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レナーテさんと共にリーゼロッテ先生の屋敷に入ると、おそらく先程すれ違った怪しい男性を見送っていたであろうリーゼロッテ先生と、その斜め後ろに控えている執事の男性が屋敷に突然入った俺達を見て、呆然とした様子をしていた。

そう言えば、ノック的なモノをしていなかった。

無作法であった事を先に謝罪しなければ…。

俺がそう思っていると、


「ヴァルダ先生、今屋敷から出てきた男性とすれ違いましたよね?」


俺が謝罪をする前にリーゼロッテ先生が先にそんな質問をしてきた。

彼女の言葉を聞き、


「え、えぇ…すれ違いましたよ。何やら気になる単語を吐いていましたけど…」


俺はとりあえずリーゼロッテ先生の問いに答える。

すると、俺の言葉を聞いたリーゼロッテ先生が真剣な表情で、


「ヴァルダ先生、申し訳ないのですが今すぐに港街のテンダールに向かった方が良いです!」


突然そんな事を言ってきた。

彼女の言葉を聞いた俺は、屋敷の扉がある後ろを気にしつつ、


「な、何が起きているのか簡単に説明をお願いしても良いですか?」


俺がそうお願いをすると、彼女は頷いて、


「今屋敷から出て行ってヴァルダ先生達とすれ違ったのは、賢者ルブレオの使者です。テンダール周辺の海に生息しているレヴィアタンの討伐が目的の様です!」


リーゼロッテ先生が簡潔に説明をしてくれる。

それを聞いた瞬間、俺は一瞬で後ろへと振り返って屋敷の玄関扉を開けると同時に、


「レナーテさんッ!今までの事をリーゼロッテ先生に説明をお願いしますッ!」

「せ、先生ッ!?」


俺はレナーテさんに説明をお願いし、俺は戸惑った様なレナーテさんの声を無視してシュタール公国の街を人並みの速さで走り抜ける。

先程の男を見つけるよりも、賢者がいる、もしくは向かっているであろう港街テンダールへと向かう事を優先した方が良いと感じる。

賢者がどういった人物かも分からない、レヴィさんがそう簡単に倒される訳ない。

しかし自信がなければ、レヴィさんを倒そうという計画になる訳が無い。

賢者がどういった理由でレヴィさんを狙ったのかは知らないが、それでもレヴィさんがいなくなる事は反乱に置いても、亜人族の存続の為にも必要不可欠な存在である。

彼女に、絶対傷を付ける訳にはいかない!

シュタール公国を走り抜けた俺は、人がいない丘陵までやって来ると、


召喚(サモン)、シル」


俺は自分の身などを関係無くただ速さを求める事だけを優先する。


「ふわぁぁ…どうしましたヴァルダ様~?」


黒い靄が出現し、そこからシルが欠伸をしながら姿を現す。

そんな彼女に、


「シル、今すぐに向こうの方角に俺を吹き飛ばしてくれ」


俺はシルの質問にテンダールがある方角を指差しながらそうお願いをする。

その瞬間、


「いきますねぇ~!」


シルは特に何も気にした様子も無く、俺の周りに風が巻き起こると、


「どぉぅわッッ!!」


体が一気にテンダールの方向に向かって吹き飛ばされた!

強制的に体が吹き飛ばされる感覚は慣れていない所為で、空中で体勢を整えるのに少しだけ苦労する。


「それでヴァルダ様~?どうしてそんなにも急いでいるんですか~?」


飛んでいると言うよりも、吹き飛ばされている俺と並走する様に優雅に風に乗っているシルにそんな質問をされる。


「問題が…発生してな。助ける必要は無いと思うんだが…、念のために」


俺が息をするのに少し手間取りながらシルの質問にそう答えると、


「じゃあ~、もっと速くしないと~」

「え?」


瞬間、もう息をするだけで精一杯になる程のスピードになり、俺はそれから声も出せずに心の中で絶叫をした。

シルの予想以上のスピードにテンダールが見えて来て、俺は何とか風圧で動かしにくい腕を動かしてテンダールを指差すと、


「あそこで良いんですね~?じゃあ降りますよ~」


シルはそう言って徐々に高度を下していくのだが…。

スピードが落ちてないんだが?

このままテンダールに突っ込んだら、大惨事になるのではないか?

俺がそう思っていると、一気に高度が下がって地面に激突する!

しかしその衝撃はシルの風が俺の体を纏っているお陰で、ダメージを受ける事は無かった。

俺には…。

そうして少しずつスピードが落ち着くと、


「この辺で大丈夫ですか~?」


シルがそう聞いてきた。


「あ、あぁ…。ありがとうシル。とても助かった」


俺は衝撃によって地面が抉れてしまっている光景を見ながら、シルにお礼を言った後塔へと戻って貰う。

さて、空から見たテンダールとその周辺の海にはまだ変化は見られなかったが、今賢者はどう動いているのか詮索しないといけないな。

まずはテンダールに行かないと。

俺はそう思うと、テンダールに向かって走り出す。

テンダールを目指しながら走りつつ、気配察知スキルを発動させて周囲を警戒する。

しかし周辺に人の気配は無く、俺はすぐにテンダールに辿り着いてしまう。

テンダールに辿り着いた俺は、周囲に賢者やそれに近い人物がいないか慎重に見回してみる。

しかし賢者の様な人物は見当たらず、テンダールに辿り着いたのは良いけど情報が足りな過ぎている…。

…賢者を探すよりも、レヴィさんを探した方が早いかもしれないな。

俺はそう思い、


「…船…いやもっと海でも自由が効く者の方が良いな」


独り言を呟き、俺は人がいない茂みの方に移動をする。

海、水…。

ヨルムンガンドであるヨルクは体が大き過ぎるからな。

目立ち過ぎるのはマズい…と思う。

…となると、ウンディーネの方が良いだろう。


召喚(サモン)、ルネリーエ」


塔に住んでいるウンディーネを、ルネリーエを呼び出すと、


「…お呼びでしょうかヴァルダ?」


黒い靄から、水を纏ったウンディーネであるルネリーエが現れる。


「すまないルネリーエ。少し手伝って貰いたい事があるんだが…」


俺がそう言うと、


「…構いませんよ。今までシルフやサラマンダーを()()呼んでいたヴァルダ?」


ルネリーエが、含みのある言い方をしてくる。


「それについても、申し訳無い。ただ、ルネリーエに頼る機会とかが無かっただけなんだ…」


俺がそう謝罪をすると、


「…では、これからは呼んで下さる機会を増やしてくれますか?」


ルネリーエが俺にそう質問をしてくる。

彼女のその言葉に、


「善処します」


頷きながらそう答えた。


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