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体が何かに付いているのが、こんなにも安心出来るとは思っていなかったな。

俺は何度か地面をしっかりと踏み締める様に足を動かしながらそう考え、


「シル、ありがとうな。その…カルラには俺から謝罪をするから、あまりカルラに注意する様な事は…」


俺が彼女にそう言うと、シルは首を左右に振り、


「注意って訳でも無いけど~、それでもヴァルダ様の事を傷つけた事はいけないと思うんだよね~。カルラの気持ちも理解は出来るけど、それで拗ねちゃうのは違うって言うか~?」


シルは笑いながらも、俺のお願いに対して「うん」とは返事をしてくれない。

俺は少し卑怯だとは思うのだが、


「カルラがどうして拗ねてしまったのか、シルは知っているんだよな?」


シルに対してそう質問をする。

俺の問いにシルは笑いながらレナーテさんを見て、


「カルラの背中に乗せた時に、ヴァルダ様にくっ付き過ぎてたのがヤだったんだって~。折角のヴァルダ様との時間に、他の女が自分以上にヴァルダ様にくっ付いてちゃヤな乙女心を、理解してあげてねヴァルダ様~」


俺が求めている説明をしてくれた。

…してくれたのだが…。


「せ、先生?顔がにやけてますよ?」

「良かったねレナーテさん~?ヴァルダ様のこんな表情、中々見る事が出来ないよ~?」

「え、は‥はい。や、やったぁ~?」


俺が想像していた嫌われている内容では無く、純粋なカルラの嫉妬心に嬉しさが出てきてしまう。

可愛らしい拗ね方に、俺は自然と頬が上がってしまうのを何とか堪えようとするのだが…。

レナーテさんとシルの言葉を聞く限り、あまり堪えられていない様だ。

俺がそう思っていると、


「先生、本当にヒトにはあまり興味が無い様ですよね」


レナーテさんが少しジトーッとした視線を俺に向けてそう言ってくる。

その言葉に俺は、


「…そんな事は無いですよ?」


彼女の意見はあながち間違っている訳でも無いが、それでも一応否定しておこうと思ってそう答える。

確かに、レナーテさんの言う通り亜人族の人達に比べると人族に対してはあまり興味は無いな。

しかし今はそんな事を話している暇は無い。

というか、出来るだけ早くしないといけない。


「シル、ありがとう。カルラには後から俺から話をしておく。とりあえず、今は塔に戻ってくれ」


俺がシルにそう言うと、シルは笑いながら、


「は~い。お気をつけて下さいね~、ヴァルダ様~」


そう答えてくれて、俺はシルの返事を聞いてから彼女を塔へと帰還させる。

そうして、俺とレナーテさんはシュタール公国へと入国する為に公国の検問所へと向かって歩き始めた。

検問所に辿り着くと、俺は冒険者カードを、レナーテさんは家紋の様なモノが彫られた金貨の様なモノを見せて、無事にシュタール公国へと入国する事が出来た。

シュタール公国の大通りを進むと、上空から見た通りに何台もの馬車を操って先を急いでいる商人達の姿が目に映る。

どの商人達も忙しそうに鞭を振るって馬車を進ませ、道を歩いている人達が通りの隅を歩いている。

…あまりレナーテさんの言っていた通りの魔法国という感じでは無いのだが…。

俺がそんな疑問を感じていると、


「先生、まずはリーゼロッテ先生のご実家に向かいましょう。空から見た時に、貴族街はあちらの方だと確認してあります。付いて来て下さい」


レナーテさんが俺にそう言って、先に歩き出す。

俺よりもしっかりと街の観察をしていたんだなと思いながら、俺は先を歩くレナーテさんの後を追いかけ始める。

レナーテさんの後を追いかけながら街の景色を眺めていると、確かに帝都などに比べると魔法を扱っている人達が多くおり、彼らが魔法を使って商人の荷卸しを手伝っていたりする光景が目に入る。

もっと効率的というか、自動で魔法が発動する的なモノを想像していたのだが、現実は魔法使いが要所要所で魔法を使っている感じだ。

挙句の果てには、街の景観を気にしてなのか、魔法で植物を急成長させたりモニュメントみたいな建造物を建てるのに、土魔法などを使っている光景を見て、何だか無駄な魔法の使い方をしている気がするなと感じる。

そうしながらも、レナーテさんの後を付いて行き少しだけ騒がしさが落ち着いた、屋敷が並んでいる地区へと入り込む。

先程の大通りに比べると、商人達もいないからか結構静かに感じるな。

むしろ、大通りの喧騒が貴族街にも聞こえている感じだ。

しかしここは魔法を研究している魔法使いが多い国、貴族達も魔法使いが多いのだろう。

屋敷の中では、魔法の研究で忙しないのかもしれないな。

俺がそう思った瞬間、少し先に見えていた屋敷が一瞬煌めき、遅れて煌めいた場所を中心に屋敷の一部が爆発したッ!

俺は即座に先を歩いているレナーテさんの事を抱きしめて、瓦礫などが飛んで彼女が怪我をしない様に庇う。

俺の防御力なら、例え瓦礫が飛んで当たったとしてもダメージは無いだろう。

しかしレベルを上げている訳でも無いし、装備を固めている訳でも無いレナーテさんがそんな物に当たってしまったら大惨事になる事は明白だ。

俺がそう思っていると、俺達の近くに吹き飛んだ屋敷の建築材の破片が飛んでくる。

いくつかの破片が飛んでくるが、それらが俺とレナーテさんにぶつかる事は無く飛んでくる破片が落ち着いたのを見計らって、俺はレナーテさんを解放する。


「大丈夫でしたか?」


俺は心配をして彼女にそう質問をすると、


「は、はい。ありがとうございます、先生」


レナーテさんは俺に乱雑に抱き寄せられてしまった所為で乱れた髪の毛を手で梳かしながら感謝の言葉を伝えてくる。

とりあえず、彼女に怪我が無い様で良かった。

俺はそう思いながら、爆発した屋敷の方に視線を向ける。

魔法の研究をしているくらいだから、魔法の暴発だって十分にあり得る。

そう考えると、帝都よりも危険性がある貴族街だな。

俺がそう思っていると、煙が出ている屋敷から人影が見えて、


「………あぁ」


もう色々と、納得してしまう声を出してしまう。

人影は崩れた屋敷から飛び降りて魔法を使ってゆっくりと下降してくると、地面に着地すると同時に走って屋敷の敷地から飛び出す。

俺はその人に、


「何やってるんですか…」


少しだけ呆れた声色で声を掛けると、


「…ヴァルダさん…それにレナーテさんッ!?」


屋敷を破壊したであろうリーゼロッテ先生が、俺とレナーテさんの事を見て驚いた表情でそう返事をした…。


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