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47頁

俺の指示を聞いたイーフルは、地面に向かって炎を放射する。

地面に放たれた炎はそのまま護衛の男達の集団の周りを囲うと、更に勢いを増して炎の檻が完成する。

護衛の者達は熱い熱いと最初はもがき苦しんでいたが、その焼けた熱い空気を吸った所為で喉にダメージが発生して、今ではジタバタと体を動かしている。

すでに何人かは地に伏して動かない所を見ると、息が出来なくなったのかな?

俺はそう思いながら、


「少し加減をしてやれイーフル。あのままでは全員殺してしまう」


イーフルに再度指示を出すと、イーフルは尻尾で返事をして炎の威力を下げる。

すると、やっと今の状況を理解したであろう公爵が逃げ出そうと、燃え続けているイーフルの炎から少し離れた位置へ移動してきている。

…まさか、自分の馬車で逃げたいからこっちに向かって来ているのか?

それとも何か策があったりするのだろうか?

俺がそう思って見張っているのだが、公爵はただ遅い動きで走っているだけ。


「……イーフル、そのまま頼んだ。クラリスも、少し待機していて良いぞ」


俺は二人にそう指示を出して、息切れをして動くのが止まった公爵の元へ歩いていく。

まさか本当に逃げたいだけだったなんて、しかも建物に逃げるんじゃなくて自分の馬車で逃げる為に敵である俺達の後ろに回ろうとするなんて、呆れて何も言えないぞ…。

俺がそう思いながら近づくと、


「ひぃぃ!お、愚か者めぇ!この私を誰だと思っているぅ!私に手を出したら、この国…いや、この世では生きていけないと思えぇ!」


公爵が俺にそんなどうとでもなる様な事を言ってくる。

別に追われる身になっても逃げれば良いし、戦って勝てる相手なら殲滅すれば良いだけだ。


「残念だが、お前の言葉は俺にとって脅しにはならない。…今まで行ってきた自分の行動を後悔しろ」


俺はそう言うと、公爵がひぃぃと情けない声を出しながら小走りをして逃げ出す。

俺は、そんな公爵のふくらはぎをあまり勢いを出さないで蹴りつけると、ボキッブチィッ!という音を立てて公爵の膝から下が曲がってはいけない方向に向かって折れた。


「あぎゃぁぁぁぁ!あ、あしがぁ!私の足がぁ!」


物凄く力をセーブしたら、前のゴブリンの時の様に消し飛ばさずに済んだな。

俺は冷静にそんな事を考えながら、地面に伏して痛みで絶叫して涙を滝の様に流している公爵を見る。

…ゴブリンの時はゲームで慣れているからだと思っていたが、人を殺すかもしれない今の状況でも、俺は冷静に自分の行動を確認しているだけ。

元から殺人に対する嫌悪感が無かったのか?

いや、流石にそんな事は無かったはずだ。

日本にいた時は、顔も知らない人が無くなったニュースなどを見ると、なんとも言えない気持ちになった。

…この姿になって、性格というか中身が変わったのか?

俺はそう考えて、今はこんな事を考えている場合じゃないと思い出す。

改めて公爵を見ると、


「わ、分かったぁ!お前を良い値で雇ってやろうぅ!これでどうだぁ!?」


公爵が俺にそんな提案を持ちかけていた。

そして手をこちらに向けて指を3本伸ばしている。

俺はその手をもう一度蹴り飛ばすと、これまた足の時と同じように公爵の腕が肘から良い音が鳴って折れてしまう。


「あぁぁあぁッッ!!う、うでぇぇ!」


公爵は更にもう一段階大声で絶叫すると、ジタバタともがき苦しむ。

俺はそんな公爵の未だ折れてはいない脚と腕を順番に踏み付けるッ!

その瞬間、公爵の腕と脚が潰れて動かなくなる。

そしてあまりの痛みに脳が耐え切れなくなったのか、公爵は泡を吹いて気絶をしてしまった。

さて、ここまで痛めつければいいだろう。

俺はそう思うと、斜め後ろを見る。

そこには恐怖で固まってしまっている護衛の人と、地面に倒れながらも公爵の無様な姿から目を離さない女の子がいる。

俺はゆっくりと2人に近づくと、護衛の人は腰が抜けたのか尻餅を搗いて手足を動かして後退する。

俺はそんな男など放っておいて、倒れている女の子の元へ行くと、


「立てるか?立てるのなら、お前があの男の所為で今まで味わった痛み、悲しみ、殺意、全てをぶつけろ。容赦などしなくて良い。殺すつもりでやれ」


そう言う。

すると女の子は少しビクビクしながらも立ち上がり、ゆっくりとだがしっかりとした足取りで公爵の元へと歩み寄ると、少しの間公爵の様子を見てから失った右腕で公爵を殴り始めた。

最初は殴り慣れていない所為かゆっくりとだったが、どんどん今までの恨みを晴らす様に激しく右腕を振り下ろす。

失われてすでに傷口が塞がった肘が、公爵を殴っている内に皮膚が裂け始めて血が滲んでいる。

あそこまで血が出ているんだ、相当痛みがあるはず。

それでも、彼女は腕を止める事はない。

どれくらい経っただろうか、流石に公爵を殴り続けて疲れてしまったのか、女の子は手を止めてハァハァと息を切らしている。

だが、まだ彼女の眼は恨みを晴らせていないと物語っている。

俺はその様子を見て、彼女の元へ歩き出して近寄ると、


「…これ以上はお前の体が駄目になってしまう。止めておけ」


彼女の肩に手を置いてそう話しかける。


「う…うぅ…うぐぅ…」


女の子は俺の言葉を聞いて涙を流す。

その涙が悔しい気持ちから出たのか、解放からの嬉し涙なのかは分からない。


「イーフル、もう炎は良いぞ。ありがとう。…クラリス、この公爵には特別にキツイのを。地に伏している護衛の者達には2日くらいで抜けるのを頼む」


俺は女の子の肘にポーションを振りかけながら、イーフルとクラリスにそう指示を出す。


「キュッ!」

「はぁ~い!任せてください!」


俺の指示を聞いてイーフルが口から出していた炎を止め、クラリスがフェアリーダストを振り撒きながら飛び回る。

その後、闇オークション側の人間がどうしようかとアワアワしているのに背を向けて、歩いてその場を立ち去った。

イーフルとクラリスにも塔へと戻ってもらい、俺は女の子の左手を握って人通りが激しい道へと出ようとしたのだが、女の子が人の多さと視線に怯えてしまった。

俺は彼女に一言謝って抱き上げると、地面を蹴って建物の屋上へと移動した。


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