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498頁

レナーテさんの考えを聞き、俺は彼女が戦争の後の事を考えている事に感心する。

そしてしっかりと彼女は未来を見て、今の自分の力が不足している事を確認してそれを改善しようとしている。

その為に俺にお願いをしているのだ。

確かに、レナーテさんの言う事は正しいと俺も思う。

それで俺の配下に加わりたいと願う事は、彼女の中で俺の元で鍛えた方が絶対に魔法使いとしての力が向上すると思っているのだろうな。

真剣に未来の事を考え、見据えた未来の自分に近づく為に確実な手段を取る。

堅実な考えだ。


「…分かりました」

「っ!ありがとうございます先生ッ!」


俺の了承の言葉に、レナーテさんが表情を明るくさせてそう言ってくる。

そんな彼女に対して俺は待てと言わんばかりに手を出して彼女を制止させる。

俺のその動きに、喜びと安心感を得ていたレナーテさんの表情が少し曇る。

そんな彼女に、


「レナーテさん1人でこれからの人族の全てを抑止するのは物理的に無理だと思います。ですので、他の皆も…来たいと言った人だけでも一緒に来てもらいましょう。勿論、人としてのまともな倫理観がある、リーゼロッテ先生のクラスの子達が優先されますけど」


俺がそう伝えると、


「はいッ!ありがとうございますッ!」


レナーテさんが俺にお礼を言ってくる。

俺とレナーテさんの会話を聞いていたリーゼロッテ先生が、


「…それなら、私も大丈夫ですか?」


俺にそう聞いてきた。

彼女の問いに俺は、一度彼女の両親の方に視線を向ける。

見るとリーゼロッテ先生の発言に対してお父さんは、これから起こるであろう自身の苦労を想像してか頭に手を付けてため息を吐いている。

そしてお母さんの方は、リーゼロッテ先生の発言が予想出来ていたのか、仕方が無いといった様子で苦笑しながら事の成り行きを見守っている。

改めて俺はこちらを見つめているリーゼロッテ先生の方に視線を戻すと、


「…分かりました、リーゼロッテ先生にも色々として欲しい事があるので、力を付けて欲しいとは思っていました。具体的な方法までは考えてはいなかったんですが…。…しかし、リーゼロッテ先生は貴族としての責務が、レナーテさん達よりも多く重要な事があると思います。ですので、リーゼロッテ先生にはレナーテさん達よりもハード、しかし早く成長できる鍛練を行いましょうか」


そう告げる。

俺の提案に不思議そうな表情をするリーゼロッテ先生。

俺の発言に、少しだけ不安そうにしているご両親。


「大丈夫です、彼女には危険な思いはさせませんから。ただ少しだけ、忙しくはなると思いますけど」


そんな2人に、俺は少しでも安心してくれる様にそう声を掛ける。


「レナーテさんとリーゼロッテ先生の話は一旦終わりにして、クロスさんとの話を始めて構いませんか?」


俺が話題を切り替えて、リーゼロッテ先生のお父さんにそう切り出す。


「あ、あぁ…。私は何が出来るのだろうか?」

「まずは貴族としての仕事を優先して下さい。今から帝都からの命令に従っている様に見せても、周りの貴族…元から亜人族を虐げていた者達からしたら信用はあまりされていないと思います。ですので、まずは目立つ行動はせずにお願いします。それが、皆さんの命を護る事になるんですから。情報を掴む事、それを俺達に流す事で十分です。情報というのは、帝都の戦争時の陣形やどこにどのような部隊、もしくは戦闘に特化している者が配置されているのかの情報と、不本意ではあると思いますが貴族達などの会話からも、虐げられていたり捕縛の対象になりそうな亜人族達の情報を流してくれるだけで十分です。それだけで、とても助かります」


俺がそう説明をすると、リーゼロッテ先生やレナーテさんと違って、お父さんは食い下がる事はせずに素直に短く返事をして頷いた。

おそらく、自分の出来る事を見極めて最善を尽くそうと考えているんだろうな。

レナーテさんやリーゼロッテ先生の様な情熱では無く、物事を冷静に見極めて自分の護るモノを必死に護ろうとしている。

だから彼は、自分が無理をしない範囲を模索している。

俺がそう思っていると、リーゼロッテ先生とレナーテさんに対して、リーゼロッテ先生のお母さんが無理をしない様にと優しい言葉を掛けている。

彼女の言葉に、リーゼロッテ先生もレナーテさんも真剣に、しかしその優しい言葉に微笑みながら大丈夫だと返している。

そうして話がある程度纏まった所で、


「では、俺はこれで失礼します。情報の方はリーゼロッテ先生にお伝えして下さい」


俺がそう話を纏め始める為にそう声を出すと、


「分かった。…娘を、よろしく頼む」

「…はい」


リーゼロッテ先生のお父さんに彼女の事をお願いされ、俺はその言葉に力強く返事をする。

すると、


コンコンコン


「失礼します。お話中に申し訳ありません、旦那様に御客人が…」


扉がノックされて、執事の男性が扉を開けて中に入ってくると、頭を下げてそう言ってくる。

彼の言葉に、リーゼロッテ先生のお父さんが席を立って執事の元へ行くと、


「分かった」


少しだけ警戒した声でそう返事をする。

その後に、俺の方に視線を向けてから部屋を出て行く姿を見て、俺は今屋敷に来た客人に姿を見られるとマズいのかもしれないと考えると、俺もソファーから立ち上がり、


「では、リーゼロッテ先生。俺と仮契約を行いましょう」


リーゼロッテ先生にそう声を掛ける。


「は、はいっ!」


俺に声を掛けられたリーゼロッテ先生も続いてソファーから立ち上がる。

俺は本の中の世界(ワールドブック)のページを切り、


「手を出して下さい」


そうお願いをする。

俺の言葉に頷き、リーゼロッテ先生が俺に手を差し出してくる。

彼女の手を取り、手の甲を上になる様に少しだけ動かすと、


「痛くないですからね」


俺はそう言って、彼女の手の甲に本の中の世界(ワールドブック)の切れ端を押し付ける。

切れ端は消滅し、その代わりにリーゼロッテ先生の手の甲に仮契約が済んだ事を確認出来る印が刻印されるのを確認すると、俺はリーゼロッテ先生の手から手を放す。


「終わりました。それでは、行きましょうか」


俺はそう言って、レナーテさんとリーゼロッテ先生の事を見た。


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