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俺は少しガッツリとしたモノが食べたく、生姜焼きを選んだ。

セシリアは俺なら一口で食べてしまう、小さなサンドイッチを数種類。

サールとソルは、ミートソースのパスタとハンバーグを半分に分けて交換をしている。

ヴィアンはオムライスを食べつつ、サールとソルとの食べさせ合いに混ざってオムライスを分けたり、パスタとハンバーグを少しずつ食べさせられていた。

そしてレナーテさんは、俺と同じ生姜焼きとご飯の定食。

おそらく、一番食べた事が無いモノを選んだに違いない。

ハンバーグは無いにしても、肉の焼いたモノだとは理解している感じだったし、パスタは見た目も匂いも似ている物が帝都の食事処で見かけた事がある。

ヴィアンのオムライスを気にしている様子ではあったが、流石に自身よりも年下の女の子に分けて欲しいとは言えないのだろう。

気にしつつも、俺が食べている様子を見ながらフォークでご飯と生姜焼きを食べている。

そして、


「先生は、この様な美味しい食事を毎日食べているのですかッ!」


静かに食べているなと思ったら、しっかりと口の中の物を飲み込んでから勢いよく俺にそう言ってきた。

どうやら、彼女の舌に合った様だ。

そんな興奮している様子の彼女に、


「毎日とまでは言いませんが、一応塔で食事をする様にはしていますね。単純に帝都の食事処で食事をする金銭と味が釣り合っていないのもありますし、食材を買って塔に持ち込んだ方が美味しい物が出て来ますから。それに、ご飯を食べる時間もある時と無い時がありますからね」


俺は苦笑しながらそう答える。

俺の言葉を聞いたレナーテさんは、もう一度タレの掛かった生姜焼きを食べた後飲み込み、すぐにその後にご飯を咀嚼する。

そして、


「ズルいです…」


悔しそうにそう言って、パクパクと食事を平らげていく。

そんな様子をサール達は笑顔で見守りながら自分達も食事を進め、俺はセシリアがそれだけで足りているのか心配しながら食事を再開する。

俺の問いに、セシリアは可愛らしく大丈夫だと返事をし、テーブルを囲っている皆の食事が終わりそうになったタイミングで、お茶を取りに行ってくれた。

そうしてセシリアが人数分のお茶を持って来た所で、


「先生は、私の想像していた遥か上の異常な存在だったのですね」


レナーテさんがそんな事を言ってくる。


「異常って…。まぁ、大体の人達がここへ来ると驚いているのは理解していますが、そこまで異常では無いつもりなんですが…」


俺は彼女の言葉に苦笑しながらそう答えると、


「これだけ大規模の異次元の創造、無詠唱による魔法の発動、それに私達に配った魔法の書物、使役しているグリフォンに精霊、その他にも様々な種族の人がここにいますよね?それで異常では無いと言うのなら、私達はその辺の草木と一緒です。ただそこに生えている。必要が無ければ、刈られてしまうだけの存在。先生には、私達がそう見えているのではないですか?」


レナーテさんが、悲しそうな表情で俺にそう言ってきた。

彼女の言葉を聞き、草木と一緒だと言った彼女の言葉に少しだけ同意してしまっている自分がいる。

確かに、俺が彼女達にしていた事は教育というモノでは無かったかもしれない。

ただ必要だから、育て成長させていく。

もしも邪魔だと思ってしまったら、彼女達を刈る側になっていたのだ。

しかし…。


「そうですね。その様な考えになってしまう事は否定できません。確かに俺はレナーテさんを含め、他の人達とは少し違う。改めましょう、レナーテさん達と俺や家族、仲間達は一線を画している」


俺の発言で、表情を曇らせるレナーテさん。


「でも、それは決して哀れみとかそういった類の感情ではありません。俺と同じ考えを持つ同士に出会い、俺も力が足りない、俺の目の届かない場所が出来てしまうと思いました。そんな俺の力不足を助けてくれる対等な存在。それがレナーテさん達なんです。俺がいなくても、亜人族を助けてくれる貴方達に、俺は傷付いて欲しくないし、絶対に死んで欲しくない。故に、力不足である俺でも出来る程度の助力をしているだけなんです。それは、確かに一時とはいえレナーテさん達の教育とは言えないかもしれない。それについては、弁明するつもりはありません」


俺の中で、彼女達が自分にとって大切で、重要な存在である事を吐露していく。

その言葉に嘘は無く、自分に対しても説明している感じになる。

言葉を言い続けていく内に、納得している。

ただの草木では無い、もう十分に彼女達は俺の対等な仲間だ。

彼女達が悩み苦しんでいるのなら、俺は力を行使して全力で助けたいと思える程、俺は彼女達を信頼している。

俺がそう思っていると、


「難しい話つまんない!」

「サールっ!今は静かにしないといけないのっ!」

「ふ、2人共声が…」


一緒にテーブルを囲っていたサールの言葉に、ソルとヴィアンが注意の言葉を投げる。

その言葉に、俺とレナーテさんは子供がいる場所で、そして楽しい食事の場で子供達に聞かせるべきでは無い会話をしていた事に気づく。

そして、


「…すみません先生」


レナーテさんが俺に謝罪をしてくる。

彼女の言葉に、


「いや、俺の方こその申し訳無かった。レナーテさんにそう思わせてしまう言動をしていたのだろうし、言葉が足らなかったのだと思う。ただ、俺の中でレナーテさん達は十分に信頼をしていて、もう俺の秘密を明かしている。それが、俺が今出来る信頼をしている証拠になると思う。もし、これからもレナーテさんが気になる事があったら、言って下さい。出来る限り、誠心誠意答えるつもりですから。ただ、言えない事もあるのでそれだけは許して貰えると幸いです」


俺も謝罪の言葉を言い、これからはもう少し彼女とも対等で良好な関係を築いていきたい事を伝える。

その言葉にレナーテさんは納得をした表情をし、


「では、この料理はどういったものなんですか?後、出来れば父と母、クラスの皆にも食べさせてあげたいのですが、可能ですか?」


そんな可愛らしい我儘を言ってきた。


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