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473頁

リーゼロッテ先生の屋敷の部屋の扉の前で少しだけ待つと、扉が僅かに開かれて室内の明かりが僅かに漏れる。


「お入りください」


その言葉と同時に、僅かに開かれていた扉が少し勢いよく開けられる。

扉の先には広い空間が広がっており、置かれている机やテーブルにソファ、書類に本、見たところ書斎の様な場所である。

そして、部屋の中央に置かれているテーブルの側に配置されているソファに、リーゼロッテ先生と彼女のお母さんが座っていた状態から俺とレナーテさんを迎える為に一度立ち上がる。

そしてそんな彼女達よりも部屋の奥、大きな机と対の椅子に座っていた彼女のお父さんもほぼ同時に椅子から立ち上がる。

そんな少し重々しい空気の書斎に、俺とレナーテさんが入室をすると、


「掛けてください」


リーゼロッテ先生が俺とレナーテさんに、自分の対面のソファを手を向けて示しながらそう言ってくる。


「失礼します」

「…失礼します。…それで、早急ではありますけど話し合いの結果を教えて頂けないでしょうか?」


失礼だとは思うが、夜という事もあり出来るだけ早めに話を進めたいと思い、俺はさっさと話しを切り出す。

俺の言葉を聞いたリーゼロッテ先生のお父さんは、


「その前に、もう一度貴方から話を、言葉を聞きたい」


俺の事を見てそう言ってくる。

この場合、状況の説明と言うよりかは俺の覚悟や考えを言って欲しいという事だろうな。

俺はそう考え、


「では改めて言わせていただきます」


リーゼロッテ先生やご両親の事を見回して、しっかりと視線を合わせた後、


「差別をされ、これから起きる戦争で犠牲者を出さない為に、亜人族に、俺に力をお貸しください。勿論、この件で他者から被害を被った場合、俺も全ての力を使って協力させて頂きます。どうか、お願いします」


俺はあまり再三の説明をする事はせずに、ただ願いを伝える事にした。

そうして頭を下げた俺に続いて、隣にいたレナーテさんも頭を下げている姿が見えた。

すると、


「ヴァ、ヴァルダさんもレナーテさんも頭を上げて下さい。私達ではあまり力になれないかもしれませんが、それでも今後ともよろしくお願いします」


リーゼロッテ先生が俺とレナーテさんにそう言ってきた。

その言葉を聞き、俺とレナーテさんは同時に頭を上げると、リーゼロッテ先生が笑みを俺達に向けていた。

その様子に、彼女達の協力を得る事が出来た事を確信し俺は安堵の息を深く吐く。

レナーテさんも同じ様で、胸をそっと撫で下ろしていた。


「では、今後の事について話をしてもよろしいですか?」


俺はリーゼロッテ先生やご両親にそう質問をすると、


「お願いします」


目の前に座るリーゼロッテ先生が俺にそう返してきた。

彼女の言葉と同時に、リーゼロッテ先生の隣に座るお母さんが頷き、少し奥にいるお父さんが俺の話をしっかりと聞こうと少しだけ身を机に乗り出している様子が窺える。

そんな様子に少しだけ緊張しながら、


「まず今早急にしないといけない事は、魔法学院で監禁されている亜人族の人達の保護です。それに関しては、リーゼロッテ先生に迷惑が掛かる可能性があるのが問題です。魔法学院で亜人族に手助けをすると、おそらくリーゼロッテ先生やレナーテさん達に迷惑を掛けてしまいます。その結果、皆さんを危険な目に合わせるのは本意ではありません」


話を切り出す。

すると、


「それについては、問題はありません。元々私達は他の学院関係者にあまり良く思われていなかったですから」

「私もその覚悟は出来ています。他のクラスメイトの皆さんも同じ考えをしているとは思います。けれど、家族にまで影響が及ぶとなれば話は難しくもなります。今頃皆さんも家族と話し合いをしているか、その為の帰省の準備をしているでしょう」


リーゼロッテ先生とレナーテさんが俺の言葉にそう返してくる。

その言葉を聞き、


「…監禁されている亜人族の方達は俺の方で対処します。レナーテさんとリーゼロッテ先生には、他にもやって欲しい事があるんです。貴族であり、貴族でしか出来ない戦争の参加方法。魔法使いとしての戦力は、帝都からしてもとても重要になってくると思います。…これからリーゼロッテ先生やレナーテさん、それに協力してくれる貴族の方達には帝都での密偵をお願いしたいと思っています。俺には姿を消す道具を持ってはいますが、文字を読む事があまり得意では無いので、そういった面では皆さんの方が適任だと考えています。今日の昼、レナーテさんと街の様子を見ていて、帝都に武具の類などを運んでいる様子でした。その道具などの量や、保管場所、質などの状態について情報収集して貰いたいんです。もし可能であれば、帝都に既に捕らわれている亜人族の方達の情報も集めてくれると有り難いのですけどね」


俺はリーゼロッテ先生とレナーテさん、そしてリーゼロッテ先生のご両親にお願いしたい事を伝える。

俺のお願いを聞いたレナーテさんは、少しだけ納得した様子で頷いて、


「なるほど、確かに戦う相手の情報は重要ですね。…しかしそれでは、あまり私達はお役に立てないのではないですか?」


しかし出来る事が少ないと感じ取ったのか、俺にそう質問をしてくるレナーテさん。

彼女の言葉を聞き、


「そんな事は無いですよ。レナーテさんの言う通り敵の情報を知っているのはとても大きい事です。それに、俺が常に助けられる状態で無い状況で、レナーテさんやリーゼロッテ先生、協力して下さる皆さんに危険な事をして欲しくないからです。おそらく裏切り者には、口に出すのも憚られる事が行われると思います。亜人族の皆さんにとっても、彼らと共に生きていける貴方達を犠牲にするなんて出来ません。ですので、出来る限り安全な状態で情報収集をして下さると有り難いです」


常に危険な状態で帝都や関連の組織に潜入する事を説明し、それ以上に危険な事をするのは俺も本意では無い事を説明する。

俺も色々な所に行かないといけない、その際に危険な事をしてもしもの事があった場合、俺はすぐに対処をする事が出来ない。

手遅れになるよりも、敵地に潜入しつつも安全面を確保して欲しいと思っている。

俺がそう思っていると、


「ヴァルダさんの意見は分かりました。それについては私も同意出来ます。レナーテさんやクラスの生徒達に危険な事はして欲しくないです」


リーゼロッテ先生が同意の言葉を伝えてくれる。

その言葉に、俺は安堵しレナーテさんは少しだけ不満そうではあるが俺が言いたい事も理解してくれているからか、渋々ではありそうだが納得した様子で頷く。

しかし、


「ですが、それだけでは有利な情報を得る事も出来ません。私はあれからも魔法の研究を続けていったので、実力は更に上がりました。私や父など、実力や貴族としての立場が見合っているのならば、もう少し深入りをしてもよろしいのではないでしょうか?」


更に続けて言った彼女の言葉に、俺は想像以上にやる気になってしまっているリーゼロッテ先生を止めて欲しく、彼女のお父様に視線を向けた。


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