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レナーテさんの言葉を聞いたリーゼロッテ先生は、


「それは…私の考えを伝えて協力をして貰うという事でしょうか?」


俺の言葉にそう質問をしてくる。

彼女の言葉に、レナーテさんは頷きつつ、


「協力とまではいきませんが、それでもリーゼロッテ先生の考えや気持ち、覚悟をしている事を話してみて、ご両親の了承を得た方が良いと私は思います。先生も、ご家族に心配を掛けたくはないと思っていると、私は考えています」


そう彼女の質問に答えると、


「…正直な話をしますと、私の両親は私の事をとても大事にしてくれています。それはとても嬉しく、ありがたい事です。しかしその反面、私が大事な故に私の身の安全を最優先してしまう、今回の件でも、私は皆さんに恥じない先生であるために、帝都の意向には従うつもりはありませんでした。しかし私の考えとは違い、父と母は私の考えている事では私の今後の将来に関わってしまう、危険な状況に身を置いてしまうと考え、頑なに首を縦に振らない私を軟禁したんです。だから、今話し合ったとしても父と母とは相容れないと、私は思っています」


リーゼロッテ先生は少し寂しそうな表情でレナーテさんの言葉にそう返した。

彼女のそんな言葉を聞いたレナーテさんはふと俺の事を見ると、


「先生、それは先生のお父様やお母様が先生がたった1人で行動をするからと思っているからではないでしょうか?」


リーゼロッテ先生にそんな質問をする。

レナーテさんの質問を聞いたリーゼロッテ先生は、少しだけキョトンとした表情をしながら、


「え、えぇ。確かにそれは父も母もそう思っていると思いますけど…」


レナーテさんの質問にそう答える。

その言葉にレナーテさんは笑顔で、


「先生、こちらには私達には心強い人がいるじゃないですか」


そうハッキリと宣言をすると、その笑顔を俺に向けてきた…。

え、俺そんなに信用される程役に立った覚えが無いんだが…。

手伝いをした程度で、そこまで言われる程実力などを見せた事も無い。

レナーテさんの言葉は、あまりリーゼロッテ先生の交渉材料にはならないのではないだろうか…。

俺がそう思っていると、


「そうですね。確かに父も母も、ヴァルダさんの事を知りません。というよりも、私にしか興味が無い様であまり他の人に対して興味を示さないと言った方が正しいんですけど…」


リーゼロッテ先生が、恥ずかしそうな表情でそう言ってくる。

…なるほど、クラス対抗戦の時に少しだけ見かけた彼女と彼女のご両親の様子に、彼女も色々と思う事があるのだろう。

特に、生徒達に見られるのは恥ずかしいと思う。

自身よりも年下である生徒達を見守り先導していくのに、その先生自身が子供扱いされてしまう光景を生徒達に見られるというのは。

まぁ、先生の両親からしたら彼女は大切な子供で間違いは無いのだが。

俺はそう思いながら、


「まぁ俺に興味を示さないのは良いですけど、それでも亜人族に対しては興味を持って欲しいですね…」


問題点を上げる。

最悪、彼女のご両親とは話し合いが行われても決裂する可能性があるな。

…リーゼロッテ先生も俺とは同じ事を考えている様子で、少しだけ表情が暗くなるのが分かる。

俺はそう思いながら、


「ひとまず、今はすぐにでも話をするべきでしょう。今リーゼロッテ先生のご家族や使用人の方達には、リーゼロッテ先生を誘拐した悪人だと思われているでしょうから。なるべく時間を経過させずに、誤解を解いて話し合いをするべきだと思います」


リーゼロッテ先生とレナーテさんにそう進言をすると、


「そうですね、確かにこのまま逃げ続けても良い事はありません。もう少し、父と母に私の考えを聞いて貰いましょう」


リーゼロッテ先生が俺の言葉に頷いてそう答えてくれる。

その言葉を聞いた俺とレナーテさんは立ち上がり、それに続いてリーゼロッテ先生も椅子から立つ。

俺はすぐに発つ事を考えて2人を置いて先に店の従業員に銀貨を渡すと、


「ヴァルダさん、ここは私が…」

「いえ、大した額でも無いですし、すぐに動けた俺が支払っておきますよ」


リーゼロッテ先生が慌てた様子で俺に声を掛けてくるが、俺はそれを途中で遮って会計を済ませてしまう。

大した金額でも無いのに、何故か凄く申し訳無さそうにしているリーゼロッテ先生の様子を気にしながらも、俺達は喫茶店を出て彼女の屋敷に戻る為に走ってきた道を戻り始める。

何十人の商人達が行き交う道を歩き、少しだけ静けさがある貴族街に近づいた瞬間、


「お嬢様ッッ!」


少しだけ、騎士などよりも鋭さが無い剣での攻撃が迫ってきた。

突然物陰から飛び出してきた少しだけ老いている執事の様子と言動に、リーゼロッテ先生の事を探していた使用人だと事を察すると、俺はとりあえず反撃するのはマズいと思いひとまず、執事による剣での攻撃を受ける事にする。

レベル差故に、攻撃が俺の体を傷つける訳では無いと分かっているから。

俺に勢いよく振り下ろされる剣が二の腕辺りに衝突した瞬間、僅かな衝撃音と同時に金属が物に衝突する音、そして続いて剣が折れる耳に刺す音が聞こえてきた。


「なッ…!」

「え…」

「…えぇ…」


俺に衝突し、途中から折れてしまった剣の先が地面にカランと音を立てて落ちると、俺に斬りかかって来た執事、リーゼロッテ先生とレナーテさんの困惑した声が聞こえてきた。

まずは、リーゼロッテ先生にこの人を止めて貰わないとな。

俺はそう思い、


「リーゼロッテ先生、お願いします」


彼女にそうお願いの言葉を告げて一歩身を引くと、ハッとした表情を見せつつも、


「い、いきなりヴァルダさんに斬りかかるなんて何を考えているんですかッ!?彼はとても大切な人なんですよッ!私からしても、レナーテさんからしてもッ!」


そんな少しだけ怒った言葉を発するリーゼロッテ先生。

はは、大事な言葉を忘れてますよ先生?

その言葉では、リーゼロッテ先生とレナーテさんを手籠めにしたいけ好かない男になってしまいますよ。

ほら、執事の人がリーゼロッテ先生の言葉を聞いて、驚いた表情が一変して完全に仇を見ている表情をこちらに向けてきていますよ…。

俺がそう思っていると、


「リーゼロッテ先生、それでは誤解があります。ちゃんと、ヴァルダさんが私達を助けてくれた恩人である事を言わないと」


レナーテさんが溜め息交じりでフォローに回ってくれた。


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