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リーゼロッテ先生のご両親に対する説明だが、リーゼロッテ先生にも状況の説明をする事にして俺は今の帝都の命令がどうして発令されたのかの考察を話し、今俺が何をしているのかの説明をする。
俺の説明をしていく内に、どんどん事態の状況が判明していき驚愕した表情をしている三者。
そして、何故かレナーテさんも驚いた表情をしている。
どうしたのだろうかと思いつつも、ひとまず先にリーゼロッテ先生達に説明を続ける。
流石に全ての情報を開示する訳にもいかない故に、全てでは無いがある程度話せる情報を開示する。
そうして全ての説明を終えると、
「その様な事態になっているとは…」
「大きな戦争になるでしょう…。一度、使用人達にも家に帰る様に伝えましょうか?」
「仕方が無いとはいえ、やはり無謀にも感じます。正面からの戦いでは、亜人族の勝利は難しいのではないでしょうか?」
リーゼロッテ先生達は、眉間に皺を寄せて難しい表情をしながらそれぞれの言葉を発する。
「亜人族の皆さんは、卑怯な策は使わずに正々堂々と戦う事を決めています。流石にわざわざこれから国に攻めるとは帝都に対して言う事はしませんが、長い距離を行軍すると考えると帝都も相応の準備がでいると思いますね。それに帝都側も既に準備を始めている事を考えると、出来るだけ早く動かなければ帝都の戦力が向上してしまうでしょうし、あまりゆっくりとも出来ない状態です。少しでも、協力して貰えないでしょうか?勿論、皆さんが危険な状態になる前に手を引いて下さっても文句など言う権利すらこちらには無いのです。どうか、今一度再考して頂けないでしょうか?」
俺はそう言って頭を下げる。
通された客間の空気が悪い、俺が発言した事に関係無く事態の重さが原因だろう。
事が事だけに、簡単に頷ける話でも無い。
レナーテさんのご家族は、元々亜人族に対して友好的な態度を示してくれていた。
しかしリーゼロッテ先生のご家族は、何よりもリーゼロッテ先生の事を最優先している。
彼女の身に危険があるのなら、亜人族だろうが人族だろうが関係無いのかもしれない。
そういった点では、彼らはある意味差別などをする人達では無いのだろう。
ならば、協力を仰いでも問題無い。
リーゼロッテ先生の家族でもあるんだしな。
俺がそう思っていると、
「リーゼロッテの言いたい事は分かった、理解もした。しかし、すぐに結論を出せと言われるのも難しい。私達だけならともかく、私達の元で働いている使用人達にも迷惑が掛かるのなら話は通しておかなければならない。だがゆっくりとする事も出来ないと言われてもいる、故に今日の夜まで待って貰えないだろうか?それまでに使用人達にも簡潔に話をさせて欲しい。勿論、あまり外に持ち出すとは限らないが、もしもの事を考えて話す内容は機密になっていない程度のものに留めるつもりだ」
リーゼロッテ先生のお父さんが、お母さんとリーゼロッテ先生の事を見て、部屋にいる皆に確認をする様にそう伝えてくる。
その言葉に、
「お願いします。では、部外者である俺がいると使用人の皆さんも気が散ってしまうと思います。また夜に来させて頂いてもよろしいですか?」
俺が席を立ちながらそう聞くと、リーゼロッテ先生のお父さんが感謝の言葉を伝えてくる。
そうして俺とレナーテさんはリーゼロッテ先生に見送って貰い、一旦彼女の実家を後にする。
図らずも時間に余裕が出来てしまった俺とレナーテさんは、互いに相談し合って夜までどうするかを話し合い、街の散策や情報収集に努める事になった。
本来なら、別々に行動した方が効率は良いのかもしれないが、それでもしもレナーテさんに何かあった場合対処出来ないので、効率は悪いかもしれないが安全面を考慮して今回は彼女と共に情報収集の始める。
「魔法使いが多い国って行きに言っていましたけど、あまり帝都などと変わりはしませんね」
「まぁ、結局は魔法を使った街並みと言っても、魔法を使うのは人なのですので…」
俺の言葉に、レナーテさんは少し苦笑しながら俺の言葉にそう返してくる。
そんな会話をしながら、街の様子を窺う。
帝都の様子とは違い、商人が運んできた荷物の荷卸しなどを魔法を使って次々と移動させている。
街路樹とまでは言わないが、道にまばらに並んでいる樹木の水やりは水魔法で、僅かに成長して乱れている枝や葉は風魔法で切っている。
あの人も魔法使いなんだろう、露店で食事を出している店主が火魔法を使いながら料理をしている。
まぁ、面白い光景と言えばそうだとも言えるのだが…。
一応、魔法を使えるという事は貴族やお金持ちなんだろうに、ああいう事をしているのも珍しくはあるな。
俺がそう思っていると、
「おいッ!丁寧に扱えよッ!」
「すいませんっ!」
どこからか聞こえてきた周りの声に。俺は反応して辺りを見回す。
すると何やら馬車の荷台の部分で頭を何度も下げている人と、そんな人を叱り続けている少し恰幅の良い商人らしき人がいる。
そんな彼らの足元に、数振りの剣が見えどうやら武器系の商人なのだろうと考える。
「大丈夫でしょうか?」
レナーテさんも少し不安そうに彼らの様子を見ている。
「…流石に街中でいきなり斬り捨てる様な事はしないとは思いますけど…」
彼女の言葉に俺はそう返して、レナーテさんにあまり離れすぎない程度に後ろを歩く様に伝えると、俺は彼らの元に歩き出す。
「大丈夫ですか?」
「あ゛ぁ゛ッ!?何だお前はッ!?」
近づいて声を掛けると、商人の男性は気が立っているのか質問をした俺にまで強い口調でそう質問をしてきた。
そんな男性に俺は、
「ただの通行人ですよ、落とされた物を拾うのを手伝おうかと思いまして」
そう言うと、足元にある剣の柄を拾ってそれを商人の男性に危なく無い様に手渡そうと差し出す。
俺のそんな行動に、叱咤する事で忘れていたのか俺に気まずそうに謝罪をしてから剣を受け取り、それを馬車の荷台にゆっくりと大事そうに置く。
そんな俺と商人の男性の様子を見ていた、荷物を落としてしまった男性もすぐに剣を拾って荷台へと運ぶ。
その際に、あまり外から見えない様に布で遮られていた馬車の荷台の中が見え、数十個の大きな木箱と剥き出しに置いてある剣が見えた。
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