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バフを出来る限り早く掛けていると、


「な、何だこれは…儂の知らない魔法だと…?そ、そんなものがまだあったとは…」


辺りの様子の変化と、自分が放っていた魔法を打ち消された事のショックの所為か、賢者である老人は年相応によろよろと弱弱しく辺りを見回している。

そして、


「なッ!は、這入って来るなぁッ!儂のッ!女神様への信仰に這入って来るなぁッ!」


賢者は魔法書の欠片(スクロール)の効果が効き始めてきた様で、片手で自身の頭を、もう片方の手で杖を強く握りしめて誰もいない虚空を叩き始める。

そんな様子を見ていると、左右の眼がギョロギョロと辺りを見回す様に何度も動く。

その様は、賢者の周りに俺には見えないナニかがそこにいる様に感じる。


「グゥオ゛ォォッッ!!ヤメロッ!儂の…女神様への信仰にぃぃ…」


今もなお精神攻撃を受けている賢者が誰かに向かってそんな事を言う。

すると、


「こ…こんなモノは魔法なんかでは無い…絶対に儂は認めないぞッ!」


おそらく、俺に言っているのであろう言葉を大声で言ってくる賢者。

しかし、先程までギョロギョロと動かし続けていた目は瞼をギュッと力強く閉じており、俺の位置を把握出来ていない所為で杖を俺から外れた方へと向けてくる。

そして、


「わ…我が故郷は安寧の地、魔の手は届かぬ理想郷。テレポートッ!」


二節詠唱をすると、またしても俺が知らない魔法を使用する。

魔法が発動した瞬間、苦しみ狂い始めていた賢者の姿が一瞬で消える。

魔法名からして、おそらくどこかに一瞬で移動したのだろう。

俺はそう思い気配察知スキルを使用するが、俺の索敵範囲に人の反応は無く、もしやレヴィさん達の事を追いかける為に移動したのかと考えて、俺は魔法の効果が切れるのを待ってから移動を開始する。

俺と賢者が破壊した地形は、まぁ今の所問題はないと思うので放置しよう。

そんな事を思いながら海岸までやって来ると、俺は今度は行き先が分かっているのでカルラを呼び出し、レヴィさん達が拠点にしている島へと向かう。

すると、空から見覚えのあるレヴィさんの巨躯が見えた。

どうやら先程の亜人族の女性を連れて、島に戻ろうとしているのだろう。

俺はそう思い、カルラに海にいるレヴィさんに近づいてくれる様にお願いをすると、カルラは俺の指示に従って高度を落としてくれる。

更にレヴィさんに近づくと、彼女の背中に賢者に襲われていた亜人族の女性が乗っかっていた。

その光景に、彼女を溺れさせない為に泳いでいるんだなと思いながらレヴィさんに一度視線を向ける。

レヴィさんに向けていた視線をもう一度亜人族の女性に視線を送り戻すと、俺はある事に気がついた。

それは、彼女の身長が長い事だ。

上半身は普通の、純粋に妖艶な綺麗な女性に見える。

来ている服が露出度が高いのと破けてしまっている故に、賢者に襲われた時の怪我であろう生傷が目に入る。

そして俺から見える下半身は、足があらずに尻尾が見えた。

彼女のその姿に俺は、


「ラミア…いや、ナーガか?」


そんな呟きをする。

純粋な身長なら俺よりも背が高いだろうと思う程、彼女の下半身は鱗が目立つ蛇の尻尾をしている。

俺がそんな事を思っていると近づいてきた俺達に気がついたのか、レヴィさんの背中に乗っている女性が俺とカルラに驚いた表情を向けてくる。

彼女の俺への認識は、おそらく悪い方では無いと思う。

賢者から逃げる時間稼ぎをしたんだ。

ただ、それが畏怖になるのだけは避けたい。

俺はそう思い、軽く笑みを浮かべて手をそっと上げて、


「大丈夫ですか?見た感じでは大きな怪我はされていない様に見えますが…」


ひとまずそう挨拶をする。

俺の言葉を聞いた女性は、


「あ、あぁ…。先程は助かった、感謝する」


少し戸惑った声で俺の言葉に返答をしてくる。

威厳がある声、表情に少し疲れが見えるな。


「レヴィさんっ!背中に乗っても良いですかっ!?」


俺はレヴィさんに大きな声でそう質問をすると、


「カマワナイ」


彼女は背中に乗る事を許可してくれる。

彼女の言葉にお礼を返すと、俺はカルラの背中からレヴィさんの背中に飛び移る。

それからカルラに感謝の言葉を伝えた後、彼女には塔へと戻って貰い、俺は本の中の世界(ワールドブック)を閉じてから、アイテム袋から回復薬を取り出し、


「どうぞ、これを飲んで下さい。疲れなどはあまり取れないと思いますけど、体の怪我などは治す事が出来るので」


種族は分からないが、ラミアなどの蛇系統の女性に回復薬を差し出してそう伝える。

俺の言葉を聞き、差し出されている回復薬を少し警戒した様子で受け取ると、少しして意を決した様に回復薬を呷った。

回復薬を飲み切ると、破れた服から覗き見える生傷が消え、生傷があっても綺麗な肌が更に綺麗な肌へと変化する。


「良かった。見た感じでは大きな怪我はない様子ですが、何か体に異常を感じたら言って下さい。俺の出来る範囲ではありますけど、全力を尽くしますので」


彼女の傷が治るのを見終えた俺は、レヴィさんの背中に片膝を付けて女性と目線を合わせてそう伝える。

俺の言葉を聞いた女性は、警戒している様子は見せないが俺とどう接すれば良いのか悩んでいるのか、俺の事を見て少しだけ困った様な表情をしている。

流石に疲れているであろう女性に、精神的な余裕を失わせるのも申し訳無い。

女性を見てそう思うと、俺はもう一度立ち上がってレヴィさんの頭部の方へと移動して、


「レヴィさんは体は大丈夫ですか?先程チラッと見た感じでは、怪我らしきモノは見えなかったんですけど…」


そう声を掛けると、


「モンダイナイ。ワタシハアマリタタカッテイナイ」


レヴィさんが俺の問いにそう答えてくれる。

彼女の言葉を聞き、賢者がレヴィさんを狙って行動していた訳では無いのかと考える。

もしレヴィさんだけを狙ったのなら、それこそテンダールから海に出た方が早い。

賢者の魔法なら、海の上でもレヴィさんと戦う事はおそらく出来たと思う。

しかし実際の賢者は、テンダールに行かずに全く違う海岸線にいた。

しかもそれも、レヴィさんの背中に乗っている女性を襲っている様に見えた。

そこにレヴィさんが助けに入った感じだろう。

そうなると、賢者の目的はレヴィさんだけでは無いのかもしれない…。

俺がそう考えている内に、先に島へと向かっていたデレシアさんとその後ろを航海している船が見えた。


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