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466頁

おそらく自身の屋敷から飛び出してきたリーゼロッテ先生に、俺は何であのような状況になっているのだろうと半壊している屋敷と彼女の事を視線を往復させながらそう思っていると、


「先生、一体何があったんですか?」


レナーテさんがリーゼロッテ先生にそう質問をする。

俺も気になるし、ぜひ説明をして欲しい所だ。

すると、レナーテさんの問いを聞いたリーゼロッテ先生が、


「色々と個人的なお話を両親としていまして、互いに意見を合わせる事が出来ずに軟禁の様な状況になってしまいまして…。話の内容は、出来れば追及する事はしないで欲しいのですけど…」


気まずそうに俺とレナーテさんから視線を外してそう言ってくる。

…つまり彼女の言葉から察するに、今回はリーゼロッテ先生のドジが原因って訳では無いようだな。

いや、逃げ出すからと言って実家の屋敷を爆発させるのはどうなのだろうか…。

俺がそう思っていると、


「先生、先生にお話したい事があります。お時間を頂けないでしょうか?」


レナーテさんがリーゼロッテ先生にそう伝える。

それを聞いたリーゼロッテ先生は、先程自身が破壊した屋敷の方を見る。

俺も彼女と同じ様に屋敷の方に視線を向けると、屋敷から執事やメイド、護衛の騎士であろう装備を身に纏った者達が出てくる。

その様子に、


「今は急がなくてはいけないので、出来れば落ち着いてからでよろしいですか?」


リーゼロッテ先生は今にも駆け出しそうになりながら、レナーテさんに苦笑いを向けてそう言う。

大人しく捕まるつもりも無いのだろうが、リーゼロッテ先生も一応貴族の令嬢という事だよな。

そんな彼女に率いられて逃げるとは言え、これって俺とレナーテさんは世間から見たら誘拐とかに見られないだろうか?

事情を知らない周りの貴族達などからしたら、屋敷を破壊してご息女を誘拐しに来たとか思われて、指名手配とかされない?

俺、目立つ行動は控えてるつもりなんですけど…。

俺がそう思っている内に、


「分かりました。リーゼロッテ先生主動で移動しましょう。先生も、行きますよ」


レナーテさんがリーゼロッテ先生の言葉に同意し、走り出そうとしながら俺に声を掛けてくる。

…こうなってしまった以上、もう彼女達を引き留めて彼らやリーゼロッテ先生のご両親との話し合いは出来そうに無いな…。

俺はそう思い、


「リーゼロッテ先生、少しの時間でも良いので落ち着いて話が出来る場所に案内出来ませんか?」


リーゼロッテ先生にそうお願いをすると、


「分かりました、では私に付いて来て下さい」


彼女は俺のお願いにそう返事をして、先導して走り始める。

俺とレナーテさんは彼女の後を追いかける為に走り出し、3人で貴族街を飛び出す。

レナーテさんとリーゼロッテ先生の後を追いかける俺は、速さ的にも体力的にも余裕がある故に殿を務めて後ろの追いかけてくる人達の様子を窺う。

追いかけては来ているが、流石にリーゼロッテ先生がいる故に彼らも荒々しい行動をする様子は無く、ひたすらに俺達を追いかけてくるだけだ。

数人の執事やメイドが、リーゼロッテ先生の名前を呼んで止まる様に促してはいるが、それを素直に聞く事は出来ない。

そうして俺達3人はシュタール公国の大通りから少しそれた路地にひっそりと佇んでいる喫茶店へと入る事になった。

リーゼロッテ先生曰く、ここは普段から通っていたお気に入りのお店らしいのだが、屋敷の人達には教えておらずにここにいるとは分からないだろうとの事だ。

彼女が言う事だから、何かと心配はしてしまうのだが…。

しかし、今は多少の話をする時間があれば十分だ。

リーゼロッテ先生と話しが出来たら、すぐに帰れば問題は無い。

喫茶店で紅茶を注文し、席に着くリーゼロッテ先生。

彼女の向かい側に俺とレナーテさんが座ると、


「それで、お話というのは…?」


すぐにリーゼロッテ先生がそう質問をしてくる。

それを聞いた俺は、少し周りの事を警戒しながら、


「順を追って説明させていただきます」


そう話を切り出してから、今まであった事や知り得た情報を、周りの客や従業員に聞こえない様に小さな声で説明した。

レナーテさんも俺の説明に補足などをしてくれたり、俺だけの視点では無い効率が良い説明が出来たと思う。

すると、俺とレナーテさんの説明と共にリーゼロッテ先生の表情が歪んでいき、


「…状況は分かりました…。それに、この件については私の方でも無関係ではない様です…」


意味深な発言をする。

続けて、


「私が両親に呼び出された事も、お2人が今お話をしてくれた話と関係しているんです。私の家の方針では、亜人族の差別をする事は無いのですが、反対に過干渉する事も基本的にはする必要が無いという、曖昧な立場である事を重要視していました。簡単に言えば、亜人族だろうが人族だろうが自分達に有益であるのなら関わり、害でしかないのなら関わりを持たないという考えです。しかし先程ヴァルダさんが話して下さった事で、私の家では今の亜人族は家に…私に害があると判断して帝都の命令に従う事にしたんです。私はヒトとして、そしてレナーテさん達の担任の先生として、亜人族の事を差別したり、傷つける様な事はしたくありません。その意見の食い違いによって、私は屋敷に軟禁されてしまいました。それで先程、試行錯誤をして形にする事が出来た魔法を使って逃げ出したという訳です。父も母も、娘である私の身を案じているのは理解もしていますし、その優しさには感謝の気持ちを持っています。しかし、それでも私にも譲れない考えや覚悟があります。こう言うのは失礼なのかもしれませんが、私はヴァルダさんとは生徒達を一緒に指導したという戦友に近い意識を持っています。そして亜人族の皆さんを差別しないレナーテさん達の担任の先生として、私も帝都の命令に屈したくはありません。…ヴァルダさんとレナーテさん、そして生徒の皆さんの意思を尊重し、私も皆さんと共に自分に恥じない事を成し遂げたいと思っています」


レナーテさんの事情と、それに関する彼女の意思を話してくれたリーゼロッテ先生。

彼女の意思は聞き、それは俺とレナーテさんには伝わった。

しかし、彼女のご両親にはまだ話も出来ていないし、勝手にリーゼロッテ先生だけが行動する事でご両親に迷惑を掛けてしまうのも、彼女の本望では無いだろう。

やはりここは、彼女の両親にも話を聞いて貰うしか、皆が後悔する事が無い決断が出来るのではないだろうか?

俺がそう思っていると、


「ではリーゼロッテ先生、まずはご自身のお考えを、先生のお父様やお母様へ話をしてみたらどうでしょうか?」


レナーテさんが、俺が考えていた事を先に進言した。


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