルミルフルの様子を見ていると、彼女は大剣を大きく一振りして地面に刺すと、まるで棒高跳びをする様に少し高い位置まで大剣と走りの勢いで飛び上がった。

飛び上がった勢いで地面に刺した大剣も地面からは抜けており、彼女の手にしっかりと握られている。

流石のエルヴァンもこの行動には予想が出来なかったらしく、剣を防御する様に体に寄せて構え直す。

すると、ルミルフルは空中で体を動かして大剣を横に振るう様に構えると、落ちてくる力と自分の腕力、そして大剣の重さを利用した遥かに大振りの横薙ぎを繰り出した!

スキルでも無いその動きに、俺はルミルフルの戦い方がエルヴァンの知っているモノとは全く違う事を理解する。

エルヴァンもその予想外の動きと自分が想定していた攻撃の重さの違いに困惑し、ぶつかり合った大剣を押し返す事が出来ずにルミルフルの攻撃に耐えている。

すると、


「まだこれだけじゃない!」


ルミルフルはそう言うと、大剣を握っていた片手を柄から離してエルヴァンの頭を殴ろうとする。

あの大剣を持ち上げる腕力で殴られるのは痛そうだ。

俺がそう思ってみていると、エルヴァンは頭を狙われているのに気づいて一歩引こうとする。

だが、初動の差でルミルフルが速かった故に、殴れはしなかったが掠める事は出来た様だ。

エルヴァンが抱えていた自身の頭が少しズレた瞬間、ルミルフルは更に追い打ちを掛けようと腕を伸ばす。

しかし、エルヴァンも自身の弱点には気づいていた。

なんとエルヴァンは、自身の抱えていた頭を後ろに投げると、つばぜり合いをしていた大剣の柄を両手で握り、


「オォォッッ!!」


ルミルフルの大剣を弾き飛ばした。


「ぐッ!」


片手で支えていた大剣を体ごと弾き飛ばされたルミルフルは、苦悶の表情で声を出して地面に着地する。

…エルヴァンに頭を投げさせて両手で剣を握るという事は、エルヴァンも本気ということだろう。

流石に子供達の前で本気の戦いはどうなんだ?

悪影響になったりしないか?

俺がそう思っている内に、ルミルフルは大剣を構え直す。

先程の構えとは違う事から、また新しい攻撃方法でエルヴァンに対峙するつもりなのだろう。

正直見たい気持ちはあるが、今ここで止めないと白熱した戦いになりそうだ。

俺はそう思い、今にも突撃しそうな2人の間に駆け寄って割り込み、


「そこまでだ。それ以上はただでは済まないぞ」


そう言って互いに声を掛ける。

すると、大剣を両手で掴んでいたエルヴァンは剣を納め、エルヴァンの行動を見たルミルフルも大剣を地面に置いてその場に座り込む。

ルミルフルが地面の上に座り込むと、草陰からこちらを窺っていた3人の少女がルミルフルの元に来て、


「大丈夫?」

「怪我してない?」

「あ…大丈夫…です…か?」


そう質問する。

ルミルフルは軽く息を切らしていたが、3人にそう質問されて深呼吸をし、


「大丈夫。ちょっと熱が入っちゃっただけ。それよりも、危ないから剣には触っちゃ駄目よ」


そう言って急いで大剣を鞘に仕舞う。

それを見ていると、


「ヴァルダ様、見ていましたか?」


エルヴァンが俺に近づいてきてそう聞いてきた。

俺がルミルフルを見ていた時に頭を回収したのか、すでに彼の脇腹にはいつも通り頭が抱かれている。

俺はエルヴァンの言葉を聞き、


「あぁ。スキルの力を使わずにあんな変わった戦い方をするんだ。…俺の話も悪い話ではないだろう?」


エルヴァンにそう言って彼の眼を見る。

エルヴァンの眼の輝きは、まるでおもちゃを買って貰った子供の様に、ワクワクとした好奇心と興奮で眼を光らせていた。

どうやら、ルミルフルの戦い方はエルヴァンの外への世界の興味は引いたようだ。

俺がそう思っていると、


「これ、貸してくれてありがとう…ございます」


ルミルフルが俺に大剣を返しにやって来る。

俺に大剣を差し出す時に、言いずらそうに敬語で話しかけてきた。

魔王の娘だからな、敬語で話すことなんてなかなかない事だろう。

俺はそう思い、


「敬語はまだ良いぞ、今は仮契約しかしていないんだ。俺に従おうという気になったら、本契約をしてそれから敬語で話してくれ」


ルミルフルにそう伝える。

本当は敬語で話されるのもあまり好きではないのだが、皆が敬意を持って敬語で話してくれているのだ。

それを断るのも言い出しづらい…。

俺がそう考えて頭を悩ませていると、


「私達も?」

「敬語って何?」


2人のメアリーが俺にそう聞いてきた。

…2人のメアリーというのも、結構面倒だな。

やはり、何か区別する呼び方が必要だろう。

それに、名を名乗らない少女もだ。

俺はそう思い、2人のメアリーと名無しの少女を見る。

すると、彼女達はルミルフルの服を摘まんでいたり、ルミルフルの後ろに隠れている姿を見て、俺よりも彼女に心を許していると感じた。

なら、


「ルミルフル、この子達3人の名前を考えてあげてくれないか?」


ルミルフルにとっても、3人の少女達にとっても良い案だと思う事を提案した。


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