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49頁

3人を遠ざけた後、俺は塔へ連れて来た者達の前に立つと、


「改めて挨拶をしよう。この塔の支配者、ヴァルダ・ビステルだ。とりあえず、名前と奴隷になった経緯を教えて貰おうか」


俺がそう言って全員の顔を見回すと、


「じゃあ最初に私が」


魔王の娘が少し不満そうな顔でそう言う。

俺は魔王の娘の言葉に手で合図をすると、


「私は魔王アンシエルの娘、ルミルフル。奴隷になったきっかけは、人間達に復讐しようと帝都で暴れたら、龍人の騎士団長に負けて捕らわれたから」


魔王の娘、ルミルフルさんが名乗る。

続いては少し怠そうにしていた男性が、


「俺はダグス。帝都の城に、栽培した作物を搬入している商人兼農家だ。奴隷になった経緯は、俺が今回運んできた作物に何故か毒が仕込まれていやがったから、暗殺者だと疑われた。…本当なら極刑くらいの罪人なんだが、証拠不十分ってやつだな。俺が作物に毒を仕込んだ理由、方法がどんなに調べても出てこなかったから、罪が軽くなって奴隷堕ちってところだ」


そう説明してくれると、自分の境遇に自分で苦笑をしている。

…この世界では人族に対しては寛容だと聞いてはいたが、ここまで寛容なものなのか?

それに証拠不十分でって言葉も違和感がある。

なんて言うか、俺からしたら普通だけどこの世界にはそんな考えが存在しているのだろうか?

俺がそう思って悩んでいると、


「あ、あの…」


一緒に檻に入っていた2人組の女の子の1人が、俺におずおずと話しかけてきていた。

今はこの人達の事を優先しよう、考えるのはその後からだって出来る。

俺はそう考えて、意識を目の前で怯えている2人の女の子に、


「すまなかったな。名前は何て言うんだ?」


そう質問をする。

すると、


「「メアリー」」


2人が同じタイミングで名前を名乗ったのだが…。

2人共同じ名前という事か?

俺はそう思いながらも、


「…2人共メアリー…なのか?」


2人に疑問に思った事を聞いてみる。

すると、2人は互いに顔を見合わせると、


「「はい」」


これまた同じタイミングで返事が返ってきた。

それにしても、双子…ではないよな。

顔の作りも違う様に見えるが、二卵性双生児って事か?

俺がそう思っていると、


「私達、メアリー。奴隷になっちゃった理由、使えない出来損ないだったから捨てられた。他のメアリー達も、皆皆捨てられたか、動物の餌になっちゃった」


ビクビクしているメアリーに抱き着かれているメアリーがそう教えてくれる。

ふむ、この子達の話が本当だとすると、どこかの誰かがメアリーという子供達を作っては出来損ないだったら捨てている…という事なのだろうが、どこまでが真実か見当もつかない。

だが、この子達は生まれてきて悪い事も何もしないであのような場所に入れられていたと考えると、この子達の親に怒りを覚える。

俺はそう思いながらも、女の子達が怖がらないように、


「分かった。話してくれてありがとう」


そう言って2人の頭を撫でてみる。

初めて頭を撫でられたのか、2人は少し驚いている様な戸惑っている様な反応をしていたが、拒絶される事は無かった。

…2人共同じ名前なら、あだ名みたいな呼び方で呼んだ方が良いのかな?

俺は汚れてしまって硬くなっていたり、固まってしまっている髪を撫でる。

風呂に入る様になれば、この髪を綺麗になるだろう。

俺はそう思いつつ、


「最後だ、頼むぞ」


2人のメアリーの頭から手を離して俺が公爵から奪ってきた奴隷の子を見ると、彼女は少しビクッとした後、


「わ、私の名前は…ありません。私はただの道具、実験材料…。もう、名前を名乗る事は出来ません」


俺に謝罪をするかの様に頭を何度も下げてくる。

すると、


「待ちなさい、貴女は奴隷になる前の名前があるはずよ」


魔王の娘、ルミルフルが女の子にそう言う。

だが、


「わ、私は道具なんです」


女の子の言葉は変わらない。

ただ自分を道具だと何度も言う。

女の子の首輪は奴隷に付ける魔法が施されている首輪では無く、罪人などを捕まえて逃げない様にするだけの首輪だ。

彼女の発言などを縛っている訳では無い。

そう言う様に、徹底的に拷問されたのだろう。

…とりあえず今はゆっくりしてもらう事が重要だな。

全く知らない所に来たのだ、不安で心が潰されてしまうギリギリのラインだろう。


「そうか。ならば、この話はまた落ち着いてからゆっくりとしよう。さて、とりあえずは全員風呂に入って貰って、体を綺麗にしてもらわないとな。塔の部屋を使ってくれて構わないのだが、流石にそこまで汚れていたら休める環境であっても、くつろげないだろうしな。…付いて来い」


俺はそう言って振り返って歩き出すと、全員少し遅れてから歩き始める。

そうして歩いて塔へと来ると、


「ヴァルダ様、お風呂の準備が出来ています」


セシリアが俺の考えを先読みしてくれて、仕事をこなしてくれる。


「すまないな。ではこの人達を風呂に連れて行ってくれ」

「かしこまりました」


セシリアは俺に一礼をすると、皆を連れて塔へと入っていく。

だが、


「何故行かないのだ?」


魔王の娘、ルミルフルがセシリアには付いて行かずにその場に残っている。

すると、俺の質問を聞いたルミルフルが、


「少し話したい事がある。…重要って訳では無いんだけど…」


少し言い辛そうにそう言ってきた。

俺はその言葉を聞いて、今は彼女の願いを聞いてやるかと思い、


「誰にも聞かれたくない話か?」


そう再度質問をすると、彼女は黙って頷いた。

俺はそれを見て、自室に行く事を選択して塔の中へ入る。

塔の中では先に行ったメアリー達の風呂を見たのか、凄いという言葉が響き渡ってきた。

俺はその言葉を聞いて嬉しく思いながら、自室に戻って来た。


「適当に座ってくれ」


俺は後ろに付いて来ていたルミルフルにそう言うと、自分が今着けている装備を外して身動きが取れやすい装備に切り替える。

ローブとか、日本にいた時に着た事が無いから堅苦しいというか、気を遣ってゴロゴロ出来ないんだよな。

俺がそう思いながら、


「それで話とは何だ?重要ではないと聞いたが…」


ソファに座っているルミルフルにそう聞くと、彼女は少し間を何も答えずにいると、


「あのデュラハン、あれは私の父、魔王アンシエルに仕えていたデュラハンに似ている」


唐突に、そう切り出してきた。


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