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部屋に帰って来て突然カルラの姿を見た俺は、とりあえず可愛いと思ったのだが…。


「…ぇ?これ見ても大丈夫?失礼な事してない?女性の寝てる姿だよ?」


あまりの状況に混乱し、俺は小さな声で自分自身にも分からない質問を発しながらキョロキョロと視線を彷徨わせる。

先程まで学院長に対する怒りで心が荒ぶりつつ、どこか冷静な自分がいたのだが…。

…今の状況の方が、緊張とか心配とかで挙動不審になってしまっている。

落ち着け俺、ひとまず今カルラが俺の自室の床で寝てしまっているのは分かった。

とりあえず、カルラには申し訳無いが一度起こしてベッドに移動してもらおう。

硬い床で寝ていたら、体が凝ってしまうし冷たいだろうからそれこそ体に良くない。

俺はそう思うと、


「カ、カルラ?」


寝ているカルラに近づいて、前脚の付け根辺りに手を添えてゆっくりと彼女の体を揺らす。

すると、


「ピィ…ピィ…ピ…ィ…!」


微かに聞こえていた寝息が、俺が体を揺らした事で不規則になっていき、ゆっくりとカルラが目を覚ました。


「寝ている所すまないなカルラ。どうして俺の部屋で寝ているかはまた後で聞く。とりあえず、床は冷たいからベッドに移動しなさい」


俺がうるさく無い様に優しい声で囁く感じで声を掛けると、


「ィ…ピピィィ」


カルラが首を振りながら俺の提案を否定してきた。

…俺のベッドで寝たくないという意味なら、今すぐ部屋の窓から身を投げてしまうんだが…。

カルラの否定の態度にショックを受けていると、


「ピィ~」


カルラが片翼を広げて、少しだけ体を動かす。

甘えた様な声に、もしかしてカルラは俺に謝罪とまではいかないだろうが、冷たくした態度を反省しているのでは無いだろうか?

…カルラが冷たい反応をしたのは、レナーテさんが俺にくっ付いたからだったが、別にそれについてはカルラが謝る様な事では無い。

たまたま運が悪かっただけで、もっと時間とかがあれば良かったのにと思う程度の認識だったのだが、俺の思っている以上にカルラは重く考えてしまった様だ。


「怒っていないし、カルラがそんなに気にする事では無いぞ?」


俺が微笑みながらカルラにそう伝えると、カルラが何度も翼をゆっくりと動かす。

まるで、手招いている様に。

俺はそう思い、


「良いのか?」


一度だけカルラに大丈夫なのかと質問をすると、カルラは優しい声で一鳴きした。

彼女の返事を聞き、俺は横たわっているカルラの翼の下に体を潜り込ませると、上に広げていた翼がゆっくりと俺の体を覆う。

そのままカルラの翼が脱力していくのが肌を通して伝わり、


「もしかして、一緒に寝たいのか?」


俺はカルラにそう質問をする。

カルラは俺の問いを聞いて、


「ピィ~~ィ」


頷く様に首を動かして、すぐに先程まで寝ていた体勢に戻る。

カルラが仲直り?の行動をしてくれているんだ、無下にする事は出来ない。

俺はそう思い、


「分かった、一緒に寝るか」


カルラにそう伝えてその場で床の上に横たわると、左前足を俺の胸元に置いてくる。

そして布団の様に翼が俺の体を暖かく覆い、右前足は俺の肩辺りに添える様にくっ付いている。

天然羽毛布団だな。

俺はそんな事を思いながら、静かに苦笑して目を閉じて、


「おやすみ、カルラ」


既に寝始めているカルラにそう言って、俺は睡魔に身を任せた。






「な…ッッ!ヴァルダ様ッ!カルラッ!いったい何をしているのです?」


…ぉお?


「ぐ…っ…流石に体が凝るな……。あぁ、おはようシェーファ」


突然名前を呼ばれた事で目が覚めた俺は、体を起こしつつ胸元に置かれていたカルラの前足を動かして退かして体を起き上がらせる。

床で寝ていた事で体が凝ってしまい、体からゴキゴキといった音が聞こえてくる事に苦笑していると、シェーファが部屋の扉の前でこちらを見下ろして来ているのに気がついた。

部屋の扉の前でこちらを冷たい凍った笑顔を向けてくるシェーファに対して、ひとまず挨拶をしておく。

おそらく、今のこの状態に言いたい事があるのだろう。

笑顔ではあるが、その笑顔が彼女の内なる静かな怒りを表しているのが感じられる。

俺はそう察すると、


「ま、待ってくれシェーファ。これはカルラと俺が仲直りをする為にした事で、特に後ろめたい事とかがあった訳では無い。普通に添い寝をしていただけなんだっ!」


シェーファの誤解を解く為に俺は事情を説明し始める。

すると、


「…そうですか。分かりました」


こちらに向けてくる笑顔をそのままに、歩いているのか分からない程、魔法か何かで空中に浮いているのではないかと思わせる程、シェーファはスーッと俺達の元まで移動をしてくる…。

そして、


「カルラ、起きなさい」


俺の横で膝を付いて腰を落とすと、カルラの体を揺すって彼女を起こそうとする。


「グゥワッ!?………ピィ?」


シェーファに起こされて目覚めたカルラは、ビクッと体を震わせた後目覚め、前脚の下に俺がいない事に疑問を感じているカルラが不思議そうな声を出す。

…可愛いなカルラは。


「………カルラ、ヴァルダ様はもうお目覚めです。貴女も寝直すのなら、自分の家に行って寝直しなさい」


俺がカルラの様子に素直の感想を抱いていると、シェーファがカルラにそう優しい声で進言する。

おそらく寝ぼけているだろうカルラは、


「ピィ…」


虚ろな目で気が抜けている声で返事をすると、体を動かして起き上がり、前脚、後ろ脚と順に伸ばしてから俺の部屋を静かに出て行った。

そして、部屋に残された俺とシェーファ。


「「………」」


しかし、残された結果俺はカルラが出て行った扉を眺め、シェーファも一度も変化しない笑顔でカルラの出て行った扉を見つめていた。

この静かな部屋で、とても緊張しているのは俺だけなんだろうな…。

俺がそう思っていると、


「…ヴァルダ様」

「は、はいっ!」


シェーファに声を掛けられて、俺は突然声を掛けられた事に驚いて一応皆の主としては情けない返事をしてしまった。

俺がそう思っていると、


「まだ朝早いです。ヴァルダ様、寝るのならベッドで寝た方がよろしいですよ?」


シェーファが俺にそう言ってきた。

…部屋の窓から見える空の様子的に、おそらくそんなに朝早くでは無いだろう。

しかし、


「………どうぞ?」


このシェーファの気迫に抗う事は出来ない。

俺は大人しく、シェーファの言う通りにベッドに移動した。


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