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479頁

黒い靄を通り、塔に戻って来た俺は後に続く女性達を待つ。

俺が塔に来てから一拍置いて、アーデさんが黒い靄から出てくる。

彼女に続いて、ラーラさんがやって来て女性達が次々とやって来る。

そして最後に、レナーテさんが黒い靄を抜けてきた。

これで旧校舎にいた人達は全員だよな。

俺がそう思っていると、


「「………」」


塔に来た人達が唖然とした表情で、塔を眺めている。

レナーテさんすら、想像していた家とは違う光景に目を見開いて辺りを見回している。

…正直、この塔に初めて来てこの光景を驚いている人達の反応が、俺は好きだったりする。

寝る間も惜しんで築いたこの塔は、俺の人生でも自慢出来る唯一のモノと言って良い。

それを、これ程まで素直に驚いて感心してくれている光景が、気に入っている。

俺がそう思って彼女達の様子を窺っていると、


「おかえりなさいませ、ヴァルダ様」

「「「ッッ!?」」」


レナーテさんも含めて、突然のセシリアの声に驚いた表情で勢いよく顔を動かして声の主に視線を向けた。

彼女達のそんな動きを見て俺は苦笑しつつ、セシリアの声のした後ろへ振り返る。


「ただいま…と言いたい所なのだが、またすぐに出ないといけないんだ。また同じ様な事を頼んで申し訳ないが、彼女達を塔の中へ案内してあげてはくれないか?一応食事はして貰ったが、簡易的なモノだったから食堂に連れていってあげて欲しい。それと、服も破けている人が多い、何着か見繕ったり、もしくは選ばせてあげてくれ。そこは、セシリアとシェーファの判断に任せる」


優雅な動作で頭を僅かに下げて俺を出迎えてくれたセシリアに、俺は謝罪をしつつもう一度出掛けなくてはいけない事を説明し、彼女達を事をセシリアに託す。

すると、


「はい、分かりました。…ヴァルダ様、1つ言伝があります」


セシリアが僅かに下げていた頭を戻してそう言ってくる。

彼女の言葉を聞き、


「それは今話しても大丈夫な事か?」


チラリとレナーテさんを含めた女性達を見てからそう質問をセシリアにすると、


「…おそらく、大丈夫かと思います」


俺の意図を汲み取ってくれたセシリアがそう言ってくれる。

セシリアの言葉を聞き、


「分かった、では聞こう」


俺がそう言うと、


「はい、ルミルフル様がヴァルダ様にお話があると、レベルについてのご相談だと言っておりました」


彼女が言伝を簡単に説明してくれる。

レベルの事の相談か、彼女は確か今レベリングをしていたはずだ。

俺とは仮契約の状態だから、彼女の上限は100のはず。

会う度に確認している訳では無いが、それでもエルヴァンや最近ではアレンカ・ジェネフ・ダフネとの鍛練などで少しずつ経験を積み、上がっていっていたのは知っている。

そろそろ上限まで行ってもおかしくは無い。

となると、そろそろ次の段階の説明をしないといけないな…。


「分かった、今は少し忙しく時間を空ける事が出来ないが、出来る限り早い内に話を聞くと伝えておいてくれ」

「分かりました」


俺がルミルフルに対して時間を作る事を約束する言伝をお願いすると、セシリアは出迎えてくれた時の様に優雅に一礼をする。


「では皆さん、これからは彼女、セシリアが塔へと案内してくれます」


俺がレナーテさんを含めた女性達にそう言うと、


「初めまして、ヴァルダ様の塔を管理しているセシリアと言います。種族はシルキーであり、突然姿を現した事で驚かせてしまい、申し訳ありません」


俺の言葉に続いてセシリアが女性達に自己紹介をする。

セシリアの自己紹介を聞いた女性達は少し緊張しながらも、何とか会釈だけはする事が出来た様だ。

アーデさんとラーラさんが俺の方を見てくるのが分かり、俺は彼女達に対して大丈夫だという事を伝える為に頷くと、


「よろしくお願いします、私はアーデと言います。訳があって私以外の人達はまだあまり話す事が難しいので、何かあった際は私からお声を掛けさせていただきます」

「よろし…く…おねがい…しまぁす。らー…らです」


アーデさんとラーラさんがセシリアに自己紹介をする。

彼女達の自己紹介を聞いたセシリアは、


「はい。お気軽に何でもご質問して下さい」


アーデさんとラーラさんを含めた女性達が緊張しない様に、セシリアは一度微笑む。

すると、女性達はそんなセシリアに見惚れているかの様に、少しだけ惚けた表情を彼女に向けている。

俺も気をつけていないと、彼女達と同じ様に見惚れてしまう。

気持ちは十分に分かる、セシリアは可愛いからな。

俺がそう思っていると、


「初めまして、私はレナーテ・ミュルディルと申します。先生…ヴァルダ先生から魔法のご教授をして頂いた者です」


レナーテさんがセシリアに挨拶をする。

セシリアの様に、優雅な一礼に挨拶をするレナーテの姿を見たセシリアは、セシリアの先生という言葉に表情が僅かにピクリと動いたのだが、すぐにいつも通りの表情に戻し、


「はい、よろしくお願いいたします。…ではヴァルダ様、失礼します。いってらっしゃいませ」


俺にそう挨拶をしてくるセシリア。

そんな彼女に、


「よろしく頼む。行ってくる」


俺はそう返答し、黒い靄を出現させて外の世界へと戻った。

旧校舎の教室に戻って来ると、一気に人の気配が無くなり旧校舎の古さ故の傷み具合や、夜の暗さに月の明るさが差し込み、不気味さを含んだ夜の静けさが辺りを支配している。

気配察知スキルに人の反応は無い、近くにクラスの子達もいない。

警備の兵などもいないし、すぐに移動を開始するか。

俺はそう思うと、足元に注意をしながら教室を抜け廊下を歩いて旧校舎を後にする。

旧校舎を出て外に出た俺は、そそくさと学院から抜け出そうと小走りで走っていると、こんな深夜だというのに僅かな声が聞こえてきた。

聞こえる音からして少しだけ距離があるな。

それなのに聞こえてくるという事は、大きな声を出しているって事か。

………どうするか、おそらくクラスの子達が警備の兵に見つかった訳では無いと思うんだが、それでも可能性が全くないという訳でも無い。

一応、確認だけでもしておくか。

俺はそう思うと、声がする方へ向かって走り始めた。


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