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レナーテさんの言葉に、リーゼロッテ先生は一拍置いてから自身の言葉の言い方に気がついたのだろう。

慌てた様子で身振り手振りで執事の人に誤解である事を伝えつつ、俺との関係について簡潔に説明をしてくれた。

そして、逃げた事への謝罪とこれからご両親ともう一度、腹を割って話し合いをしたいと伝える事が出来、執事の人はひとまずリーゼロッテ先生が屋敷に戻ってくれる事に安堵した様子を見せつつ、彼女の言葉に従って彼女のご両親に言伝を伝えに駆け出して行った。

とりあえず、これで屋敷で彼女のご両親と話が出来るなと思いつつ、先に歩いて行くリーゼロッテ先生とレナーテさんの後を追いかけ始めると、何故か先を歩いている2人が後ろにいる俺に何度もチラチラと視線を向けて話をしている。

その様子に首を傾げ、


「どうかしましたか?」


俺がそう質問をすると、


「えっと、先程の事で少し気になると言いますか…」

「明らかに、異常な現象を目の当たりにしたんですけど…」


2人が歩いているスピードを緩めて、俺が2人に追いついてしまうと、


「失礼します」

「少しだけ、触らせてください」


リーゼロッテ先生とレナーテさんが、何故かいきなり俺の二の腕部分に触れ始めた。

突然の事に俺が驚いていると、


「ふ、普通の男性の腕ですよね…」

「はい。防具などの防御に秀でている装備を身に付けてもいません…」


リーゼロッテ先生とレナーテさんが、俺の腕を触った感想を言い合って不思議そうな表情をしている。

その様子に、どうやら先程の執事の剣を何もしないで折れた事が気になった様子である事を察する。

彼女達のそんな様子に、


「レベルの差で、大抵の攻撃はダメージになりませんからね…。流石に、帝都のレオノーラ騎士団団長クラスだと厳しいですけど…」


俺は簡単に説明しながら歩みを進める。

すると、


「帝都騎士団団長、レオノーラ様と戦った事があるのですか?」


俺の発言が気になったのか、レナーテさんがそう言ってくる。

彼女の事は俺もある程度信頼してはいるが、流石に今の彼女の現状を教えるのはマズいかもしれないな。

どこに監視の目があるかも分からないし、周囲の人達が俺達の会話を聞いて噂程度でも話が帝都まで行ってしまったら面倒ではある。

とりあえず、今はレナーテさんの質問に単純な回答をするのが得策だろう。

俺はそう思い、


「そうですね、戦ったというよりかはちょっとした食い違いで一太刀だけ交えたみたいな感じですかね?純粋なレベルによる強さは、レベルの限界を超えた超越者である彼女だからこその威力がありましたよ」


レナーテさんの問いに返答する。

それを聞いたレナーテさんは、


「…レオノーラ様のお強さは、よく耳にしていました。一度だけでも、お会いしたかったです。レオノーラ様の活躍、そして帝都のスラム街の亜人族の保護、全てを聞き意見の交換をしてみたかったと思っていましたけど…。今はそれも叶わない夢なのですね…」


とても残念そう、純粋に公表されているレオノーラの死を悲しんでいる様に見える。


「私も少し聞いた話ですけど、彼女の死の直後に保護をしていたスラム街の亜人族の方達がいなくなってしまったという話があったのですが、それはどういう事なのでしょうか?」


俺とレナーテさんの会話を聞いていたリーゼロッテ先生が、不思議そうな表情でそんな事を言ってくる。

どういう事と言われましても、俺がレオノーラと一緒に塔へと移って貰っただけなんだが…。

しかし説明も出来ないし、ここは俺も分からないと思わせられる様に首を傾げつつも何も言葉を発する事はしない。


「新しい騎士団団長は、亜人族などの差別をしないと聞きはしますけど、それは関心が無い故の差別などはしないみたいで、結構荒々しい方だと父が言っていました。もしかしたら、新しい騎士団団長が何かしらの策でスラム街にいた方達を………」


レナーテさんがリーゼロッテ先生の疑問に憶測を言う。

しかしそれも、俺が関係している事で何かを言う事はしない様に心掛ける。

そんな俺に疑問を持ったのか、


「ヴァルダさん、どうかしたんですか?」


リーゼロッテ先生が俺の様子を窺いながらそう聞いてきた。

そんな彼女に俺は、


「いえ、興味深い話ではありますけど、今は目の前の山場を切り抜ける為にどうすれば良いのか考えていまして」


頭の片隅で考えていた事を、彼女の問いの答えとして利用する。

俺の言葉に意識をそちらに変えたのか、


「そうですね。父と母にどのように説明したら私の考えを理解し、納得してくれるのか考えないといけませんよね」


リーゼロッテ先生が俺にそう言ってくる。

彼女の言葉に、


「やはりそれは、先生の気持ちや考えている事を素直に言う事だと思います。それがご両親の意向とは違う事になるとしても、それが自身の目的であり為すべきである事を話し、その為にどの様な準備や考えを持っているのか明確に説明をすれば、分かってくれるのではないでしょうか?」


レナーテさんが答え、俺も彼女の言葉に賛同して頷いて、


「俺もそう思います。リーゼロッテ先生の考えに、俺達が周りでサポートしどこまで協力出来るのか、そしてリーゼロッテ先生やご家族や使用人に危害が及ばないかの説明は、俺がさせて頂きます」


俺がする事を伝える。

そうして話をしている内にリーゼロッテ先生が爆破した屋敷へと戻って来る。

少し遠目からでも分かる、リーゼロッテ先生の魔法による屋敷の被害。

1日で直す事は出来るのだろうかと考えていると、屋敷から数人の使用人が外に出てくる。

先程逃げた時に比べると、人数が少ないのはリーゼロッテ先生が帰って来てくれたからなのか、それともまだ探しに出てきた人達が帰って来ていないという事くらいだろう。

俺がそう思っていると、使用人達が屋敷から出てこちらに向かって来るのを眺めていると、屋敷の扉が開かれて続いて威厳に満ちている男性と、その傍らにおっとりとしている女性が出てくるのが見えた。


「お父様やお母様…」


リーゼロッテ先生が男女を見ながら呟いた言葉を聞き、俺は覚悟を決めて一歩踏み出した。


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