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カルラに乗って移動をし、シュタール公国近くまで戻って来た俺はカルラにお礼を言って塔に戻って貰った後、俺はリーゼロッテ先生とレナーテさんがいる屋敷へと向かう。
…それにしても、凄い忙しいな今日も…。
賢者との戦闘は良い情報収集にもなったが、向こうにも俺の素顔を知られてしまったな。
まぁ向こうも軽いダメージという訳では無かったと思うし、すぐに態勢を整えて進軍してくる事は無いだろう。
というか、そうであって欲しい。
俺が対処出来る状態なら何度でも相手をしてやれる、しかしレヴィさん達だけの状況はマズい。
おそらくレヴィさんやデレシアさんだけでは、賢者と互角に戦う事は出来ない。
更に彼女達には護るべき仲間もいる、その人達を護りながらの戦闘は避けなければいけない筈だ。
賢者はまだあの島の存在は把握していても、場所までは特定出来ていない筈。
それまでに、あそこに住んでいる人達でも対処出来る様にしておかないといけない…。
それに賢者の瞬間移動の魔法、あれも厄介だ。
レヴィさん達の居場所が把握、もしくは海で戦うには不利であるから移動しなかったのか、それとも何かしらの制限があるのか。
それを詳しく知りたい所ではある。
もし何度も使用出来た場合、態勢を整えた状態で瞬間移動をしてまたあの海岸付近に現れる可能性もある。
リーゼロッテ先生は魔法に関しての知識は凄い、話を聞いてから対処しよう。
俺がそう思っている内に、リーゼロッテ先生とご両親、レナーテさんがいるであろう屋敷に辿り着いた。
頭を切り替えよう、レナーテさんがリーゼロッテ先生に先に状況の報告をしてくれた筈だ。
だから俺が話す事はこれからの動き、帝都の動きの偵察と情報収集。
俺がそんな事を考えていると、屋敷の執事が出迎えてくれて屋敷の奥へと案内してくれる。
リーゼロッテ先生の立場を考えると、あまりここにも来る事は避けた方が良いな。
賢者の手の者がこの屋敷に来た事を考えると、賢者一派に俺の情報が流れるのは時間の問題だ。
そうなった場合、俺とリーゼロッテ先生との交流があるのがバレるのはマズい。
リーゼロッテ先生やご家族に危害が及ぶ可能性が十分にあり得る。
賢者の様子を見るに、皇帝…いや、この世界の神に対する信仰心は妄信的であった。
ならば、女神に対抗しようとする俺達、そして俺達に繋がっている人達ならば、人族だろうが亜人族だろうが関係無く危害を加えてくるだろう。
「旦那様と奥様、お嬢様にレナーテ様がお待ちです」
俺が考え事をしている内に、執事の男性が奥の部屋まで案内してくれてそう言ってくる。
「ありがとうございます」
お礼の言葉を伝えると、執事の男性は一礼をしてからその場を立ち去る。
コンコンコン
「どうぞ」
「失礼します」
扉をノックすると、室内から男性の声で許可の言葉が聞こえてくる。
その言葉を聞いてから扉を開けて室内に入ると、すでに話し合いが行われていたのか少しだけ室内の皆に疲れが見える。
特に、リーゼロッテ先生とレナーテさんの様子は俺の事を見た瞬間に変化した。
俺が室内に入った瞬間はどこか不安そうにしていたのだが、俺の事を見た瞬間に安心した表情と様子になる。
「申し訳ありません、遅くなりました」
先に俺は謝罪を口にすると、
「…ヴァルダさん、大丈夫だったんですか?」
リーゼロッテ先生がソファーから立って俺にそう聞いてくる。
彼女の言葉に俺は苦笑しつつ、
「まぁ、一応は大丈夫ですね。賢者の思惑は何とか阻止出来ました。レヴィアタンは無事ですよ」
そう答えてから、
「賢者にも多少のダメージを与える事が出来ました。少しの間ですけど時間を稼…」
「賢者ルブレオと戦ったのですかッ!?」
状況説明をしようとした瞬間、リーゼロッテ先生が俺の言葉を遮ってそんな事を言ってくる。
彼女の言葉に気圧されると、リーゼロッテ先生のご両親とレナーテさんも驚愕した表情を俺に向けてきている。
室内の様子に俺は一度深呼吸をしてから、
「そうですね、戦闘しました。俺と互角、もしくは魔法においては賢者の方が上でしょうけど、何とか撃退する事が出来ましたよ。やはり賢者と呼ばれるだけはありますね、魔法の腕だけ凄まじいとしか言えませんね」
俺はリーゼロッテ先生の問いにそう答えると、
「まさか、賢者ルブレオと互角に戦うなど…」
「…リーゼロッテとレナーテさんの言う通り、私達では推し量れない御人の様ですね」
「まさか先生が賢者ルブレオ様と…。しかも撃退…。やはり…」
驚くリーゼロッテ先生のお父さん。
驚きと共に、納得した様子のリーゼロッテ先生のお母さん。
そして、驚きつつも何か考え事をするレナーテさん。
三者三様の反応をする方達を見ていると、
「…私は賢者ルブレオがそこまでの力を有していた事の方に驚いています。最近は魔法の研究に力を入れていると噂で聞いたので、実力が少し鈍っていると思ったんですけど…。危険な目に合わせる様な事を言ってしまい、すみませんでした」
リーゼロッテ先生が俺にそう謝罪をしてくる。
彼女の言葉を聞き、
「いえいえ、リーゼロッテ先生が教えてくれなければ、俺はレヴィアタンさん達が襲われている場所に辿り着けなかったと思いますし、彼女達にもっと深刻な怪我を負ってしまう所でした。だから、リーゼロッテ先生が謝罪をする必要はありませんよ。むしろ、俺の方はお礼を言いたいです。ありがとうございました」
俺は感謝を口にする。
感謝の言葉を聞いたリーゼロッテ先生は、少しだけ安心した表情をして息を少しだけ深く吐くと、
「…はい。…では、話を改めましょう。ヴァルダさん、よろしくお願いします」
話を切り替えてくれる。
彼女の言葉に俺は一度頷くと、
「立ってする話では無い、座ってしようじゃないか」
リーゼロッテ先生のお父さんがそう言って、1人用のソファーに座る様に促してくる。
俺は軽く頭を下げてからソファーに座ると、リーゼロッテ先生も優雅に自身が先程まで座っていたソファーに座り直す。
皆の準備が出来た事を確認してから、俺は口を開いた。
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