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軽い休憩を終えた俺達は、再び街を練り歩いて情報収集を再開する。

今度は商人では無く、普通の街の人達にも話を聞いてみる。

と言っても、あまり深く追及する事も出来ずに四苦八苦してしまい最初の方は大した会話をする事が出来なかったが、それも少しずつ慣れていってある程度の情報を聞き出す事が出来る様になった。

そうして得られた情報を、


「シュタール公国には、あまりまだ反乱の話は平民の人達には知らされていない様ですね」

「はい。と言っても、帝都も反乱についてはあまり知っている様子では無かったですが…。むしろ、亜人族の方達を粗末な扱いをする事を止めていた命令も、あまり浸透している様には見えませんでした」

「確かに、あまり表立って助ける事が出来ないのが、歯痒く感じますね」

「………どうやって止めたのか、未だに謎なんですが…」


俺とレナーテさんは互いに確認しながら歩みを進める。

帝都は既に、亜人族をそのまま言葉通り肉壁として扱うつもりで、亜人族の命や体力を削らない様に命令が下っている。

しかしシュタール公国にはまだその命令が届いていないのか、亜人族を痛めつけている商人を数人見かけた。

見つけた瞬間、威圧スキルで失神して貰ったが。

レナーテさんも、流石に見つけ次第気を失う商人の様子に俺が何かをしているのだと察した様子で、詳しい説明をして欲しそうな表情を俺に向けてきている。

説明するのは構わないのだが、信じてくれるのかは微妙な所だろう。

威圧スキルを直接受ければ分かってくれるとは思うが、彼女にそれを使う必要は無いし。

一瞬で怒りの感情が制御できずにスキルを発動しない限り、おそらく彼女に威圧スキルの効果を感じさせる事は無いだろう。

俺はそう思いつつ、


「…亜人族に関する命令が来る前に、俺達が先にここへ来てしまった可能性もありますけど、おそらく遅かれ早かれ命令はこの国まで届くでしょうね。となると、それから更に帝都に出兵させる事を考えると、少しだけ時間に余裕が持てますかね?」


レナーテさんにそう質問をすると、


「帝都の命令は絶対です。出兵するのに時間は掛けないでしょうけど、人数と行軍を考えると時間は少しではありますがあるとは思います」


彼女は俺の問いにそう答えてくれる。

レナーテさんの言葉を聞き、出来れば周辺国が帝都に集まるタイミングでこちらも行軍したいな。

そうすれば、下手に道中に攻められる事も無いだろうし。

道中は俺やエルヴァンなどが護衛に就くつもりだが、それでも精神的な負荷が掛かる事は出来るだけ戦争の時まで避けたい。

まだまだ、やらないといけない事もたくさん残っている。

当分ゆっくりは出来ないか、少しでも時間がある内にシェーファやセシリアに状況の報告も兼て、色々と塔の事を任せっきりになってしまう事をお願いしつつ、謝罪もしないとな。

俺がそう思っていると、


「………先生、どうかしましたか?」


レナーテさんが不思議そうに俺の事を見て来ながらそんな質問をしてきた。


「…?どうしてです?」


俺はレナーテさんの質問の意図が分からずに、質問に対して質問で返す。

すると、俺の問いを聞いたレナーテさんは、


「すみません、質問をしておいてハッキリと先生に様子に変化があったという訳では無いのですが…。少しだけ先生の態度というか身に纏っている空気が柔らかくなったと言いますか、どこか嬉しそうな様子になっていましたから、気になってしまいまして」


確信できる材料が無い故に、少しだけ不安そうに俺の様子の変化を説明してくれるレナーテさん。

しかし彼女の言っている事は、おそらく本当に感じ取れたのだろう。

実際、シェーファ達に少しでも会えると考えると穏やかな気持ちにはなる。

その様子が、レナーテさんには感じ取れたという事だろう。


「まぁ、実際少しだけ先程考え事をしていて、穏やかな気持ちになったと言いますか、少しだけ安らかな気持ちになったのは認めますけど…。よく分かりましたね」


俺は特に否定する事でも無い故に、レナーテさんが言い当てた事を素直に称賛する。


「これでも、人を見る目は養っているつもりですから。先生は基本的に考えている事が私の範疇を超えているので、何を考えているのかまでは分かりませんけど、感じている気持ちなどは見ると意外に分かるんですよ」


俺の言葉に、レナーテさんは少し自信がありそうに胸を張ってそう言ってくる。

彼女の言葉に俺は、


「なるほど、確かに貴族であるレナーテさんは今後話し合いなどで必要になってくるであろう腹の探り合いなどを考えると、そう言った能力を伸ばす事は重要ですよね」


納得して彼女の努力を褒める。

そして同時に、羨ましく感じる。

俺はこの世界で、力を、スキルを、能力を成長させるという事が出来ない。

それを考えると、この先努力を続ければ成長する事が出来る彼女やリーゼロッテ先生、様々な人達を羨ましく思う。

これ以上を求めるのは、欲張りなのだろうか…。

俺はそう思いながら、レナーテさんと共にシュタール公国の街を歩き続ける。

やがて、リーゼロッテ先生のご両親との約束の夜になり、俺とレナーテさんは彼女の屋敷に戻って来ていた。


「お待ちしておりました、ビステル様、ミュルディル様」


屋敷の敷地に勝手に入るのはマズいかとも思ったのだが、門番もいない様子だった故に勝ってに門を開けて屋敷の前まで来て、扉に付けられている打ちつけて外からの来客を知らせる金具を数回鳴らすと、玄関の扉が開かれて執事が出迎えてくれる。

勝手に入った事を怒られはしない様だ。

少し安心しながら俺とレナーテさんはリーゼロッテ先生の屋敷の中へと案内されると、


「旦那様、奥様、お嬢様は既にお部屋の方でお待ちです」


廊下を先に歩いている執事が、後ろを歩いている俺とレナーテさんの事を少しだけ見ながらそう教えてくれる。

少し来るのが遅かっただろうか?

俺はそう思いながら、執事の後を追いかける。

そうして昼間とはまた違った、少し大きな扉の前までやって来ると、


「少々お待ちください」


執事が扉をノックして、そう言って先に部屋の中へと入っていった。


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