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声がする方向に向かって走っていると、当然声がどんどん大きくなっていくのが分かり、それが怒声だというのも理解出来た。

校舎の影に隠れながら移動をし、声がする方向を覗き込むと、


「一体どういう事だッ!誰が侵入を許したッ!」

「申し訳ありませんッ!」

「し、しかし人の気配など…」

「言い訳を聞きたい訳では無いッ!さっさと他の兵を起こし、警備を厳重にするのだッ!」


見張りをしていた警備の兵が、馬の上に乗っている男性に大声で叱咤されている。

見ると男性の後ろにもう2人、準備も満足に出来なかったであろう剣と胸当てしか装備をしていない人達が見える。


「良いかッ!今から学院から外に出ようとするモノは即座に殺しても構わんッ!あの様な薄汚い獣など、見繕えばいくらでも補充が効くッ!主人に盾突いた事を、死んで後悔させてやる!」


馬上から声を荒げる男性がそんな指示を出す。

帝都、皇帝陛下かは分からないが国の上層部からの命令に、僅かな違反をしつつもアーデさん達を処分する気でいる事が分かる。

…ふむ、アーデさん達は既に俺の手で塔へと送っている。

彼女達を救い出した事で、ここにもう用は無かったんだが…。

…彼女達がいなくなった事で、男性は補充が効くと言った。

つまり、アーデさん達が安全になった事で、他の亜人族の人達が彼女達と同じ様な目に合う事になるという事だ。

それは、俺がそのまだ見ぬ人達がアーデさん達と同じ目に合う事に手を貸した事になるな…。

…そんな事、俺が許す訳が無い。

丁度まだ夜は開けていない。

警備の兵が仲間を呼ぶまでの時間が分からないが、馬を走らせてもまだ少しの間なら大丈夫だろう。

俺がそう思っていると、


「貴様達はここで見張りを継続していろッ!ネズミ一匹、獣一匹も通すんじゃないぞッ!」

「ハッ!」


男性が指示を出すと、警備の兵士が短く返事をする。

そして警備の返事と同時に、男性は後ろにいた2人を連れて馬を走らせて旧校舎の方へと向かって行く。

…なるほど、わざわざ学院長が出てきたか。

校舎の影に隠れていたが、男性達が近くを通った時に顔を見る事が出来た。

そして自分達から人が少ない状況にしてくれた。

都合が良いな。

折角身を隠しながら逃げようと思っていたけど、もう一回彼らを追って旧校舎へと戻らないと行けなくなった。

しかしそれで少しでも被害が亜人族の人達に及ばなければそれで良い。

俺はそう思うと、来た道を戻って馬を追いかけ始める。

流石に一気に距離を詰めるのはマズいと思い、少しだけ走るスピードを落としながら男達を追う。

やがて旧校舎へと辿り着くと、


「どちらかで構わん。1人はここで逃げ出す者がいないか見張っていろ。もう1人は私に付いて来い」


流石に怒鳴りはしないが、言葉の怒りが孕んでいる様子でそう指示を出す。

それに従い、1人は男性と共に旧校舎へと、残った男は剣の柄に手を添えて辺りを見回し始める。

更に人を分けてくれると、こちらとしては本当にありがたい。

俺はそう思うと、


「…クラスチェンジ・騎士(ナイト)


スキルを使用してクラスを騎士(ナイト)にし、一気に物陰から男へと距離を詰める!


「な…ッ!」


驚いた声と同時に、おそらく突然現れた俺に何者かを問おうとしたのだろうが、それよりも早く俺が男の口を手で塞ぎ、飛び出した勢いでそのまま男を地面へと押し倒すと、俺は男の装備が覆っていない腹部へと拳を叩き込む。

鈍い音が聞こえ、手が男の腹にめり込んでいく。

即座に男は意識を失い、俺は殺していない事を確認する為に口元に手を差し出す。

僅かに手に息が当たるのが確認する事が出来、ひとまず一安心する。

彼らは学院長から指示をされている人達だ、アーデさん達の様に亜人族をまたここへ連れて来る権限などは持っていない。

殺す必要や、痛めつける必要はないと今は判断出来る。

ただ、仕事をしているに過ぎない。


「…さてと」


小さな声でそう呟き、旧校舎へ向き直る。

おそらくそろそろ、教室内にアーデさん達がいない事に気が…。


「クソがァァァッッ!!」


俺が考えていると、丁度タイミングよく旧校舎内から怒号が聞こえてきた。

どうやら、アーデさん達がいない事が見て分かった様だな。

あと少しで男達が出てくるだろう。

…夜遅いし見られても一瞬で意識を刈り取ったから、この人は俺の事をあまりハッキリとは覚えていないだろうけど、これから対峙するつもりの人とは少し話をしたいからな。

そうなると、顔を隠しておいた方が良いのだろうか…。

さっきの男と同様に、物陰に隠れて出て来た所を奇襲するのが一番手軽だよな。

奇襲された人も、暗闇で少しだけ目立つこの白い髪の毛の事は記憶に残るとしても、顔までは一瞬で覚える事は出来ないと思う。

そうだな、やはりこの手で行こう。

俺はそう思考すると、苛立ちを隠そうともしていない大声が旧校舎から俺のいる場所へと徐々に近づいて来るのが分かり、俺はすぐに近くの木の後ろに隠れる。

この位置なら旧校舎から出てきた人達を盗み見する事が出来るし、奇襲をする際もすぐに動く事が出来る。

おそらく先に学院長が先に出て来て、その後ろを警護する形で男が出てくるだろう。

その際に僅かだろうが距離があるはずだ、そこを上手く奇襲出来れば良い。

そうして暗闇の中で近づいて来る怒号に耳を傾けていると、


「どこへ行ったんだあの獣共はッ!」

「…人数が多いなら、それだけ見つかりやすいと思いますが…」

「そんな事は分かっているッ!奴隷共との契約が切れて、お前達2人を連れて駆けつけたのだ!馬を走らせてそれ程時間も経過していない。まだそう遠くへは行っていない筈だッ!探し出せッ!」


旧校舎からドタ…ドタ…と大きな足音を立てて学院長と男が出てくる。

見ると、右足をやや引きずっている様子に、どうやら旧校舎の廊下をドタドタと勢いよく力強く歩いた所為で、踏み抜いてしまったのだろう。

それで足を痛めたという事だろうな。

俺がそう思っていると、学院長と男の間に僅かではあるが距離が出来た。

その隙を見逃さず、俺は木の影から飛び出して男に突っ込んだ。


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