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54頁

俺に近づいてきたシェーファは、口を閉じて緊張した様子で俺の元にやって来ると、


「ヴァ、ヴァルダ様」


座っている俺の目線に合わせる様にしゃがみ込むと、顔を俺の顔の前に調節する。

おぉ、こんなに近くでいると、まつ毛の長さとかよく分かるな。

肌もシミなんて全く無く、すべすべしているのが少し離れている位置からでも分かる。

唇も潤いがあり、乾燥なんてしていなさそうだ。

俺はそう思うと、


「では行くぞシェーファ」


シェーファにそう声を掛けると、


「は、はい。お願いします」


シェーファは瞳を閉じてそう返事をする。

なんか、こうやって見るとキスでもしようとしているみたいだな。

俺はそう思いながら、両手でシェーファの両頬を包み込むと、


「んぎゅ…」


少しだけ押してみた。

おお、普通なら変な顔になるであろう状態なのに、美しさを保っている!

俺はそう思いつつ、モチモチスベスベをシェーファの両頬を撫でまわす。

たまにスゥにした様に、少しだけ指先に力を入れて揉んだりすると、


「ヴァ、ヴァルダ様?」


シェーファが不思議そうな声を出す。

俺はそんなシェーファに、


「スゥにした様に、撫でたり揉んだりしてみたぞ」


そう言うと、彼女は俺の手を跳ね返すほど頬を膨らませて、


「そうですけど!そうなんですけど!間違っていないですけど!」


そう言って不満そうにむくれると、両手を少しだけ上下に振るう。

なんて言うか、綺麗系な美人がこうやって可愛い行動をするのも凄く良いな。

俺はシェーファの様子を見ながらそう思った。

すると、


「………」

「あっ」


こちらをジトーッとした目で見つめていたセシリアと目が合ってしまった。

…何も言わないのがとても気まずい。

シェーファは未だに不満げに俺の事を見てくるが、俺はそれどころでは無い。

何ていうか、シェーファに過剰にスキンシップをしてしまったのを見られた所為で、家族に秘密の物を見られてしまった様な罪悪感みたいなモノが湧き上がる。


「…どうしたセシリア?」


何も言わない訳にはいかないし、目が合ってしまったからセシリアにそう声を掛けると、


「…いえ、ヴァルダ様がシェーファをスゥの様にもみくちゃにしている姿を見ていたなんて、そんなことありません」


セシリアは白々しい嘘を吐いてくる。

ここで言い訳を言うのもなんか駄目かもしれないと思い、


「…そうか。それで、俺が連れて来た人達はどうした?」


強引に話を切り替えて質問をする。

俺の質問を聞いたセシリアは、ジトーッとした目から仕事する際の真面目な表情になり、


「浴場でゆっくりした後、女性達は軽く食事をした後部屋でおやすみになられました。男性は浴場で汚れを落としてすぐに部屋に戻っていきました」


そう報告してくれる。

とりあえず、皆が部屋に行ってゆっくりと出来ているなら良かった。

俺がそう思っていると、


「ヴァルダ様、一つ質問してもよろしいですか?」


拗ねているのか怒っているのか分からない何とも言えないシェーファが、少し口元をピクピクさせながらもそう聞いてきた。


「構わない。言ってみろ」


俺がシェーファの言葉にそう答えると、


「バルドゥと共に草原島で生活している人達と、今日連れて来たあの人達の提供している場所が違いますが、それはいったいどうしてでしょうか?」


シェーファが俺にそう聞いてきた。

俺はその問いに、


「まぁ、それぞれの過ごしていた環境や境遇を考えての結果だな。魔王の娘は心は折れておらず、魔王城での生活が塔の生活でも順応できると思ったからだ。2人のメアリー達も、奴隷にされて怯えてはいたが折れてはいない。まぁ彼女達は、別の意味で心に問題があるが…。男性も同じ理由だ。最後に名前を言わない女の子だが、彼女はすでに心が折れている。故に与えられた環境に適応出来ると思ってここへ入れた」


そう答えると、セシリアが少し考えた後に、


「では、バルドゥと共に過ごしている人達は塔の生活が出来ない理由は?」


そう聞いてきた。

俺は少し言うのを躊躇った後、


「彼女達はまだ心は折れてはいないが、折れかけている。その状態で全く違う生活をさせるストレスと、1人に一部屋を与えて寂しさを感じさせるのは危険だと判断したからだ。もしかしたら、最悪な状況になるかもしれないと思って、バルドゥの側で生活してもらっている。彼女達の心が少しでも良くなって、1人1人で生活出来る様になったら塔での生活を提案するつもりだ」


そう言う。

すると、


「そこまであの者達の事を考えていたなんて、ヴァルダ様のお心遣いにとても感動しています」

「私も同じです」


シェーファとセシリアが、目をキラキラさせてそう言ってきた。

やめてくれ、俺はそんな目で見られる様な事はしていない。

ただ、本の中の世界(ワールドブック)の仮契約欄を見てそう思っただけだ。

俺はそう思いながら、


「2人の気持ち、素直に受け取っておこう。…2人には更に仕事を頼む事になってしまうが、これからもあの者達をよろしく頼む。入ってはいけない場所や、危険な事を教えておいてくれ。…それとセシリア、あの件の事、頼んだぞ」


2人にそう言うと、2人は俺に優雅に頭を下げて返事をすると部屋から出て行った。

俺は部屋で1人きりになると、本の中の世界(ワールドブック)を開いてアイテムを確認する。

食糧が少なってきているのは当たり前、しかしまだ備蓄はある。

島を造る際の素材は、定期的に集めてくれば問題はないだろう。

水も、島の素材の際に一緒に集めてしまえば良いし、緊急で多く必要になったら魔法を使って出してしまえば良いな。

装備を作る必要は今の所ないだろう、一応まだ戦いにおいて危ない場面はなかったと思うし…。

俺はそう思いながら本の中の世界(ワールドブック)のページを捲っていく。

すると目に入ってくる「レオノーラの鱗」。

俺はそれを取り出すと、少し手を挙げて下から覗き込んでみる。

少し尖っている部分もあるが、全体的には丸みを帯びている。

色は前に見た彼女の龍である部分と同じ紅。

いつか、この鱗がどこの部分であるか聞いてみたいな。

俺はそう思いながら鱗を仕舞うと、明日の事を考えながら風呂へ入って眠りについた。


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