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後ろから感謝するという声を聞きながら、俺は賢者に向かって走り出す。

冷静に考えると、MPを過剰に使っての中級魔法で賢者の上級魔法と対等レベルか。

これなら、1つでも良いから賢者を圧倒する上級魔法を取得しておくべきだったな…。

賢者の魔法で俺が大したダメージを受ける事も無いが、俺の中級魔法でも賢者を倒す事は出来ないだろう。

クラスを召喚士(サモナー)に変更して、魔法特化の者を呼べば話は済むのだが…。

賢者、皇帝である閃光に近しい人物にはなるべく手の内を見せたくはない。

あと、単純にこのジジイに塔の者を出来るだけ会わせたくは無い。

俺がそう思っていると、俺が出現させた土で作った槌にヒビが入り、


「小癪な魔法ばかり使いおって…。中級魔法しか使えない出来損ないが、賢者である儂に盾突く事すらおこがましいッ!」


イラついている様子の声と同時に、槌が破壊されて炎が吹き荒れる。

…おそらく賢者は火魔法を得意としている様子だ。

しかしそれ以外にも雷魔法なども使用しているし、おそらく賢者と呼ばれるだけの魔法を習得しているのだろう。


「チッ…このままではレヴィアタンどころか、モンスターの親玉すら片付けられないか…」


俺がそう分析をしていると、槌が壊された事で周囲を舞っていた土埃が少し晴れ、俺が頑丈に作った土の壁を恨めしそうに見ながら賢者がそう言っている。

そんな賢者に、


「そんな真似はさせないっ!アイスバレット!」


俺は壁から視線を遠ざける為に、あえて小出しで魔法を使用する。

そんな俺の攻撃がイラついている賢者には更に鬱陶しいのだろう。


「邪魔だッ!煉獄の炎よ、インフェルノッ!」


俺の出した氷の塊を消し飛ばす為だけに、上級魔法を使い始める。

このままMP切れを狙うか?

いや、賢者のMPが俺の想像以上であった場合、長時間の戦闘になる可能性も十分に考えられる。

ただでさえ、今俺と賢者が戦っている場所の地形が戦闘によって崩れてきている。

同じ場所での戦闘は避けたい。

燃え盛る炎が俺と、俺が作り出した土の壁に迫りくる。


「ウォーターランスッ!」


俺は水の槍を作り出し、それを賢者が放った炎に衝突させる!


「やはり中級…しかし儂の上級魔法と互角に張り合える実力はある…か」


俺の魔法を見た賢者がそう言ってくると、


「惜しい人材だ、中級程度の魔法しか扱えないのは目を瞑るとしても、無詠唱での魔法発動速度、何度も扱えるスタミナ、モンスターなんぞの仲間でなければ、儂の元で励む事を許してやれたものを…」


更にそんな事を言ってくる賢者…。

彼のその言葉に、


「…悪いが、俺はあんたの元で魔法の練習なんかするつもりは無いし、俺は第一これ以上魔法の技術が成長する事は無いからな」


俺がそう言い返すと、賢者はヤレヤレと言った様子で首を左右にゆっくりと振るい、


「全く嘆かわしいものよ。女神様への信仰心が足りておらん…」


そんな事を言うと、改めて賢者は俺に向かって長い杖を向けてくると、


「煉獄の炎よ、神を冒涜し信仰を無くした者に鉄槌を。カース・アトーンメント・インフェルノ!」


二節詠唱をし、俺の知らない魔法を発動してきた。

今までのただの猛火では無く、白と黒、そして紅蓮が互いの領土を増やす様に、グニャグニャと歪み変わりながら、その異質な炎は俺に迫って来る。

賢者のそんな魔法に俺は、


「流石にマズいぞこれはッ!ファイアウォールッ!ウォーターウォールッ!アイスウォールッ!ウィンドウォールッ!サンダーウォールッ!アースウォールッ!」


流石に見た事も無ければ、効果も分からない炎に危機感を感じ、俺は出来る限りの属性での壁を作る。

そして、賢者の炎と俺が何層にも作り上げた壁が衝突すると、衝撃波と同時に壁が無い場所から炎が通り抜けて俺の斜め後方を燃やし尽くす。

しかし炎は止む事はせずに、俺の作った壁と未だに衝突している。

有効打にならない攻撃、もう俺のMPが切れるまで魔法を連射してやろうか?

数打てば当たるかもしれないしな…。

俺がそんな事を考えていると、


「グゥ…これでも討ち果たせないのか…。儂の信仰心が足りないのかッ!神よッ!神の信仰が足りない儂をお許しくだされッ!」


賢者がいきなり、魔法を放ちながらそんな絶叫をする。

これまた、随分と狂っている様に感じるな。

…俺も亜人族に対して狂っているという点では、同類かもしれないが…。

俺がそんな事を考えていると、空から微かではあるが光が差し込んで賢者を照らす。

その瞬間、


「オォ…女神様ッこれで目の前の背徳者を殺す事が出来るッ!」


賢者は発狂した様に笑い始めると、俺の魔法に衝突していた奴の炎が勢いを増した!


「ちょっ!マジか!?」


そんないきなりのバフに、俺は素で反応してしまうと、


「ファイアバレットッ!ウォーターバレットッ!アイスバレットッ!ウィンドカッターッ!ライトニングサークルッ!アースバレットッ!」


中級魔法の手数が多い魔法を連続で使用して賢者に放つ。

しかし、その全てが賢者が放つ炎に打ち消されてしまい、俺は余裕を持っていられなくなる。

マズいマズいッ!

俺の魔法ではもう賢者と互角とは言えない程、向こうの魔法の威力が上がってきている。

…これだけは使いたくなかった、予備も多く持っている訳でも無いし、これを最大限使える場所は絶対にここでは無い。

だが、そうも言っていられる状況では無くなった。

俺はそう思いながらアイテム袋から魔法書の欠片(スクロール)を取り出すと、一瞬だけ使うのを躊躇う。

しかしその躊躇いがレヴィさん達を危険な目に合わせてしまうと考えた瞬間、


魔法書の欠片(スクロール)を使用、ネクロノミコンを発動」


俺は魔法書の欠片(スクロール)を使用する。

その瞬間、辺りがまるでそうであったかの様に静寂になり、空は深淵に染まった。

賢者が放っていた炎もその闇に浸食されると、一瞬でそれは影も形も無くなる。

突然の自身の魔法が消滅した事に賢者が驚愕していると、俺が仕掛けた今の状況に困惑し辺りを見回している。

それを確認すると、


「悪いが、あんたの相手は俺には荷が重い様だ。故に、他のモノを相手して貰う」


俺はそう言って、自身の耐性を底上げする魔法でバフを掛け始めた。


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